神聖円卓領域キャメロットIII−13


三蔵は咳ばらいをして、仕切りなおすように続ける。


「いい?世界の果てはもうすぐそこまで来ているの!あなたは良くても、あなたの民たちはこの砂漠を失いたくないの!それを分かりなさい!さっきから余の民も守る守るばっかりで、それじゃ獅子王と一緒じゃない!ファラオ・オジマンディアスは、雨宮さんが言う通りエジプト最強なんでしょう!?なら格好いいところ見せてください!余の民を守る、じゃなくて、世界を守る、くらい言ったらどうなのよ、ばかーーー!!!」

「………」


ついにオジマンディアスは押し黙る。
それを見て、藤太が豪快に笑った。


「はっはっは!あれは怒れぬ!なにしろ子供の理屈だ、子供に本気で怒っては王の威厳も損なうというもの」

「オタクの語りもね、本人はリアクションに困るからね」


目じりを拭いながらダ・ヴィンチが付け足す。

すると、オジマンディアスはようやく動いたかと思うと、突然大笑いし始めた。今度は本気の笑いだ。こちらも豪快である。


「ふ、ふは、ふははははは!!!世界を守れ、と来たか!余に世界を、浅ましき人の世を!」


オジマンディアスはそう言って立ち上がると、ゆっくりと階段を降り始める。徐々に、玉座からこちらに降りている。


「だが、うむ、それは余の思惑の外側にあった。名君とは、倒されるべき暴君でもある。よって、余はいかなる時代、いかなる世界においてもお前たちの敵として君臨してきた。ファラオ・オジマンディアスは世界を救えぬ。支配し脅かす側の王である故な」

「…別に、サーヴァントとしてはそれでいいんだ。特に今回は、俺たち人間が戦うべきなんだから」

「ほう?」


階段を降り切ったオジマンディアスだが、やはりその威圧感は変わらない。だがそれは、カルデアのオジマンディアスとほぼ同じものになっていた。


「だって現代は、超人的な誰かが文明を引っ張る時代じゃない。文明は社会と統治機構を発展させて、科学技術を生み出して、だんだん人は自分の及ばない領分を技術や社会にゆだねるようになった。その分を、自身の幸福の追求のために使えるようになった。やがて、一人の英雄が人々を引っ張るんじゃなく、人々が個人個人で一つの世界を前に進めていく時代になった。それが現代だ。そこに至るまでに多くの英霊たちが活躍して、そんで今、サーヴァントとして力を貸してくれてる。人理を2016年から先に進めるために。だからこそ、俺たち人間が戦わなきゃいけない。人理は、人が繋ぐものだから」


第二特異点の古代ローマ帝国や第一特異点の中世フランス、そして第五特異点の近代アメリカに至る過程で、人類は高度な統治機構と社会を手に入れた。
第三特異点の大航海時代によって世界は有機的かつ近代的に接続され、第四特異点のロンドンでは産業革命による技術革新が文明を飛躍させた。

その過程の中で、人は自分の及ばない領分を社会と国家、そして科学技術に託して、自身の幸福追求のために生命を消費できるようになった。

人が人であるだけで人として扱われる、そんな世界になるのと同時に、超人的な「個」による文明の牽引が行われる時代ではなくなったのだ。そんな現代をもたらすために歴史に名を刻んだ英霊たちが力を貸してくれるのだから、まさに人類史の総力戦である。

それでも主軸は、自分たち現代の人間でなければならない。


「…なるほど。つまり、余という英霊が民衆を救うのではないのだというわけだな」

「あぁ。あなたが現代まで繋いでくれた文明を俺たちが繋ぐのを、手伝ってほしい」

「……言い分は理解した。だが一つ、玄奘三蔵と貴様の言には致命的に足りていないことがある」

「え、あたしまた何かやっちゃった…?」


オジマンディアスは泰然と笑う。そういえば、カルデアに来たばかりのときも同じように言われたのだと思い出す。


「俺たちにその力があるか、あんたが手を貸すに値するか、証明しないとな?」

「その通り!光栄に思え、その機会を余が与えてやろう!」


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