神聖円卓領域キャメロットIII−15
「あまり気分のいいものではないな、魔神柱化というものは。だがよくぞ戦った!その力、神を気取る獅子王を相手にするにふさわしい!」
「ファラオ!ご無事ですか!」
そこに飛び込んできたのはニトクリスだ。オジマンディアスは鷹揚に笑うと、ニトクリスに手招きする。
「良いところに来た。供をせよ」
「は、喜んで…しかし何にでしょう?」
「当然、この者たちが余と肩を並べて戦うにふさわしいかどうかを見極めるのだ」
なんと、次はオジマンディアスとニトクリスのペアと戦うらしい。
ちょうどいい、サンソンの仇を討てる。それに、こうなることもなんとなく予想はついていた。自分が戦わなければ気が済まないだろう。
「滅びの火を前にしながらも真に世界を救わんとする者たちよ。先代より継ぎしファラオの闘法、とくと見るがいい!」
そう言って背後から燃え盛る船メセケテットが出現したのを合図に、戦闘が次の段階に入る。
例によってここは複合神殿の内部、神性に関係する攻撃しか通らない。それは事前に共有してあったため、立香はキャスターとジャックを下がらせて、代わりにカルナとエウリュアレを呼び出した。唯斗は引き続きアキレウスに任せる。
「太陽王が相手か。貴重な機会に感謝する、マスター」
カルナはそう言って、太陽神の血を引くからか、珍しく笑顔を立香に見せてから、目にも止まらぬ速さでオジマンディアスに攻撃を仕掛けた。
エウリュアレはそれを見て、「これだから男ってものは…」と呆れつつ、ニトクリスへと攻撃を開始する。
三蔵とダ・ヴィンチもニトクリスと戦い始めたため、意図せずして男女で戦いが分かれることになった。オジマンディアスとは、神性を持つカルナとアキレウスが交戦する。
マシュはオジマンディアスによる攻撃の余波から立香と唯斗を守る役目に徹しており、轟音が響く玉座の間で戦いを共に見守った。
(アキレウス、サンソンの分、頼んだぞ)
(任せとけ!)
念話で伝えれば、アキレウスはニヤリと笑い、カルナの槍によって炎がオジマンディアスの正面に立ち込めた瞬間に、その炎を突き抜けてオジマンディアスに攻撃をぶちかました。
アキレウスの槍にわき腹を貫かれたオジマンディアスはさすがに血を吐いて呻き、ニトクリスはそれに驚いた隙をエウリュアレに突かれた。
オジマンディアスもニトクリスも床に膝をついたため、それ以上の攻撃をサーヴァントは止める。そして、オジマンディアスが大きく息をついて玉座に向かい始めたのを見て、唯斗と立香は顔を見合わせた。
「…終わりかな」
「だろうな。アキレウス、助かった」
「おう、次は決戦だな。いつでも呼べよ」
アキレウスをカルデアに戻すと、エウリュアレとカルナも戻る。あとには元からこの特異点にいた者たちだけとなった。
「…汝らは力を示した。であれば、余も無下には扱えぬ。玄奘三蔵、唯斗の言う通りであった。余は先を見据えるあまり、安全だが狭い道を選んでいた。なまじ聖杯なぞ手にしたからであろうな」
そう言って、オジマンディアスは聖杯をマシュに投げてよこした。投げる寸前に自分とニトクリスの怪我をちゃっかり治していた。
マシュは驚きつつ、聖杯を受け取る。こんなタイミングで特異点の聖杯が手に入ってしまうとは。もちろん、これで特異点は修復とはならない。
「褒美だ、くれてやる。それに足るだけの、胸のすく戦いであった」
「聖杯を手放したということは、私たちに協力してくれるということでいいのかな?」
「みなまで言わせるな美しい女よ」
ダ・ヴィンチが念のため確認するとオジマンディアスは肯定する。ちなみに中身は男だとは言えなかった。
「お前たちには余の神獣兵団を貸し与えよう。余も戦場にて王威を示したいところではあるが、恐らくほかにやるべきことがある。聖都攻略は貴様らだけで行うがいい」
「よかったですね、先輩。キングハサンさんにもいい報告ができます」
無事に協力を取り付けることに成功し、ほっと息をつく。さすがに太陽王を相手にするのはあまりに疲れる。
マシュが聖杯を盾に格納しながら言うと、ぴくりとオジマンディアスが目を向けた。
「…なに?キング…ハサンだと?」
「つかお前ら、あのハサン・サッバーハのことそんな風に呼んでたのか」
唯斗も初めて聞いた呼び方だ。まったく立香の肝の座り方はどうなっているのか。
そして驚いたことに、オジマンディアスは初代山の翁を知っていた。なんと、山の民を追いやって領地を広げたことによって、一度ハサンによって首を落とされたらしい。ここが複合神殿であったため回復することができたが、そうでなければオジマンディアスはその時点で退場していた。
いや、山の翁はそれを分かってやったのかもしれないが。
「まったく…奴が協力していると知っていれば、はじめから手を貸していた。先に話しておけば余と戦わずに済んだものを」
「そうね、でも戦ってみて良かったでしょ?」
「それこそ、みなまで言わせるな。やってみなければ分からないことがある、など、神々の王としては、照れくさいにも程があろう?」
三蔵の言葉にオジマンディアスはニヤリと笑ってそう返した。本当に仲間になってくれたのだ、そう実感する。