神聖円卓領域キャメロットIII−17


オジマンディアスと別れて、東の村に最短で到達したときには、もう翌日に聖都侵攻を控えていた。三日間の強行軍だったが、ランスロットたちの早馬やダ・ヴィンチのオーニソプターによってなんとかたどり着いた形だ。

村に着くと、そこはあの襲撃の夜よりも活気づいており、どうやら様々な村の頭目たちが集まっているようだった。
その数、もともと協力する予定だった7000に加えて新たに2000が勢力となっているそうだ。セルハンたちの草の根運動が功を奏して、味方になってくれた村が一気に増えたのだ。そこには、かつてカルデア一行が聖都へ向かう道すがら助けた者たちも含まれていた。
運命を動かす力とは、そうした些細なものなのかもしれない。

状況を確認したあとは、藤太が三蔵とともに炊き出しを始め、景気づけの宴会が開かれることになった。
そしてこれが、まともに話し合いができる最後の夜になる。ここで全体の動きに関する作戦会議をしてから、聖都へ向かうのだ。

とはいえ、この全体の把握というのは一部の者だけの仕事だ。各頭目たちやハサンたちは、それぞれの勢力を率いる立場であり、やることは城壁の突破というシンプルなものだけである。
マスター側では、唯斗がこの全体把握を担当して、立香はその場での臨機応変な対応に専念する形を取った。知っていることが多いほど身動きが取れなくなることもある。特に、サーヴァントとの戦闘はマスターたちにしかできないため、よりその場での対応が重要になる。
そのため、唯斗とダ・ヴィンチ、ランスロットだけが、今回の聖都攻略作戦における全体の動きを検討することになった。また、オジマンディアスから派遣された神獣使いたちやランスロットの部隊の隊長格なども場を同じくする。

村の中央に張られたテントの中で、ダ・ヴィンチが言う通りむさくるしく集まっていた。


「うーん、見事に花がない!最後の夜だというのに、むさくるしいったら」

「私も藤太殿の食事を楽しみにしていたのです。それを自重しているのですから。諦められよ」

「まぁ仕方ないね。でも唯斗君は後でちゃんと食べるように」

「うっ……分かってる」

「ランスロット卿、作戦会議が終わったら唯斗君がきちんと食事をとったか確かめておいてくれ」

「ちょ、なに言って、」


ダ・ヴィンチに念を押され、唯斗は頷いたがなぜかランスロットに確認を取らされる流れになってしまった。
そんなことをランスロットにさせるわけにはいかない、というか気まずい、と思って食い下がろうとする。


「別にそこまでしてもらわなくても、」

「そういうところはアーラシュが気を遣ってくれていたんだろう?どうせ。彼なら君にそれくらいしそうだ」

「これだから天才は…!」

「褒めるな褒めるな」


一緒にいなかったはずなのに、アーラシュと同行していたという事実だけでそこまで予想しているダ・ヴィンチに、天才と言うほかない。もしかしたら自分が分かりやすいだけという可能性もあったが、それは考えたくなかった。


「…ふむ、なるほど。承った」

「何言ってんだ」

「さ、丸く収まったところでさっさと話を始めよう」


ダ・ヴィンチはそう強引に本題を切り出してしまったため、唯斗はさすがにそれ以上は口を挟めない。ここにはほかにも多くの者がいるのだ、こんな雑談で時間を浪費するわけにはいかないということもある。


「まずはあの正門だ。とにかくあれを突破できなければ、せっかく集めた軍勢も城壁で削られてしまう。私の宝具で吹っ飛ばそうか?」

「問題はそこだ。キャメロットの正門はそう簡単には突破できない」


ランスロットが言うには、キャメロットの正門は悪意ある攻撃に対して極めて強く、たとえ聖剣であっても破壊しようという悪意があれば無効化してしまうらしい。火力の問題ではないということだ。


「では正門からの侵入は諦めるしかないね」

「ああ。櫓を作り、城壁から中に攻め入るしかないだろう。聖都の西側からはオジマンディアス王の神獣兵団もある」

「部分的にでも壁を壊せれば一気に軍勢を入れられるけど、ロンゴミニアドの外装ならそれも無理だろうな」


唯斗はテーブルに置かれた巨大な聖都の地図を見ながら、城壁の厚さにため息をつきたくなる。1万近い軍勢を聖都に流し入れるには、櫓による登攀はなかなか効率が悪い。


「俺がアキレウスと城壁を空から攻撃するのは?」

「対空砲火がある。それも、魔術による強固なものだ。裁きの光とはまではいかずとも、空中戦は避けた方がいい」

「なるほどな。じゃあ地対地攻撃に専念しよう」


唯斗はアキレウスの戦車に乗って上空からの攻撃を提案したが、やはり対空防衛も一級だ。むしろ、地上からの方が安全だろう。

ダ・ヴィンチは城壁周辺の戦力の分散状況を駒で表しつつ「ああ」と思い出したようにランスロットに尋ねる。


「遊撃騎士はどうする?モードレッドの部隊は?」

「私の部隊が引き受けよう。二度ほど正面からぶつかれば一掃できる。そのあとでそちらに合流しよう」

「では、唯斗君とランスロット卿で遊撃騎士、および城壁の兵士を掃討してもらっていいかい?私と立香君は城壁付近まで一気に進んで、連合軍を守りながら卿の到着を待つ」

「……そうだな、聖都に入れば、あとは円卓の騎士との対サーヴァント戦がメインになる。ぎりぎりまで俺とランスロットで相手の数を減らしてから立香たちと合流して一緒に市街地に入って、サーヴァントと戦いながら王城を目指す」


恐らくダ・ヴィンチの頭の中では、唯斗とランスロットによる敵兵力の削減がすでに思いついていたのだろう。先ほどの強引なランスロットに対するお願いは、暗に唯斗と関係を改善させろという意味だったのかもしれない。


「それがいいね。藤太と三蔵は戦場の攪乱、ハサンたちは連合軍の指揮、山の翁にはガウェインを相手取ってもらう」

「承知した。それでは各自、己の担当する部隊の細かい動きは事前に確認しておくように。以上、解散」


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