神聖円卓領域キャメロットIV−1
ついに、聖都攻略の日となった。
翌朝7時、聖都南方に連合軍が集い、防衛陣形となった聖都軍も正門周辺に構えている。
どうやら城壁の弓兵が3倍以上に増やされているらしく、寄せ集めの兵たちが城壁を乗り越えてくるであろうことを見越して、数で対応することにしたようだ。
アグラヴェインの的確な采配に対して、こちらは正面突破しかない。ランスロットの見立てでは、多くて6割しかたどり着けないだろうとのことだった。
唯斗はランスロットとともに城壁周辺での掃討を担当するが、馬では移動しかできず戦えないため、ダ・ヴィンチのオーニソプターをここにきて運転することになっている。
ランスロットが流れるように三蔵に口説き文句を言っているのをマシュが「頭の病気ですか?」と蔑んでいる横で、唯斗はキャスター・ギルガメッシュを呼び出す。
「二度も呼ぶとはな」
「悪い。てことで助手席に乗ってもらえるか」
「……ほう?」
運転席に乗り込んだ唯斗を見て、ギルガメッシュは楽し気にこちらを見降ろした。左ハンドルのため、ギルガメッシュは右側に座る。
「この我を助手席に乗せるなどという栄誉、斯様な状況でなければ貴様の人生すべてを投げうってでも得られるものではないぞ?当然、快適なドライブテクニックを見せるのであろうな」
「善処する」
それだけ返して、道中にダ・ヴィンチに教えてもらった操作方法を思い返す。
その横で、ランスロットは乗馬したまま、背後に控える部下たちを見渡していた。このランスロットとカルデアの突撃を合図に、全軍が聖都へ進むのだ。
「これより我らは聖都を落とす!この地に生きる者すべてのため!獅子王の過ちを糾弾するため!みな、剣を取れ!今こそ、聖地を正しい姿に戻す時だ!」
そうランスロットが鬨の声を上げた直後、聖都を北側から包むように砂嵐が発生した。あっという間に砂嵐が聖都も連合軍も覆い隠す。
どうやらこれは自然現象とのカルデアの観測ではあったが、一瞬だけ浮かび上がった髑髏と鳴り響く鐘の音に、山の翁のものだと判明する。本当に来てくれたのだ。
これなら、城壁からの射撃によって多くが命を落とすことはない。
「総員、進軍!!」
そしてランスロットの号令とともに、ランスロットの部隊とカルデア側のサーヴァントたちが一斉に走り出し、それに続いて連合軍全軍が聖都へと走り出す。
唯斗もオーニソプターのアクセルをふかして、ランスロットの馬に並走して走り出した。
「ほほーう!!なかなか悪くないではないか!!」
テンションを上げたギルガメッシュは二人の前方に透明な結界を張ってくれているらしく、砂嵐が視界を塞ぐことはない。フロントガラスのような結界によって視界を維持しつつ、ランスロットとはぐれないように速度を調節する。
初めて運転したが、なかなか悪くない。自分の思うままに、オーニソプターが速度を上げて進んでいくのは、だんだんと快感になってくる。
『唯斗君、前方500メートルに粛清騎士の部隊だ!』
「横幅は」
『大体、50メートルほどの陣を組んでいるようだ』
「了解。ランスロット!俺は右側から切り込む!」
「な…唯斗殿!?」
「なんかいける気がしてきた!!」
ぐんとスピードを上げて唯斗は前方へと進んでいく。砂嵐の中では方向感覚が鈍るが、そこはきちんと運転席に方位磁石があったため、角度と距離を冷静に分析しつつ、アクセルを一気に踏んだ。
「…おい何をしている?スピード違反ではないか?」
「この時代に俺を縛れる法はないからな」
「さては貴様!運転席に座ると豹変するタイプか!ええい下ろせ!無理心中は御免だ!!」
「人生すべてを投げうってでも得られるものではないって言ったのはあんただ!」
「誰が我の人生まで勝手に投げて良いと言った!この不敬者!!」
「エルサレムでドリフトとか映画みたいだろ!!」
「おのれええええ!!!」
ハンドルをぐるぐると回して一気に回転することで、オーニソプターは激しく砂埃を上げながらドリフトし、見事に前方で騎士たちを捉える。
「あんたのご所望したドライブテクニックだぞ王様!突っ込むか!?」
「こんのバーサーカー脳が!!ここでステイだステイ!!」
ギルガメッシュに怒られ、アクセルペダルにかけていた足から力を抜く。
代わりに、ギルガメッシュは前方の騎士たちを鬼気迫る表情で駆逐し始めた。鎖で地面に繋ぎ、魔杖から爆破術式を展開して次々と騎士を破った。
なんだかいつもより戦闘意欲が高いように見えるのは、まさか本当に突っ込むと思っているからか。さすがにそれはオーニソプターが壊れてしまう。
「あ、でもカウンター効果のある結界を周囲に展開した状態で突っ込めば一掃できるんじゃないか…?」
「ええい世界の真理に気づいたような顔をするんじゃないたわけェ!」