神聖円卓領域キャメロットIV−3


順調に敵を倒していき、アキレウスによる攪乱もあって、砂嵐の中で敵を見つける頻度が少なくなり始めた。

ランスロットとディルムッドがいれば大概の部隊は数分で片付くし、アキレウスも単騎で中隊規模を駆逐できる。

市内に突入した連合軍は市内の戦力に足止めされているが、逆にそれが立香たちの進路をクリアにしており、立香たちは城下町区画まで到達しているようだった。王城突入のタイミングまでにアキレウスと市内に入ろうと考えていると、突然、ロマニが鋭い声を出した。


『待った!魔力計が振り切れている!止まるんだ!これはもう時空断層レベルだぞ!?今そこに、何か巨大なものが現れようとしている!』


叫ぶようなロマニの報告は、恐らく、ロンゴミニアドの出現を告げるものだ。
まさかもう聖槍が起動するというのか。間に合わなかったのかどうかすら分からないまま、肌でも膨大な魔力の放出を感じる。

そしてその直後、聖都中央から巨大な光の柱が立ち上がった。砂嵐で視界が悪い中でもしっかりと分かるその輝きは、おぞましくも神々しい。まさに神の所業。


『重力崩壊を確認、まずい、世界が閉じ始めた…!』

「くそ、ロンゴミニアドが起動した…!立香、王城には入れそうか!?」

『分からない!でも城が全部あの光の柱に包まれてる!』

『まずは入れるところを…ってサーヴァント反応だ!』


恐らく、あの光がある限り中に入ることはできないだろう。
このキャメロットは聖槍の外郭、ならば王城を包む光は鞘だ。聖槍そのものは、まだアルトリアが所持しているままのはず。最果ての塔が現界する前に、なんとかあの鞘を突破しなければならない。

なのに、立香たちはモードレッドと会敵したようだった。律儀にアーラシュとの約束を果たしに来たらしい。単騎のようなので、恐らく立香たちで倒せるはずだが、時間は過ぎてしまう。


(おい唯斗よ、聞こえるか)


するとそこに、オジマンディアスから念話が聞こえてきた。さすがに距離が空いているため聞き取りづらく、慌てて唯斗はオーニソプターを止めて集中する。


「ディルムッド、ちょっと見張り頼む」

「は、」


ディルムッドはすぐに助手席を降りて周囲の警戒を始める。
その間に、唯斗は念話に応答した。


(聞こえてる、オジマンディアス。最果ての塔の外装、なんとかできるか)

(当然だ。そのための余であり光輝の複合大神殿なれば。あれは内側からも何も通さぬ鞘、裁きの光など元より些末なことだが、それもないとあらば我が敵ではない)

(分かった……どうか頼みます、太陽王)

(…ふっ、我が威光、とくと見るがいい)


ロンゴミニアドはオジマンディアスが助けてくれるらしい。それならば、もはや人の手の届くものではない神の偉業を、神王に破ってもらうときだ。


『なんだこれは!?大質量、聖都に急速接近!』

「オジマンディアスのサポートだ」

『なるほど…いや、こんな規格外のエネルギー…すごいな、本当に』


感嘆するロマニの声に被せるように、青白く輝く光線が砂嵐を吹き飛ばし、聖都の中央に聳える光の柱に激突した。魔力同士の衝突によって、衝撃波が空の雲をかき消し、それに伴う砂嵐が別に巻き起こる。その風に結界をあてがって防ぎつつ聖都の様子を伺うが、青白い光の向こうに黄金の光は健在だ。


「…届いてない、獅子王の魔力障壁か…!」

(唯斗、これよりさらなる追撃を見舞ってやる。カウンターも来るだろう)

(…僭越ではあるけど、受け取ってくれ)


大神殿からの攻撃は障壁に阻まれており、光の柱に当たっていない。攻撃を重ねつつ、予想されるカウンターに対応する必要がある。これは、事前に想定した通りだった。
そうなってしまったことを残念に思いつつ、唯斗は後を託すことを決意する。


「令呪を以て命じる。俺たちに道を」


そう呟いた途端、右手が輝き令呪が一画減る。令呪は時間がたてば回復するため、アーラシュに使用して消費した分は回復している。これで残り二画だ。

一気に魔力が減る感覚は、令呪だけではなく、オジマンディアス自身が唯斗から引き出す分と合わせたもので、かつてなく急なものだった。


「ぐ…ッ!」

「大丈夫ですか、我が主よ…!」

「問題ない、」


心配するディルムッドを制して、さらに威力を増す青白い光線を見上げる。黄金の光柱から、急激に魔力が凝縮していくのが分かった。裁きの光だ。

一度目はアーラシュが防いでくれた。二度目は、ニトクリスが防いでくれる。無理をして霊基が砕けないようにしながら、オジマンディアスが攻撃を続けられるようにするために、唯斗は令呪を送った。だが、それだけではとても、あの裁きの光をかき消すことはできないだろう。

ここで、彼らとは最後の別れということだ。

ロンゴミニアドの外装から直接放たれた裁きの光は、まっすぐにエジプト領へと向かっていく。大神殿の光線と裁きの光とが、互いに干渉しあいながらユダヤ砂漠を100キロに渡って貫いた。

直後、今度は光の柱の上空から、なんと逆さまのピラミッドが出現した。クフ王のもののような巨大なピラミッドは、邪悪な光の柱と違い、真の黄金の輝きを放つ。
ピラミッドはロンゴミニアドの光を切り裂きながら王城直上から降下していき、そして内側から爆発するとともにロンゴミニアドの光をついに吹き飛ばした。
ひときわ激しい強風が聖都の市街地の屋根を吹き飛ばしていき、砂漠の砂を巻き上げる。


(…余とニトクリスはもう休む。冥界に女王を送らず済んだこと、礼を言おう、マスター)


そんな言葉を最後に、ピラミッドはロンゴミニアドの外装とともに掻き消え、風が止んだ。同時に、パスが切れる感覚。エジプトがあるべき姿に戻ったのだ。


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