神聖円卓領域キャメロットIV−15


マシュの盾は安定し、浮かび上がっている正門も揺らぎない姿になる。
それを見たアルトリアは怪訝な顔をした。


「貴様、何者だ。見たところ円卓の騎士のようだが…」

「っ、知らなはいはずがありません!この方はベディヴィエール卿、円卓の騎士です!」

「何を言っている…?そのような名前の騎士を、私は、知らな…」


どうやらアルトリアはベディヴィエールの記憶がないらしい。他の円卓の騎士は知っていたのに、元から存在していなかったかのように振舞っている。


「そうでしょうとも。しかしこの輝きを見れば思い出しましょう」

「っ、その体で…!」


完全なエーテル体でなくなったその状態でアガートラムを使えば、そのダメージはどうなってしまうのか。唯斗は止めようとしたが、アーサーに制止された。


「これは彼の戦いだ」

「ッ!…わかった」


アーサーにそっと掴まれた腕に大した力は入っていないが、その瞳は強く語っていた。邪魔をしてはいけないと。
唯斗が頷くと、アーサーは腕を離す。


剣を摂れ、銀色の腕(スイッチオン・アガートラム)。今こそ、裁きの光を切り裂きたまえ…!」


そしてベディヴィエールは宝具を展開した。眩く輝いたアガートラムの光は、先ほど見た聖剣の輝きと似ている。いや、そのものですらあるかもしれない。
今まで気づかなかったのは、それも魔術による認識操作だったのだろう。

アガートラムによって、ベディヴィエールは聖槍の光を叩き切る。実体のないもののはずなのに、それは綺麗に光を切り裂き、そして霧散させた。
エネルギー同士が激突する音とともに、光は消え失せ、はっきりと玉座が視界に入る。玉座以外に何もない床が波に浮かぶ光景となり、波の音が届いた。


「……今の、輝きは…知っている、それを、私は知っている…!貴様、いったい、なぜ…!」

「…あぁ、知っているだろうとも」


そっとアーサーが呟くが、それは頭痛に顔をしかめるアルトリアには聞こえていないだろう。
ベディヴィエールはそっとこちらを振り返った。


「…立香、唯斗。ここまで来られたのはあなたたちのおかげです。皆さんのこれまでの厚意すべてに感謝します。そして、一つお詫びを」

「ベディヴィエール…?」


にっこりと優しく微笑んだベディヴィエールに、立香も様子がおかしいと気づいたようだ。それでもベディヴィエールの言葉を待つ。


「私はあなたに隠し事をしていた。獅子王の変質の理由を知っていた。知っていて、隠していたのです」

「待って、ベディヴィエール、体が…」


しかし、ベディヴィエールの足元に血が広がり、その手先から黒ずんだ指が崩れ落ちると、今度こそ立香は目を見開いた。


『…嘘だろ、どうなっているんだ、どうして今までこんな誤作動をしていたんだ!?観測結果が異常だ!霊基反応がまったくない!魔術回路も普通の人間のそれだ!そこにいるのは、普通の人間だ!』

「う、そだろ…どうして…?」


カルデアの観測でも真の姿が映ったようだ。これまでサーヴァントだったはずで、それに対して誰も違和感を抱かなかったはずなのに、と立香も事態を飲み込んで驚愕している。
いや、唯斗はあの夜に一瞬だけその可能性に至ったが、すぐにそれを排除した。あり得るはずがないと、それ以上は考えなかった。


「ドクターの解析は正しい。私はサーヴァントではありませんから。唯斗は、少しだけこの事実に近づいたものの、詳しくは聞かずに私を信じてくれた。私はとても嬉しかったのです、私が普通のサーヴァントではないと知りながらも、信じる覚悟を決めてくださったことが。だから本当に良かった、ガウェイン卿を倒して生きていてくれて、本当に」

「マーリンが魔術で普通のサーヴァントに見せてるのは分かってた、でも、まさか本当に人間だとは思わなかった。そのアガートラムも…エクスカリバーに縁のあるものだよな」

「ええ、これはエクスカリバーそのものです」

「エクス、カリバー…!貴卿は、まさか……」


魔術によって隠されていたアガートラムの輝きは、エクスカリバーのものだった。関連する何かかと思ったが、聖剣そのものだという。
それを聞いて、アルトリアはようやく記憶が戻ってきたようだ。


「…そう、私は罪を犯しました。王を失いたくないという思いで、あまりに愚かな罪を」


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