揺れる心模様−7


オジマンディアスは、久しぶりにシミュレーターから出てカルデアの廊下を歩きながら、そういえば唯斗と会うのはレイシフト前だったと思いだす。

まったくそんな気がしないのは、特異点の記憶がすべてオジマンディアスにあるからだ。

もともと、オジマンディアスはなぜ自分が唯斗の召喚に応じたのか、雑駁な所感しかなかった。「世界を救うというのはやったことがないから」という理由はあったものの、自身のことなのに曖昧だったのは気になっていた。

一方そのころ、第六特異点のオジマンディアスは聖杯を獲得し、それを使って勝手にカルデアのオジマンディアスに同期していた。あくまでそれは向こうが一方的に情報を取得しただけで、こちらには共有がなかった。
我がことながら少し腹が立ったものの、聖杯がオジマンディアスの手元を離れると同時に、それまでの特異点での自身の記憶がすべて共有された。そこで初めて、オジマンディアスという存在が、暴君としての王であった自分が、あの特異点で世界のために共闘するという方法を選んだことで、世界を救う戦いに手を貸してやろうという気になったのだと知った。

人理は、オジマンディアスが記憶を取得する段階を小癪にも精密にコントロールしていたということだ。

その後、記憶が更新されることはなかったが、無事に時代の修正が完了してマスターたちが帰還し、聖杯がカルデアに回収されたことで、ついにすべての記憶が聖杯を通してオジマンディアスに与えられた。
聖都攻略作戦が始まり、裁きの光による攻撃をニトクリスが防いだとき、唯斗からの令呪が助けとなって、ニトクリスの霊核破損やオジマンディアスの霊基欠損は免れた。それでもなお、あの光には打ち勝てなかっただろうが、事前に唯斗が予想していた通りの展開となり、唯斗が願った通りに助けられた。

エジプト領とともに消失する間際、オジマンディアスは、唯斗の元でサーヴァントとして振舞うことも悪くないと、そう思ったのだ。


そうしてすべての記憶を持ったまま、オジマンディアスはニトクリスとも再会して、部分的に記憶が残っていたニトクリスとともにカルデアの会議室に向かった。
今日は、すべてのセクションから特異点に関するレポートが提出されたため、振り返りと反省点・改善点の洗い出しを行って、第七特異点までの期間をどう使うか考えるための材料とすることになっている。

オジマンディアスとニトクリスが呼ばれているのは、記憶が残っているためだ。同様に記憶のある三蔵とベディヴィエールも対象だ。また、性能の確認のため他の円卓の騎士たちとアルトリアも呼ばれているらしく、これにマスター二人とマシュ、ロマニ、ダ・ヴィンチを加えて計13人が会議メンバーとなる。


「遅刻ですよ、オジマンディアス王」

「無礼な!ファラオが他人を待つなどあり得ないと知りなさい、ブリテン王!」


会議室に入るなりアルトリアが遅刻を指摘すると、ニトクリスが即座に反論する。一瞬にして円卓の騎士たちも火が付いたようだったが、すかさずダ・ヴィンチが咳払いをした。


「こらこら、そういうのは後にしてくれ。こっちは古代へのレイシフト準備で大忙しなんだ。とっとと済ませようじゃないか」


ダ・ヴィンチの言葉に、アルトリアが頷いて食い下がらなかったため、ファラオ二人も席につく。上座と下座のない円卓を踏襲しているのか、テーブルは丸テーブルが使われている。人数もまさに円卓の騎士のような数だ。
ロマニは集まったメンバーを見渡してから口を開く。


「集まってくれてありがとう。いつもは僕とレオナルド、マスターたちだけでやっているんだが、今回はイレギュラーが多かった。特異点の記憶があるサーヴァントと、性能確認のために円卓の騎士たちにも同席いただいている。では早速始めよう」


話はレイシフト直後、13世紀中東に存在した古代エジプトに着地したときの確認から始まり、1か月に及ぶ特異点での滞在を順々に振り返っていった。
大気組成から戦闘の様子に至るまで、様々な観点から確認していくのは骨が折れるかと思われたが、期間が長かったのは移動に時間がかかったためであったため、出来事だけを振り返ればすぐに聖都攻略まで話は進んだ。

三蔵のファイナル如来掌の話から聖都突入、そしてモードレッド・トリスタンとの戦闘と続く。ちなみにモードレッドがこの場にいないのは、会議という場を拒否したからだ。

やがて話は、ガウェインとの戦闘に移った。


「さて、王城突入からガウェイン卿との戦闘になるわけだけれど…唯斗君、」


ロマニは全員の手元にある書類に記載されたガウェインのデータから、唯斗に視線を移す。軟弱なこの男にしては固い声音だ。


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