居場所は最初から−2
炎を纏ったガラティーンがアキレウスを貫き、血しぶきが飛び散る。直後、迫りくる炎、焼け落ちるタペストリー、溶ける窓枠と飛散するガラス、そして。
「ッ……!は、くそ……はぁ、最悪だ…」
飛び起きたベッドの上、唯斗は呻くように呟く。
昨晩、ガウェインとのことがあったあと、サンソンが食事を持ってきてくれたが、サンソンが気を利かせて部屋を出て行ったあと、結局唯斗は食事に手をつけなかった。
それでも空腹を感じることはなく、ツキツキと痛むような感じすらあった。
さらに、右腕が痛み、完治したはずの火傷が爛れるような感覚が残っていた。最悪の目覚めだが、今日は幸いにも休日として指定されていた。
食事の中身をすべて昨夜と同様に外へと転移させてから、唯斗はトレー一式を食堂に返し、そのまま簡単に朝食を済ませることにする。
ゼリーとコーヒーだけ頼んで席に着き、食べ始めてからすぐに気分が悪くなる。
味は美味しいと感じているはずなのに、食べ進めるうちにどんどん具合が悪くなる気がしたのだ。
「おいおい、それだけですかいダンナ」
そこに声をかけてきたのはロビンフッドだった。唯斗の正面に座ったロビンフッドは、まだ朝の静かな食堂を見て、少し声を潜める。
「気分悪そうですけど。こういう日は、人と会わない方が無難なんじゃないです?」
「…そう、かもな。ロビンは安心するけど」
「そりゃ重畳。隠れたくなったらいつでも隠してあげますよ」
「…うん、ありがとう」
ロビンフッドの気遣い方は、立香と少し似ているが、立香よりも婉曲的だ。しかし、彼らしいものだった。
こういう言葉をかけてくれるだけでもホッとするものだ。雰囲気というか、ロビンフッドの隣はひどく居心地がいい。
押し付けることはしないロビンは、それ以上会話を続けず、しかしその場にとどまった。他の者が話しかけてこないよう、どこか周りを遠ざけるような空気を醸し出していた。
おかげでゆっくりと過ごすことができ、唯斗は礼を言って食堂を後にした。
ロビンフッドが言っていた通り、今日はもう部屋に籠っていようと思い、部屋で過ごすためのインスタントコーヒーの個包装の袋をいくつかもらってから、それを手にもって廊下を歩き始める。
今日は立香も休みのため、カルデアは全体的に静かだ。活動せずゆっくりする日という感じがする。
そんな中で廊下を歩いていると、突然気配がすぐそばに現れた。
「おはようさん、マスター」
「アキレウスか。おはよう」
急に現れたのはアキレウスで、霊体化していたのかと思ったが、恐らく単に早すぎて気配を察知できなかっただけだろう。唯斗の正面に立ったアキレウスは、15センチ高い位置からこちらを見降ろす。
「昨日もちょっとひと悶着あったって聞いてよ。心配してたんだが…顔色悪いぞ?」
「あ、あぁ…大丈夫、」
アキレウスの顔を見上げると、夢で見た光景が思い起こされる。実際には体を貫かれるところまでは行っていなかったが、ほぼ似たようなことがあったため、気分が悪くなる。
「大丈夫って顔じゃねぇけどなぁ…っと、落としたぞ」
持っていたコーヒーの袋が指の隙間から落ちて、それをすぐにアキレウスが拾い上げようとした。こんなところまで速いのか、と思っていると、突然、額に衝撃が走った。
「いッ、てぇ!?」
「どうした!?」
鋭い痛みが追いかけてきて、唯斗は額を押さえる。生暖かいものがどろりと垂れてきて、床に転がった石が視界の端に入る。
アキレウスは額から血を流す唯斗に目を丸くして、すぐに庇うように立ちながら辺りを見渡す。