居場所は最初から−4
徐々に積み重なっていく様々なことから逃げるように、それをすべて吐き出すようにして嘔吐することが多くなっていった。
すっかり癖になってしまっていると自覚はあったが、誰かにバレるようなものでもなく、吐けばすっきりとして周りを心配させないような表情に戻れるため、特に治そうとは思わなかった。
そうして何日か過ぎたとき、解決するまでもない小特異点にリソース回収と訓練のためレイシフトしたときのことだった。
メンバーはアーサー、ディルムッド、アーラシュという三騎であり、場所は中世フランスのリヨン近郊、特に問題など起こらないはずだった。
『ちょっと待った!ものすごい数の飛翔反応!これは…ワイバーンの群れだ!いったいなんで!?』
「は!?くそ、竜種は1体いれば無限に増殖する…特異点の端にジュラ山脈がある、そこの地下にでも潜んでたんだろ。シバで観測しづらい霊脈だしな」
どうやら観測できていなかった大量のワイバーンが存在していたらしい。リヨン近郊の森にいたが、東の空に無数の竜の姿が見える。
「また大群だなぁ!100はくだらないんじゃねぇか?」
アーラシュは千里眼によって大体の数を確認する。3桁は少なくともいるらしい。
「ロマニ、この特異点の自然消滅にかかる時間は」
『1週間すれば消えるね。ただ…』
「その間にこの空間にいる人々は全滅だな」
そうなれば、さすがに特異点としての性質は悪化する。つまり、ちゃんとした特異点になってしまい、消滅せず、歴史に歪を残してしまう。
『すまない、特異点発生の原因そのものは軽微なものだから放っておいていい。この群れを駆逐して、特異点の深刻化を防いでくれ』
「オーダー了解した」
作戦はワイバーンの掃討作戦に移行する。簡単な任務から険しいものに変わったが、さすがにこの3人の表情は変わらない。
「マスター、あの群れのボスとなるでけードラゴンも見つけた。あれを倒さないと増え続けるな」
「なるほどな、了解」
アーラシュが見てくれた限り、数は概ね100ちょっと、中央にドラゴンが1体。一気に戦力はこちらが不利だ。
アーサーは冷静に飛行速度を分析し、剣を抜く。
「会敵まで5分を切っている。マスター、指示を」
戦闘となれば、アーサーも唯斗もぎこちなさは失せる。そこのメリハリは、少なくともアーサーとはつけられた。ガウェインとはこうはいかない。
「アーラシュは先制攻撃を開始、ディルムッドとアーサーは待機。オジマンディアス、」
まずアーラシュに遠距離での攻撃を開始させ、群れをこちらに接近させる。リヨンからはまず遠ざけられるだろう。
続けてオジマンディアスを呼び出すと、唯斗の隣に存在感のある男が現れる。
「急に呼び出されるというのは愉快なものではないな」
「あのワイバーンをまとめて薙ぎ払うのは?」
「ふははは!よかろう!それなりに愉快な指示故にな!」
オジマンディアスはそうは言ったが、もとからあまり召喚されたことに不満はなさそうだった。唯斗の指示で嬉々としてメセケテットを出現させると、燃え盛る炎の船から破壊光線を放った。
光線はワイバーンの群れを左から右に舐めるように直撃し、光が当たったところから次々と爆発が生じていく。
「さっすがファラオの兄さんだな!半分減ったか?」
「当然である!神王たる余の前に、羽をもって飛ぶだけのなまくらなど敵ではない」
「コスパくっそ悪いけどな…!」
オジマンディアスの攻撃ひとつひとつは極めて重く、殺傷能力は高いが持っていかれる魔力量も多い。
「ふん、軟弱な。50ほどまで減らしたのだ、十分であろう」
「あぁ、ありがとな」
とにかく数を一気に減らせればよかったため、オジマンディアスはカルデアに戻る。
そのころには、第一波がこちらに到達していた。
「アーサー、ディルムッド、左翼方向から戦闘開始。アーラシュは引き続き俺のそばで攻撃」
「了解」
「承りました!」
アーサーとディルムッドは森の中を走り出し、跳躍してワイバーンに飛び乗ると、一匹一匹を簡単に仕留めていく。
アーラシュの連続した矢による攻撃も、固い鱗を貫いてダメージを与えていった。
しかしその直後、ぐらりと視界が揺れた。足元が覚束なくなり、唯斗はつい地面にへたり込む。
「おいマスター、どうした?」
「ちょっと…めまいが…」