居場所は最初から−9
食堂に着くと、ちょうどエミヤが出てきたところだった。
エミヤはこちらを見ると、やはり不快そうにため息をつく。
「役に立たないくせに腹は減るのだな」
「っ、エミヤ…」
「あぁ、クラス名で呼んでくれないか。馴れ馴れしいのは嫌いでね」
それだけ言ってエミヤは食堂を出て行った。
ぐさりと刺さった言葉に、息がしづらくなる。これはもう、認めざるを得ない。
エラーなどではない。これは、唯斗の無意識の恐怖を正確に反映している。同時に、こんなものを克服することなどできないと理解する。
ディルムッドやサンソンのときは、明確に解決し得る懸念だった。しかしこの状況は違う。
いや、もしかしたら同じかもしれない。サンソンの潜在意識の中にいたときは兵士たちを倒したし、ディルムッドのときもフィンの形を取った負の感情を倒した。
これも、倒してしまえば問題ないのではないだろうか。
ちょうどそこに、食堂から出てきた立香とマシュの姿が目に入った。
「…あぁ、唯斗。いたんだ」
「……お疲れ様です」
どうやら唯斗の意識は、立香とマシュが暴言を吐く姿をイメージできなかったのか、二人はギルガメッシュたちとは違って明確な言葉を口にしなかった。
だが、そのよそよそしさと、立香のなぜ外を歩いているのかという無言の圧、そしてマシュの皮肉めいた挨拶に、彼らの感情を理解する。
「…マスター、これは、」
「ちょっと黙っててくれ」
唯斗はガウェインを黙らせると、マシュに向けて指先を向ける。こちらに背を向けており、カルデアの姿のため武装もしていない。
「マスター!!何をしているのです!?」
「うるせぇ、深層心理なんだ、全員殺せば解決するだろ」
「何を仰います!」
ガウェインに止められたことで、立香たちはどこかへ行ってしまった。唯斗は指を下ろし、無言で歩き出す。
早くこの事態を解決しなければならない。解決するためには、全員殺さなければならない。唯斗の恐怖を具現化した存在である彼らを、すべて。
「マスター、このような空間、やはりエラーです!いったん停止して、」
「黙れって言ってるだろ!!」
そう怒鳴ったところで管制室に到着し、スライドする自動ドアから中に入る。
そして、室内にいるスタッフたちに次々と攻撃魔術を展開していった。
「きゃあ!?」
「なん、ぐはッ…!」
「やめて!何を、あがッ!」
悲鳴を上げるスタッフたちは、みな血を流してデスクに伏せたり床に倒れたりしていき、外したガンドで機材が火花を散らして破損する。
「…悪い、ゆるしてくれ……!」
手がだんだんと震えだし、呼吸が上がる。
それによって、次第に外す回数が増えていった。
そうやって室内で目についた者たちをどんどん殺していくと、ついにガウェインが剣を抜いて唯斗の攻撃を弾いた。
「おやめなさい!これ以上は…!」
「令呪を以て命ずる、動くな」
「な…!」
唯斗の右手が輝き、令呪が擬似的に発動する。擬似的なものであっても、ガウェインは動けなくなる。そういうように演算されているのだ。
ガウェインが動きを止めたところで、所長席にいるロマニと、ロマニを庇うように立ってこちらを睨むダ・ヴィンチが目に入る。
「こんなことをして、ただで済むと?さすがの君でもやむを得ないぞ」
ダ・ヴィンチの言葉に、唯斗は目を伏せる。
「悪い、とっとと終わらせないと、早く解決しないと、本当に俺は…このままじゃ…このままじゃ…ッ!ごめん、本当に、ごめん…!」
震える手をロマニとダ・ヴィンチに向ける。ターゲットがぶれないよう、左手で手首を押さえるが、それでも手が震えていた。