居場所は最初から−11


「……俺、人生で必要とされたの、グランドオーダーが初めてだったんだ」

「…あなたの過去は、ドクターから聞き及んでいます。勝手に知ってしまったこと、お詫びします」

「いいんだ、他のサーヴァントはそもそも夢で共有しちゃったくらいだし。むしろ話が早くて助かる」


ロマニから話していてくれたようで、ガウェインは唯斗のカルデアに来るまでの事情を知っている。それならば話は早く済む。


「話を聞いた通り、俺はずっと一人で生きてきて、だから世界がどうなっても、最初はどうでも良かった。グランドオーダーが始まってからも、俺は基本的に人類がどうなろうと知ったこっちゃなかったから、メインのマスターっていう役割を立香に押しつけて、自分は予備員って立場に甘んじてた。だんだんそういう考え方も変わっていったけど、第四特異点で、俺は本当はいなくても良かったんだって理解した。立香は、一人でもグランドオーダーを成し遂げられるような、そんなヤツだって知ったんだ」


ロンドンで魔霧によって動けなくなった唯斗に代わって活躍した立香を見て、もともと唯斗の存在はいてもいなくても結果が同じだったのだと理解した。
立香一人でも、いや、立香さえいれば人理は修復できる。それは立香がサーヴァントたちを巻き込んで事態を良い方向に動かせる天性の才能を持っていたからだ。


「前の会議で話した通りだな、そのあたりは。立香さえいればグランドオーダーは成し遂げられる。そういう意味で、俺は本当はいなくてもいい存在だった。もちろん、いれば便利な人間だったと思うけどな。いずれにせよ、第四特異点以来、俺は自分が本当は不要な存在だって自覚したから、それに対して恐怖があったんだ」

「必要とされなくなる恐怖、ですね。先ほどのような」

「そういうこと」


唯斗がずっと恐怖していたこと、それは、必要とされなくなること。だから、自分でも役に立てるのだと示したくて、第五特異点や第六特異点では、第三特異点まででは考えられなかったような積極的な行動を取った。


「…第六特異点でガウェインと戦ったとき、最初は立香たちと一緒に戦ってて、それでも勝てないって、このままじゃ全滅するって思ったとき、初めて怖くなった。もし立香が死んだら、自分に役目が回ってくるって。立香に任せきりにしてたことが自分に降りかかることを俺は恐れた。それがすげぇ自分勝手で嫌になったけど、俺は予備員だからこそ、そういう場面で立香の身代わりになるべきだと思った。それは、第二特異点からずっと思ってたことだった」


ローマへのレイシフトの直前、夜の食堂で一人泣いていた立香を見て初めて、唯斗は自分がいざというときの身代わりになるべきだと思った。帰るべき場所があり、待っている人がいる立香は帰らなければならないと。


「人類のことなんてどうでもいいから、正規マスターの肩書きを立香に押しつける代わりに、俺はいざというときの身代わりとして予備員の立場でいると決めた。でも一方で、だんだん、英霊たちと出会って実際の歴史の舞台を見るうちに、この世界をそう悪く思わなくなって、いつしか、俺も人理を繋ぎたいと思うようになった」


根底には、立香の身代わりとして予備員の唯斗がいるという意識がずっと残っていた。
だんだんと自身の目的としても人理を繋ぐリレーに加わりたいと思うようになって、様々なことで立香の影響を受けて変化があった。
しかし第四特異点以降、自分は本来不要な存在なのだと自覚した。


「…だから、ガウェインとの戦闘で、自分が身代わりになることを実際に選んだとき、俺の中で前向きに変わった部分が、俺に死への恐怖を与えた。そんでもって、本当に俺がいなくてもどうにかなるって分かって、怖くなった。馬鹿みたいだよな、自分なんていてもいなくてもいいって思って予備員として身代わりになるべきだと思ったのに、いざとなったら、自分の不要性を示すことになるのが怖くなった」

「当然です、自らに存在価値がなかったなどと自覚することが怖くない人間などいない。そしてあなたは、そのような価値のない人間ではないはずです」

「…ありがとう。でも、そういう恐怖が、こうしてカルデアに来てくれたガウェインを通して、常に前面に出てくるようになって、俺は、お前と一緒にいられなくなった」

「なるほど…私に対してのトラウマというよりは、特異点の私をきっかけに自覚した蓄積された恐怖や不安が、この私の存在によって常に刺激されていたわけですね」


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