居場所は最初から−13


ガウェインは新たな主を部屋に送り届けてから、ごく些細な我が儘を叶えるため、軽食を用意しに食堂へと向かった。
なんでも言っていいと言って、やっと出てきたものがそれだ、いじらしさにもっと甘やかしてしまいたくなる。

もとより他の円卓の騎士の話を聞いて、己のマスターに対しては極めて好印象だった。自分で第六特異点の記録を閲覧して、よりその思いは強まった。
記録には観測された会話のほとんどが残っているため、円卓が聞いていない唯斗の会話も残っており、そうした様々な会話の端々から、知的で冷静、聡明で誠実、そして芯の通った人物だと分かった。

だからこそ、なるべく早く関係を改善させたかったがうまくいかず、ガウェインが自身を軽んじるようにもとれる発言を食堂でしてしまったときには、泣きそうになりながら「あなたを軽んじたいわけじゃないんだ」と言ってくれた。

早く彼の役に立ちたいと思う気持ちが逸る一方で、あの会議で聞いた主の過去や考え方に、自分で解決できるようなことではないとも理解した。

そのため、ロマニたちが場を用意してくれたことはとても助かった。
これで唯斗のメンタルブロックを破壊することができればなんとかなるのでは、と思って臨んだシミュレーションだった。
しかし、そこで見た唯斗の内心は、まさかのカルデアだった。唯斗は、キャメロットではなくカルデアに恐怖を感じていたのだ。

いったい何かと思えば、心象風景にいる人々の様子から、必要とされなくなることへの恐怖を募らせていたことが分かった。
シミュレーター内の人間を殺していけば解決できると言って、尋常ならざる様子で次々と殺していく唯斗を見たガウェインは、その心優しさでこの行為は必ず傷を残すと判断し、非常停止コードを起動してシステムを停止した。

シミュレーターから出たものの、錯乱状態の唯斗はサンソンを誤射してしまい、そこで、表面張力のようになっていた感情が溢れる。

トイレで慣れたように嘔吐している姿から、この吐き癖こそがバイタル低下の直接的な理由だと判断し、吐くことで精神的に楽になろうとするほど唯斗を追い詰めている問題を正面から尋ねた。
ようやく唯斗は心の内側を明かしてくれたが、その積み重なった恐怖や不安の数々は、少年が背負うにはあまりに過酷なものだと思った。

何よりも、こうなるまで放っておいた周りの人間、特に唯斗にとって近しい存在である異世界の王に対して、憤りを感じてしまった。

まずはすべてを言葉で吐き出させて、ガウェインを信頼して体を預けてくれるようになったのは僥倖だったが、根本的な問題は依然としてガウェインが解決できることではない。
一刻も早く唯斗を楽にさせるにも、あまり筋の通ったやり方ではないが、ガウェインから話してしまうことにする。

食堂に到着したガウェインは、室内を見渡し、ちょうど関係する人物が全員揃っているのを確認した。
いや、ガウェインと唯斗がシミュレーションで事態解決を図っていると聞いて結果を待っていたのだろう。


「ギルガメッシュ王、異世界の我が王、あとエミヤ殿も。少しよろしいでしょうか」


ガウェインが声をかければ、特に驚いた様子もなく、ギルガメッシュとアーサーがカウンターまでやってくる。エミヤもカウンター越しにこちらまでやってきた。


「ガウェイン卿、マスターの様子は」


アルトリアとアーサーには真っ先に挨拶をしていたガウェインだったが、二人とも根底はやはり同一の人物なのだと感じる。

すぐに唯斗の様子を尋ねてきたアーサーは見るからにやきもきとしていて、それだけ心配しているのならなぜ、とは思わないでもなかった。


「お聞きしたことを正直にご報告しましょう」


とりあえずガウェインは、先ほどのシミュレーションで再現された心象風景と、その後のトイレで聞いた唯斗の心の動揺を包み隠さず話した。
本人のいないところで話すのはどうかと思ったが、恐らくこれは本人が話しづらいと思っていることでもあるため、他人から事務的に話される方が楽なタイプの事柄だろう。

必要とされなくなることへの恐怖を抱く中で、それを真正面からギルガメッシュに叱責されたあたりを話すと、さすがのギルガメッシュも気まずそうにした。
そのときに厳しい言い方をしてしまったというエミヤも額を押さえている。


「マスターが思い悩んでいたことは、グランドオーダーの始まりから今に至るまでずっと抱えていたことの積み重ねによるものです。であれば、ずっとそばにいた方こそが支えてさしあげるべきでした」


それはアーサーのことを示していて、アーサーは目線を落とした。


「…卿の言うとおりだ。私こそが彼を支えるべきだった。まったく、大人げないにもほどがある…情けないな」

「その通りです!!騎士王ともあろう者がなんという体たらくでしょう!!」


349/460
prev next
back
表紙へ戻る