居場所は最初から−14
そこに横から糾弾してきたのは、ニトクリスだった。特異点でのことで唯斗に対して恩義を感じているというが、そうでなくとも優しい人柄だというのは記録で知っていた。
ニトクリスはぷりぷりと怒ってそれだけ言うと、「あなた方では役不足です!」と言い残して食堂を出て行った。
入れ替わりに、話を聞いていたらしい三蔵とマリー、さらには厨房でブーディカがやってきた。
「ギルガメッシュ王と言ったわね、あなたそれでも世界史最古の英雄なの!?賢王と呼ばれるほどの王様が少年一人の心情も分からない!?褒めて甘やかさなくても、何も言わずに放っておくことだって大人として打てる手だったでしょう!?そんなことも言われないと分からないのかしら、古代の王様って!!」
「貴様、言わせておけば不敬な!この我から言葉を賜るだけでも大変な栄誉と知れ!」
「あら、ではなぜ唯斗さんはこんなにも弱っているのかしら?マスターを苦しめるなんて、サーヴァントとして三流ではなくて?」
三蔵をフォローするようにマリーが正論を突きつける。鈴の鳴るような軽やかな少女の声で放たれた正論は攻撃力があまりに強く、ギルガメッシュすら黙らせる。
「ちょっとエミヤ!あれだけ叱るなら誰かがフォロー役に回りなさいと言ったのにまた追い打ちかけたのね!?」
「あれは…その、だな、」
「言い訳無用!」
ごつんとブーディカのフライパンがエミヤの頭を直撃して、エミヤが悶絶してカウンターの向こうに見えなくなる。
さらにブーディカはアーサーをキッと睨み付けた。
「あなたもよアーサー王!新参者で部下のガウェインに任せきりで自分は関与しないなんて、あなたそれでもアーサー王なの!?あたし後輩には甘いけどその分容赦もないわよ!」
そう言ってまな板に包丁を勢いよく突き刺す。次はお前がこうなると言っているような大きな音でまな板に刺さって震える包丁を見て、アーサーはすぐに両手を挙げる。
「おっしゃるとおりですクイーン。私の不徳のいたすところにて」
「我らが女王ブーディカよ、私も同罪です。そも特異点でマスターを殺そうとした霊基と同じです」
「馬鹿、そんなこと言ったらあの子余計に気にしちゃうでしょ!余計なこと言って気を遣わせるくらいなら黙ってなさい!」
「も、申し訳ありません」
ブリテンの大英雄たるブーディカに言われてしまえば、円卓の騎士とて逆らえるわけがない。たじろぐガウェインに、食堂内からからかう声がかけられた。
「あっはっは!怒られるイケメンを見ながら飲む酒はうまいねェ〜!」
「おっ、珍しく禿げ同でござるぞBBA」
「はっ倒すぞ!!」
ドレイクがからかいつつ黒髭をどつき、その隣の席で酒を飲んでいるロビンフッドとビリーもニヤニヤとしている。
「いやぁ〜、正統派の騎士やら王様やらが叱られてんのは圧巻だなぁ〜」
「僕らアウトロー的にはこのネタで向こう30年は酒飲めるよね」
さらに、食堂に入ってきたキャスターとランサー、そしてアストルフォもこちらを見て楽しげに笑った。
「やーい怒られてやんの〜」
「これに懲りたらいじめんなよ金ぴか〜」
「がつんと言ってやってよ王妃様!!」
こういうところはさすがの英傑たちだ。天下のアーサー王とギルガメッシュ王にこれだけからかうことができるのだから。
さらにそれをにやけ顔で書き留めるシェイクスピアとアンデルセンの姿も見えるし、呆れたようにするエウリュアレとアタランテ、すまし顔のダビデ、特に興味なさそうに食事をしているネロとエリザベートなど、改めて見ればとんでもない空間だとガウェインは思う。
すると、ブーディカがフライパンを持ち上げて再び声を張る。
「何ちんたらしてんの!とっとと唯斗君に詫びの一つでもいれてきなさい!!」
反論すれば有無を言わせず攻撃してくることは明らかだったため、アーサーはすぐに歩き出す。ギルガメッシュもため息をついて、青筋を浮かべつつ、女性陣の圧の強さを前に食堂を出て行った。
それに、頑丈そうなエミヤがいまだに復活していないのを見れば、あれを食らうのは危険だとサーヴァントとしての本能が訴えるのだ。
ガウェインも余計なことを言って刺激しないよう、胃に優しい軽食を用意してもらってから、唯斗の部屋へ向かうことにした。