絶対魔獣戦線バビロニアI−6


レイシフトから三日目、玉座の足下でのシドゥリの補佐にも慣れたとき、突然通信が入った。唯斗宛ての通信というより、オープンの通信を唯斗の端末が拾えるようになった形だ。


「ギルガメッシュ王、立香たちがウルクに到着したようなんで、迎えに行きましょうか」

「不要だ。我は貴様にシドゥリの補佐を命じたのだ、場を離れるでない」

「…了解です」


ギルガメッシュは淡々と答えたため、唯斗は仕方なくその場に留まる。通信に入ろうかと思ったが、その前にギルガメッシュに意見を求められてしまい、結局そのままとなってしまった。

そして、それから20分ほどしたときだった。


「ギルガメッシュ王!魔術師マーリン、客人をお連れした!」

「……は?」


よく通る声が玉座の間に響き、そちらを見遣ると、なんと柱の陰から立香を引っ張って出てくるマーリンの姿があった。
そう、あれは間違いなく、前に唯斗の夢に出てきたマーリンの姿だ。長い髪に白くゆったりとした衣服を纏い、杖を片手に歩いてくる。
引っ張られる立香はこちらに気づくと、パッと顔を輝かせた。


「唯斗!良かった、無事だったんだね!」


マーリンと立香の後ろからはマシュ、アーサーも出てくる。もう一人、黒いローブに身を包んだ少女もいる。


「帰還したのですね、魔術師マーリン。ご苦労でした。王はお喜びです」


シドゥリも自然に受け入れており、本当にマーリンがサーヴァントとしてこの世界に現界しているようだ。
アーサーを目にした途端にほっとしてしまった唯斗だったが、謁見の態勢になったマーリンたちに近寄るわけにもいかず、シドゥリの横に留まる。


「それで、成果は?天命の粘土板、見事に持ち帰りましたか?」

「いや、そちらはまたも空振りに終わったよ。西の杉の森にはないね、あれは」


かつては杉が生い茂っていたメソポタミア西部から東地中海沿岸にかけての大地は、古代からの伐採によって砂漠化し、現在のイラクやレバノン、シリアを砂漠の国に変えてしまった。
レバノン杉と呼ばれる杉は建材として重宝され、インドから欧州まで広く貿易の重要品目として扱われた。

シドゥリは必要な報告を終えたと判断し、唯斗を気遣ったのか、マーリンが連れる立香たちに話題を向けた。


「それで、その者たちは?天文台の同行者の方々ですか?」

「よい。おおよその事情は察したわ。貴様は下がっておれ、シドゥリ」


しかしギルガメッシュは自ら話をまとめることにしたらしく、シドゥリに下がるよう指示した。
そして立ち上がると、その黄金の防具を装着した右手に本のような形状の石版を出現させる。


「ギルガメッシュ王…?神権印象(ディンギル)を持ち出すなど…まさか、」

「そのまさかよ、この玉座をしばし汚すぞ。なに、最悪異邦人が二人、天に帰るだけだ。我は忙しい!言葉を交わして貴様らを知る時間も惜しいほどにな!よって、戦いを以て貴様の真偽を計る!構えるがよい、天文台の魔術師よ!そしてマーリン、貴様は引っ込んでいろ!」

「それは助かる、荒事は面倒だからね!そしてアナ、済まないがまた手助けしてあげなさい」

「…また余分な戦いをさせられます…マーリンは死んでください」


黒いローブの少女はアナというらしい。見知らぬ英霊だが、サーヴァントのようだ。
アナと立香、マシュ、アーサーはそのまま戦闘態勢に移行するが、唯斗はギルガメッシュを見上げる。


「ギルガメッシュ、俺も…」

「ええい捨てられた子イヌのような顔をするでない!あざといわたわけ!貴様とそこの騎士王の力量は知っておる、貴様らも邪魔である故、疾く下がれ!」

「私も下がれと?」

「二度言わせるな異世界の騎士王!」


どうやら立香を試したいらしく、ギルガメッシュはアーサーまで下がらせた。マーリンとアーサーはこちらまで来ると、シドゥリとともに玉座から離れ階下へと通じる階段ホールまで下がった。


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