絶対魔獣戦線バビロニアI−10
ウルク市内南部に、立香たちは一軒家を与えられ、そこで寝泊まりするようになった。立香とマシュは「カルデア大使館」と呼んでいる。ジッグラトに寝室を与えられているはずのマーリンも「面白そうだから」と言って大使館に寝泊まりしているようだ。
大使館にはターミナルポイントを設置することができたため、今回は早めにカルデアからサーヴァントを召喚できるようになった形である。
一方、唯斗はジッグラトに部屋を与えられた。最初にウルクにやってきたときからジッグラトに部屋を与えられていたが、引き続きそこで寝泊まりし、ギルガメッシュの補佐を行うことになっている。
てっきり立香たちと一緒に市内での雑用をさせられることになるかと思ったが、シドゥリが立香たちの面倒を見ている代わりに、唯斗がその分の仕事を肩代わりさせられている。
本当は立香たちと一緒にウルクの街で生活してみたかったのに、ギルガメッシュから命じられては逆らうわけにはいかない。
ちなみにアーサーはレオニダスと一緒に兵士の育成を命じられている。
ギルガメッシュは、マーリンの他にもサーヴァントを召喚していた。そのときに無理したために前線に出られなくなっているともマーリンは語る。
現在、ギルガメッシュの元で働くサーヴァントは、スパルタ王レオニダスのほか、日本の牛若丸と弁慶もいる。さらには、すでに退去してしまったが、巴御前、茨木童子、天草四郎、風魔小太郎もいたそうだ。
日本のサーヴァントが多いのは、ここが自衛隊の活躍したサマーワに当たる土地だからだろうか。
そうして、立香とマシュ、アナ、マーリンは大使館で過ごして市内の仕事をシドゥリから斡旋され、唯斗はジッグラトで政務補佐をするという時間が1ヶ月近く続いた。
たまに唯斗はアーサーとともに周辺の都市に派遣されることもあり、ギルスでの遊水池造成やラルサでの資材の取り立てなどを行った。
この1ヶ月、立香たちからの報告を、最初は適当に聞いていたギルガメッシュだったが、だんだんと興味を示すようになり、なぜか毎度面白おかしいことに巻き込まれる立香の報告をギルガメッシュは楽しむようになっていった。
ひたむきに仕事に取り組み、ウルクでの生活を楽しむ立香の報告を聞いていると、唯斗も羨ましくなってしまうほどで、ギルガメッシュも次第に立香の活躍を認めるようになっていた。
そしてついに、ギルガメッシュはいつも通り報告した立香を呼び止めた。
「喜べ雑種、貴様に直々の王命をくれてやる」
「本当ですか!」
顔を輝かせた立香とマシュ。ギルガメッシュが申しつけたのは、密林と化したウルの調査だった。
帰らずの森と呼ばれるユーフラテス右岸の密林は、三女神同盟のうち誰がいるのか分かっておらず、天草四郎と風魔小太郎の二人すら帰ってこなかった。
危険な場所だが、サーヴァントを率いるカルデアであればむしろ適役だ。恐らく、実力としては申し分ないことをギルガメッシュは分かっていたはずだが、この1ヶ月を費やしたのは王としてのけじめもあるのだろう。
「…ギルガメッシュ王、俺は……」
「貴様は北壁に行け。兵力が不足している故、暴れてこい。そろそろそのバーサーカー脳が疼く頃だろう」
「よっしゃ」
唯斗にも戦闘を伴う命が下ったため、つい唯斗は拳を握ってしまう。ギルガメッシュは呆れたようにしていた。
ようやく、1ヶ月が経過したところで、本格的な作戦行動になった。第六特異点での探索も1ヶ月ほどを要したが、やはり穏やかな日々を過ごしていたためか、心も体も疲労はしていない。万全の態勢で暴れられそうだった。