絶対魔獣戦線バビロニアI−11
カルデアは危険な密林探査をする立香たちにかかりきりになるため、アシストなしで唯斗はアーサーと二人で北壁に向かい、魔獣と戦うことになった。
立香たちはすでに北壁を見てきたとのことだ。ウルクの結界に弾かれたとき、バビロンに降り立ったため、そこから北壁を越えてきたらしい。
その際、道中の案内役を買って出たのは、なんとエルキドゥ。今のギルガメッシュはエルキドゥの死をきっかけに旅に出たあとの賢王であるはずなのに、エルキドゥが存在しているという。しかもサーヴァントではないそうだ。
エルキドゥを騙る何者かであると人々は信じているようだが、いずれにせよ、エルキドゥは北部の都市を滅ぼした一員であり、明白な敵である。
そんな魔獣渦巻く北壁には1日かけてたどり着いたが、その光景に唯斗は絶句する。
「……これが、紀元前27世紀の戦線か…?」
「僕も驚いたものだよ」
アーサーとはウルクでなかなか会えなかったため、こうして丸一日一緒にいられるのは随分と久しぶりだ。
アーサーも立香たちと一緒にこの壁をすでに見たことがあり、やはり驚いたらしい。
巨大な壁は高さ20メートルはあるだろうか、延々と大地に横たわり、何千体もの魔獣たちを食い止めている。
レオニダスが指揮官となり、熟練の兵士たちを率いてこの魔獣戦線を半年にわたって維持しているのだ。
「おお、到着されたか、唯斗殿!アーサー王!」
そこに声をかけてきたのはレオニダスだ。後ろには牛若丸と弁慶もいる。
牛若丸はニッコリと微笑んだ。
「なかなかお会いできなかった上に、雨宮殿が戦っているご様子を拝見するのは初めてとなります。期待しています」
「我々は左翼方向を担当します故、右翼を頼みます」
牛若丸に付き従う弁慶だが、結構慇懃無礼なことを言うと立香から聞いている。だが強さは本物だ。あまり日本の英霊とは縁がなかったため、唯斗も楽しみにしていた。
「あなたたちと一緒に戦う日が来るとは思わなかった。日本の生まれとして、とても嬉しい」
「こちらの台詞にて。では参りましょう!」
牛若丸、弁慶は壁に跳躍すると、そのまま西へと向かっていった。唯斗も足に強化をかけてアーサーと並ぶ。
「レオニダス、適当なタイミングで号砲頼む」
「ええ。では任せましたぞ」
下がるタイミングはレオニダスに任せ、唯斗もアーサーとともに壁の上へと大きくジャンプした。
まるで万里の長城のように続く壁には、定期的に砲台が設置されている。
そして、見渡す限り、平原には魔獣たちが蠢いていた。
ここから二日、唯斗とアーサーはウルクからの替えの兵士が到着するまで戦線を維持する役目を課せられている。
「ガウェイン、エミヤ、ディルムッド」
「ガウェイン、ここに」
「ディルムッド、参じました」
「呼んだかね」
ガウェインとディルムッドはいいとして、エミヤは相変わらずだ。今回はターミナルポイントの設置が早かったためお咎めなしである。
「暴れていいとお許しが出た。あの魔獣たちをそれぞれボコボコにしてくれ。俺も降りるから、エミヤは俺のそばで遠距離攻撃をしつつ防御頼む。ディルムッドは比較的近い場所で、アーサーとガウェインは離れたところでぶちかませ」
「承りました。このガウェイン、ハンティングには覚えがあります」
「……ほどほどにね、マスター」
ガウェインはノリノリで、アーサーは少し呆れつつ、先行して壁を降りて魔獣の群れに突っ込んでいった。
あっという間に死体の山ができていくのを見ながら、唯斗も跳躍の準備をする。
「私も狩りにはよく出ていましたので適役でしょう。お任せを」
「やや不完全燃焼なくらいがちょうどいいのだからな、マスター」
「分かってる。ディルムッドは仕留めきれなくてもいいから、あまり俺とエミヤに数を近づけさせないように頼むな。じゃあ、行くぞ」
そうして唯斗とエミヤ、ディルムッドも壁から降りて戦闘を開始した。
アーサーとガウェインがとにかく数を減らし、ディルムッドが唯斗たちに迫る数を調整し、エミヤが唯斗を守りながらディルムッドとともに魔獣を倒す。
唯斗は結界や強化、回復でサポートをしつつ、壁の様子を見ながら防御が薄くなるところをカバーするように戦闘位置を変えた。
丸二日にわたってそのような戦闘を北壁で行えたことで、ずっとジッグラトに引きこもることになっていた鬱憤を無事に晴らすことができたのだった。