絶対魔獣戦線バビロニアI−17
すると、通信からそんな声が聞こえてきた。陽動にあたっていた牛若丸が到着したらしい。牛若丸が女神を引きつけることで、立香たちはなんとかニップルの外まで出られそうだ。
「マスター、僕の回復はもう十分だ。あとは君自身に」
「…強がり、じゃないな…さすがはエクスカリバーってとこか」
聖剣自体の力もあって、アーサーの自己回復力はすさまじく、唯斗のサポートによってほぼ治りかけていた。それならば遠慮もいらない。
唯斗は自分の右足に治癒をかけ、前方に見えてきた北壁と、背後からニップルの城壁を破壊して外に出てきた女神との距離を測る。あの移動スピードでは、すぐに北壁に至るだろう。
すでに牛若丸もやられたらしく、平野に土煙の跡を残しながら立香たちを追いかけてこちらへやってきていた。
唯斗は北壁に到着してすぐに、城壁の向こうには行かずにアーサーから降りた。そして、アーラシュを呼び出す。
「呼んだか、マスター」
「あぁ。ターゲットはあのでかい女神だ。城壁の上から狙撃してくれ」
「了解」
アーラシュにはこれくらいの距離など大したものではない。アーラシュは城壁へと飛び上がると、壁の上から一撃に魔力を強く籠めた矢で女神に射撃を開始した。
「立香、アーラシュに遠距離攻撃をさせてる、その間にライダーを使って逃げろ」
『分かった、ありがとう!』
さすがにアーラシュの重い一撃は堪えるのか、女神はこちらに意識を向ける。
一方、立香はマリーを召喚したのか、ガラスの馬車がすぐに北壁へと到着した。唯斗の近くにガラスの馬車が着陸し、中から立香とマシュ、マーリンが降りてくる。
「ありがとう王妃」
「いいのよ。それにしても…あの女神はとても醜いわ。けれど、とても悲しい。どうか気をつけて、マスター、唯斗さん」
マリーはそう言ってカルデアに戻る。これで無事に全員が北壁で合流できたが、再び地面が揺れる。
『ティアマトが地中に潜った!すぐ北壁に現れるぞ!』
ロマニの警告の直後、地面が轟音とともに割れ、中から女神が出現した。城壁からは兵士たちの慄く悲鳴が聞こえてくる。改めて近くで見るとあまりに巨大だ。北壁よりも背が高い。
何匹もの蛇とともに女神はこちらを睥睨する。
そこに、壁の上からアーラシュの攻撃と、ギルガメッシュが用意した宝具自動射出砲台ディンギルからの砲撃が開始された。次々と女神に着弾した大規模な爆発が連続する。
女神はそれを煩わしそうにすると、その目と蛇たちの口から紫色の禍々しい光線を発した。光線は壁を吹き飛ばし、ディンギルを破壊し、地面を抉り、兵士たちを吹き飛ばす。
アーラシュは高くジャンプして避けて唯斗のそばに降り立った。
「マスター!ありゃ規格外だ!撤退しろ!」
アーラシュがそう言うのは珍しい。焦った表情で唯斗を守るように立つアーラシュを、女神は睨み付けた。
「ペルシアの雑兵風情が…」
「北壁が破られるのはまずい。アーラシュ、引き続き頼む」
「…そうかい。マスターがそう決めたンなら、踏ん張ろうじゃないか」
アーラシュは仕方なさそうに笑うと、再び射撃を開始した。俊敏に走り回って動きながら攻撃することで、女神の攻撃を躱していく。
「オジマンディアス、」
「…ほう。これはまた、奇怪なものよ」
唯斗はさらにオジマンディアスを召喚した。立香も、アルジュナ、アストルフォ、モードレッドを呼び出している。
北壁を越えられるわけにはいかない。絶対防衛ラインであるここを死守すること、それが今の最重要任務である。
「唯斗、弾幕張るからね」
「頼んだ」
立香は唯斗の応答に頷くと、サーヴァントたちに指示を出す。
「アルジュナはとにかく大量爆撃。アストルフォは上空から距離を取りつつ攻撃。モードレッドはすぐ宝具展開」
「了解しました、マスター。神性領域を展開します」
「りょーかい!行ってくるねー!」
「やってやらァ!!」
三者三様で応じた立香のサーヴァントたちは、すぐさま散っていく。アーラシュとアルジュナによる連続した射撃と、アストルフォのトリッキーな上空からの攻撃、そしてモードレッドが解放した宝具の攻撃が一度に女神を襲う。その隙に、唯斗は背後に立つオジマンディアスを見上げる。