絶対魔獣戦線バビロニアI−18
「宝具展開、頼んだ」
「よかろう」
オジマンディアスも敵の強さを認識しており、余計なことは言わずに応じてくれた。
「神々よ、我が業を見よ!そして平伏せよ」
膨大な魔力が集積していき、女神の頭上が突如として輝く。ギリギリまで攻撃していたアストルフォはすぐに離脱した。
「
光輝の大複合神殿!!」
そして、オジマンディアスが宝具を解放すると同時に、その光は形を成して巨大なピラミッドとなる。逆さまになった黄金のピラミッドが出現し、さらに女神の足下からも出現して挟み込んだ。それは大爆発となり、爆風が崩れかけた北壁のディンギルを落下させ、平野に砂嵐を巻き起こす。
爆煙が消えると、そこには女神がほぼ無傷で立っていた。
「な…っ!」
「…ほう、我が宝具を以てしても軽傷とは。これが本物の神というわけか」
オジマンディアスは泰然としつつも眉根を寄せる。まさかここまで格が違うとは思わなかった。これでは、本当に勝てない。
「なるほど、これが特異点を修復してきた者たちの膂力ということか。僅かばかりは惜しいと思うほど…だが、貴様らは子の一人に至るまで殺さなければならぬ」
そう言うと、女神はその両目から猛烈な眼光を迸らせる。そこから放たれた何本もの黒々とした光線は、辺りに散ったサーヴァントたちを直撃し、さらに北壁を抉り吹き飛ばす。
アーラシュはすぐさま唯斗のそばに戻ってきたが、アルジュナ、アストルフォ、モードレッドは一撃で消失した。
拳を握りしめる立香を庇うようにマシュは盾を構える。3騎を消失させた光線は集束してこちらに向かおうとしていた。
「ぬかせぃ化け物!力を持ってことを成すなどペルシア王だけで十分!行くぞ友よ、魂をここに!」
そこに、声を張り上げて壁から外に出てきたのはレオニダスだった。すでに壁はだいぶ崩れかけているが、まだ全壊はしていない。
その壁を背後にしながら、レオニダスは仁王立ちで女神に相対する。
「
炎門の守護者ァァアアア!!!」
宝具解放とともに、レオニダスの周辺に魔力で構成された兵士たちが出現する。レオニダスの宝具によって現れたのはスパルタ兵たちだ。
彼らの盾が輝き、集約されて一つの巨大な結界となって光線を防いだ。立香たちをも守り、北壁を庇い、一身にその光線を受け止める。徐々に結界は崩壊し、光線によって押し切られそうになる。それでも耐えきったレオニダスは、最後に、その槍を全力で投擲した。
槍は光線をも切り裂いて、女神の腹を貫く。
「ッ、ガァァアア!!!」
咆哮が響き、光線の出力は止まり、やがて平原に元の陽光が戻った。北壁は無事だ。
唯斗と立香、マシュは慌ててレオニダスの方へと駆け寄り、さらにアーサーとアーラシュ、オジマンディアスは女神の追撃を警戒してレオニダスの前に出る。
しかし、レオニダスは地面に膝をつき、徐々に石化していた。唯斗はその現象を見て、ティアマトを名乗る女神の正体に気付く。
「石化…蛇…まさか、」
「そう、その通り…かつて女神アテナによってその身を怪物に変えられ、人々に迫害され、多くの英雄を殺したもの。形のない島の三姉妹のなれの果て…複合神性、大魔獣ゴルゴーンよ」
ギリシア神話において、ステンノ、エウリュアレ、メドゥーサの三姉妹のうちメドゥーサは、アテナの神殿でポセイドンと交わったことでアテナの怒りに触れ怪物に変えられてしまい、それを哀れんだステンノたちは共に形のない島に移り住んだ。
メドゥーサを倒そうと数々の英雄が島を訪れたが、すべてメドゥーサは返り討ちにしていき、やがて、ステンノたちをも取り込んで本物の怪物になってしまった。
それがゴルゴーン、三人分の神霊の霊基によって構成される怪物である。
同じギリシアの者として、ゴルゴーンは風穴の空いた腹に手をやりながらとどめは刺さない。
「レオニダス王か。ならばこれ以上の罪は問うまい。せめて勇者として人の世の終わりを見ぬまま砕け散れ」
「ふ、それこそあり得ん。我が魂同様、人の世も不滅なれば…あとは任せましたぞ」
最後にそう言い残し、レオニダスは消失する。偉大なるスパルタ王は、北壁を守り抜いたのだ。