絶対魔獣戦線バビロニアII−3
「全員撤退してください!」
「わ、分かりました!」
兵士たちはすぐさま撤退を開始する。ケツァル・コアトルはこちらに気づくと、陽気な笑顔を浮かべた。
「あら、次はあなたたち?いいわ、みんな活きがよさそう!ひとりひとり、心臓ぶち抜くまで戦いましょう!」
「戦い大好き系か…!アキレウス、アーサー、このまま戦闘継続!」
「了解したぜマスター!」
ケツァル・コアトルはまるでチェーンソーのような剣を一応使ってアーサーとアキレウスに応戦しているが、一方でまるでプロレスのような技も使って攻撃する。一撃一撃が極めて重く、吹き飛ばされたアキレウスが激突した建物が半壊した。
すると、立香たちも到着して、アナとマシュが構える。ケツァル・コアトルはこちらの戦力に気づくと、首をかしげる。
「あら?あなたたち、サーヴァント?じゃあ、そちらの二人がよそからきたマスターさん?」
マーリンは警戒しながらケツァル・コアトルを見据える。
「一応確認だ。君が三女神同盟の一柱、ケツァル・コアトルで間違いないね?」
「ハーイ!間違いありまセーン!遥か南米から、ちょっとウルクを滅ぼしに来たお姉さんデース!」
「なんでこんなことをするんだ!」
今度は立香が尋ねる。ケツァル・コアトルは一瞬驚いたような顔をしたが、次の瞬間とんでもないことを言い出す。
「うーん!あなたとってもお姉さんの好みデース!私と婚姻するならそっち側についてもいいネ!」
「え!?」
「また色物か…」
マーリンが呆れ、マシュやイシュタル、ロマニなど全員が驚愕の声を上げる。突拍子もない発言の連続で、ケツァル・コアトルの目的も人柄もまったく理解できない。
だが、ケツァル・コアトルは一応、三女神同盟に与する理由を説明した。
話によると、「母に人類を滅ぼすために呼ばれた」からであり、それを覆すことはできず、自分なりに一人一人丁寧に殺していく形で人類の滅亡を計っているのだという。
ぶっ飛びすぎて話がまとまらない。説得も何もなく、ケツァル・コアトルは言いたいことを言うだけ言って、「アディオ〜ス!」と帰って行った。しかも、また明日も百人を倒しに来るという。
「なんだありゃ…」
アキレウスが瓦礫から出てきて戻って来ながら、去って行ったケツァル・コアトルを呆れたように見上げていた。翼竜に乗って空に消えていくのを見送りつつ、頭から血を流すアキレウスに回復術式を使ってやる。
「まぁ…話通じる神なんざそうそういねぇだろ」
「そりゃそうか」
ギリシアのサーヴァントだけあってうんうんと頷いている。
とりあえずアキレウスをカルデアに戻して、ケツァル・コアトルの離脱をカルデアで確認する。
しかし、今度は別の反応が現れた。
立香はその姿にハッとする。
「あれは怪サーヴァント…!ジャガーマン!」
「いよう諸君久しぶり!でもちょっと待ってね!今お仕事中だから!」
ジャガーマンという、南米のジャガー戦士の集合体のような神性であり、神霊サーヴァントだという。
ジャガーらしき着ぐるみを着た女性で、巨大な籠に倒れた兵士たちを次々と放り込んでいた。連れ去る気だろうか。
「連れ去る気かジャガーマン!その人たちを帰せ!」
「おっと。荷物は下ろさないしそうは問屋も卸さない、現実はいつも過酷だからニャー」
タマモキャットを彷彿とさせる支離滅裂な言動に、唯斗は理解が追いつかず、順応している立香を思わず敬意の目で見てしまった。
「お前…あいつが何言ってるのか分かるのか」
「わかんない」
「あ、そう…」
しかしジャガーマンはすでに兵士たちを籠に収納し終えており、退散しようとしていた。連れ去られるのはまずい。
止めようと臨戦態勢になったアナだったが、ジャガーマンの背後から突如として豹のような怪物たちが姿を現した。
「見ろよこの逞しい豹マンたちを!!ボーイズアンドガールズ…今夜は寝かさない、ぜ……?じゃ、後は任せたニャー!」
結局、珍妙なジャガーマンをどうすることもできず、兵士たちは連れ去られてしまった。
明日もまたウルクを襲撃されるとなれば、それを看過することはできない。
そこで、すぐに立香たちがエリドゥに向かってマルドゥークの斧を回収しつつ、ケツァル・コアトルの神性を象徴する神殿のシンボルを破壊して神性を落としてから戦うことになった。こちらから出向くということだ。ついでに勝って斧も回収するというなかなか無理のある作戦である。
唯斗は入れ違いでケツァル・コアトルがウルクに来てしまうことを想定して、念のため街の警備に当たることになっている。
いずれにせよ、ケツァル・コアトルをなんとかできれば、あとはゴルゴーンとの戦いが視野に入ってくるだろう。