邪竜百年戦争オルレアンII−2
エミヤは手元に剣を出現させる。それを弓にかけた。斬新な弓矢だ。キャスターもルーン文字を周囲に浮かべ、マシュは盾を構える。
非戦闘員扱いであるマリーとアマデウスは後ろでフォロー、立香と唯斗は並んで指示を出す。いよいよカルデアの本領発揮と言えるかもしれない。
ジャンヌは槍を兼ねた旗での攻撃の他にサーヴァントたちの強化を行い、マリーは回復、アマデウスは遠距離攻撃をたまに仕掛ける。
マシュは立香と唯斗を庇いつつ時折攻撃に入り、キャスターはルーンによる爆破、エミヤは次々に剣を弓で放ってタラスクの頑強な鱗を削っていく。
「立香、俺がマルタに弾幕して目隠ししながらエミヤを近距離に切り替える」
「分かった、俺はマシュをエミヤの反対から突撃させる。守りはキャスターと唯斗に頼む」
「了解」
相手に聞こえないよう小声でやりとりをしてから、エミヤに内心で指示を伝える。マスターは自身のサーヴァントとテレパシーでやりとりできるのだ。
(エミヤ、俺がガンドでマルタに弾幕張るから、マシュと左右から挟撃してくれ)
(防御はキャスターとマスターかね)
(そういうこと。分かってると思うけど、すぐやれよ)
(言われなくとも。マスターの魔力にものを言わせた芸のない結界ではもたないだろう)
(カルデアに戻ったらその皮肉混ぜないと喋れない癖を矯正してやるからな)
(楽しみにしていよう)
やりとりを終えると、唯斗は右手の人差し指をマルタに向けて、左手で右手首を支える。そして、魔力を籠めてガンドを放った。次々と迫撃砲のようなガンドが勢いよく放たれ、衝撃を手首に添えた手で支えつつ、照準を維持する。マルタは当然、自身の前に聖なる結界を張っているが、爆発によって見えなくなる。
その間に、エミヤとマシュが瞬間的に走り出した。
「キャスター頼む!」
「あいよ!」
立香が指示すると、迫るタラスクにキャスターがルーンの壁を展開して動きを止める。それでも攻撃しようとするタラスクに、アマデウスの音波による衝撃波が当てられた。それによって爆風が吹き付けるも、唯斗は唯斗と立香の前に結界を展開して防ぐ。
そして、その間にエミヤとマシュがマルタを仕留めた。
「ぐっ…?!」
マルタが呻くと、タラスクが光とともにかき消える。唯斗は結界を消し、途端に沈黙が落ちる森に、膝を突いたマルタの声が響いた。
「…そう。ここまでね」
「マルタ、あなたは…」
ジャンヌが声をかけるも、言わんとしたことを察したマルタはぴしゃりと撥ね除ける。
「手を抜いた?んな訳ないでしょ、馬鹿。これでいい、これでいいのよ。まったく、聖女に虐殺なんてさせるんじゃないってぇの……いい、最後に一つだけ教えてあげる。竜の魔女が操る竜に、あなたたちは絶対勝てない。あの竜種を超える方法はただ一つ。リヨンに行きなさい。かつてリヨンと呼ばれた街に。竜を倒すのは、古来からドラゴンスレイヤーと相場が決まっているわ。…次はもうちょっと、真っ当に召喚されたいものね」
そう告げて、マルタは光り輝きながら姿を消した。
見ていたキャスターは、ため息をつく。
「聖女に狂化かけて召喚して虐殺たぁ、えげつねぇ特異点だなぁここはよ」
「まったくだ。マスター、油断せず、戦闘のときは俺を呼ぶんだ。いいね」
「分かってる、拒否しても強引に呼び出すからな」
「ふ、その意気だ」
エミヤとキャスターは戦闘が終わったため一度消える。カルデアのシステムでは、常に何騎ものサーヴァントを特異点内で維持できないからだ。
ジャンヌは、マルタが消えたあとを見て呟く。
「…聖女マルタですら、逆らえないなんて」
倒したマシュは盾を突き立てた地面から引っこ抜きながらそれに答える。
「本来は会話も難しかったはず。それでも彼女が会話を成立させたのは、その類い希なる克己心が故でしょう」
「ええ、私には分かります」
マリーも穏やかに加わる。胸に手を当てて、祈るように言った。
「あの人は鉄の聖女。なんであれ、最後は拳で解決する金剛石のような人です」
「何はともあれ、次の目的地は決まったんだ。とっとと出かけるとしよう」
神妙な空気を払拭するように、アマデウスは手を大仰に上げる。それに立香も頷いた。
「そうだね。リヨン、だっけ。そうと決まれば出発だ」