絶対魔獣戦線バビロニアII−11



「ウルクでは今日、ものすごい数の市民が衰弱死した。ここ数日、衰弱死の件数が異常に増えてるんだ。そしてここに来てギルガメッシュも眠るように息を引き取った。これは恐らく、サーヴァントか女神の可能性がある」

『な、なるほど…でも、カルデアで観測している神性は女神イシュタル、ゴルゴーン、ケツァル・コアトルの3人だけだ。そもそも三女神同盟のうちイシュタルのケツァル・コアトルの二人が仲間になっているのに誰が…』

『あら、女神イシュタルは三女神同盟ではありまセーン』


そこに、ケツァル・コアトルの声が入ってきた。一瞬沈黙が落ちて、唯斗を含む全員の驚く声が通信の内外で響いた。
とんでもない事実に、唯斗はまさか、と通信越しにケツァル・コアトルに呼びかける。


「な、なぁ、ケツァル・コアトル」

『ハーイ!』

「ひょっとして、三女神同盟は、ゴルゴーン、あなた、そしてエレシュキガルか…?」

『大正解デース!!』


ケツァル・コアトルは確信犯だろう。どのような意図であったのか、あるいは適当に話を聞いていたのか、どちらかは分からないが、やはり三女神同盟はイシュタルを含んでいない。
シドゥリは唯斗の言葉を聞いて驚く。女神エレシュキガル、冥界の女主人と呼ばれ、イシュタルとは姉妹関係にあるとされることもある女神だ。
一度、クタで立香が冥界に迷い込んでしまったと言っていたことから、冥界が存在するならエレシュキガルの存在もあり得る。

解せないのはカルデアで観測できなかったことだが、それも玉座で執務していた中に答えを見出す。


「イシュタルはウルクの巫女所が召喚した存在だ。魔獣が現れた頃、混乱する状況でギルガメッシュの采配を受けずに自分たちの判断で都市神の召喚を試みた。そのとき、巫女長が一人死んでいる」


唯斗がそこまで言えば、すぐにマーリンも気づいたようで、合点がいったと通信から引き継いだ。


『なるほどね。イシュタルとエレシュキガルの二人が同時に召喚されてしまったということだ。しかし、その霊基は同じ一人の依り代を根本としている。いわば双子。あるいはドッペルゲンガーみたいなもの。肝心のイシュタルはどこかで寝ているようだからこの場にいないけど、もしかすると、イシュタルの体でエレシュキガルが行動していたこともあるかもしれないね』

『なるほど…』


同じ霊基であるために神性が一つとしてカウントされていただけで、実際には表裏一体の存在として、光と影のように同時にこの世界にいるということだ。
それを聞いて、何やら立香が非常に納得したような相槌を打っている。イシュタルと一緒にいた時間が長かったようなので、もしかしたら辻褄の合わない言動でも見たのかもしれない。
とりあえず、そこまで分かれば話は早い。


『じゃあ可能性はあるぞ!この時代、冥界も天界も地上と地続きだ。冥界に降りて女神エレシュキガルを説得すればギルガメッシュの魂を解放してもらえるかもしれない!』

「クタとウルクで亡くなった人々もな。ジッグラトの地下に遺体が安置されてる。まだ間に合うはずだ」


ロマニの言う通り、すでに一度立香が冥界に降りていることから、ギルガメッシュを含めて衰弱死した人々の魂を地上に戻せるかもしれない。


『立香君、悪いがそこからすぐに冥界下りの準備をしてくれ。マーリンは女神イシュタルを起こして状況の説明を。冥界は死者の国、死者は主人のエレシュキガルにダメージを与えられない。となると、サーヴァントでは攻撃が通らない可能性がある。その場合には、立香君とマシュだけが頼りだ』

「ウルクの留守はこっちで預かる。衰弱死した人々の埋葬を禁じて一か所に集めよう。立香ばっか歩かせて悪い」

『俺はこんなこと気付けなかったから、唯斗がジッグラトにいてくれてよかった。俺もイシュタルを探してくるね』


すぐに段取りが決まり、立香たちはエリドゥの帰路から行先を変更することになる。冥界の入り口はイシュタルに聞く必要があるため、詳しいことはイシュタルを起こすところからだ。
一度通信を終えて、唯斗はシドゥリを見遣る。もう立ち上がって毅然としていた。


「あなた方カルデアの皆さんのおかげです。ありがとうございます。すぐに手配いたします」

「お願いします。アーサー、明日はまた代理王様業務だ」

「了解したよ」


遺体が腐敗しないよう、涼やかなジッグラトの地下に集積する。ギルガメッシュもだ。あとは、ギルガメッシュの代わりにできる政務を行うだけである。


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