絶対魔獣戦線バビロニアII−18
「お前の憎しみに理なんてない!」
「はい!その通りですマスター!私はあなたを認めません!その姿は、あなたの心そのものです!」
ゴルゴーンは不快そうに顔を歪める。話は終わりだとばかりに、イシュタルもマアンナに乗ってゴルゴーンを嘲笑った。
「そうよ!あんたはティアマト神なんかじゃないわ!そもそも母さんは魔獣を生み出すのに他の命を必要としない。人間に復讐するために人間を使うなんて半端なこと、あの人はしないわ!」
「イシュタルの言うとおりです、ゴルゴーン」
イシュタルに続いて、アナも鎌を持って前に進み出る。そして、そのフードを外した。
「あなたはティアマト神などではありません。自分の姿さえ見えなくなった、ただの怪物です」
「ッ!!貴様、貴様なんだその姿は…!寒気が止まらない…ッ!」
アナの姿を見た瞬間、ゴルゴーンは明らかに様子がおかしくなった。身を捩り、怯えたように体をのけぞらせる。
「どういうことだキングゥ!キングゥ!!どこにいる!!早くあの怪物を神殿からつまみ出せ!!」
「…やはり。あなたには私が見えないのですね、ゴルゴーン。もし、まだ少しでも見ようとしてくれたのなら、ほんの少しの救いくらい、あったかもしれないのに」
悲鳴交じりの声でアナを否定するゴルゴーンに、アナは寂しそうに呟いた。立香は、その隣に進み出て、そっと肩に手を乗せる。
「…いいんだね」
「……はい。私は今までずっと、自分に言い聞かせてきました。私は生きていてはいけない。ここにいてはいけない。笑ってはいけないと。でも、本当は…私は生きていたかったし、ここにいたかったし、笑いたかった。それが彼女であり、私なんです」
マシュは口元を覆って顔を逸らし、イシュタルやマーリンでさえも目を伏せる。
呪われ、迫害され、一方的に攻撃され、いつしか本当に怪物になってしまったメドゥーサ。その苦しみと、あまりに淡々とした慟哭に、唯斗は拳を握りしめる。隣に立つアーサーは、そっと唯斗の肩を抱いてくれた。
「…それに気づかせてくれてありがとうございました、藤丸」
「それではもういいかい、アナ?今まで押さえてきた君の神性を解放する」
「はい、許可しますマーリン!あなたの口車に乗った私に、その答えを!私の魔眼は、私の魔眼で相殺します!!」
アナの額につけられていた額あてが消えるのと同時に、膨大な魔力が解き放たれる。ここに、アテナの呪いをかけられる前のメドゥーサの神性が復活したのだ。
「…アーサー、アナの覚悟に応えよう」
「もちろんだ」
アーサーは見えない剣を構えて臨戦態勢となる。イシュタル、マシュ、マーリンも同時に戦闘態勢となり、ゴルゴーンはこちらを必死の形相で睨み付けた。
「失せろ!その浅ましい姿を私の前に現すなァアア!!」
そう叫ぶのと同時に、ゴルゴーンの蛇たちから光線が放たれた。黒々とした光線をマシュの盾が受け止めて、アーサーの剣が切り裂く。地面や壁が蒸発して破壊され、小石が飛び散る。
「来てくれ、アキレウス」
「来たぜ、マスター」
アーサーがゴルゴーンに斬り掛かりに飛びだったのを確認してから、唯斗はアキレウスを呼び出す。アキレウスは聳えるゴルゴーン、そして光線の合間を駆け抜けるアナを見てすぐに目を見張る。
「ありゃ…なるほどな。こんなこともあるんだな」
「これで終わらせたい。協力してくれ」
「もちろんだ」
アキレウスは頷くと、すぐに蛇の一匹に飛び乗ってゴルゴーン本体へと向かっていく。
アキレウスは女神テティスの息子だ。テティスの父ネレウスはガイアとポントスの子供であり、ネレウスの兄弟であるポルキュスの娘の一人がメドゥーサである。ガイアとポントスから見れば、アキレウスはひ孫、メドゥーサが孫という関係だ。
イシュタルは空中から遠距離攻撃で、アーサーとアキレウスは近距離攻撃でゴルゴーンの気を引き、その間にマシュとマーリンがフォローしながらアナが地面を駆け抜けていく。