絶対魔獣戦線バビロニアII−19


唯斗は高度な結界魔術によって光線から自身と立香を守る。マーリンによって魔術回路が強化されたおかげで、アルジュナやガウェインとの戦いで使用した結界が持続するようになった。

しかしゴルゴーンの不死性はいまだ健在なのか、攻撃は通るがすぐに傷が塞がってしまう。ゴルゴーンが暴れているため、地面に空いた穴はどんどん広がっており、崩落した壁や天井から瓦礫が降り注ぐ。


「アーサー!アキレウス!一気に蛇を切り落とせ!」


急がなければこの空間ごと崩落しかねない。そう判断した唯斗は、一気呵成に攻撃に出るべく、アーサーとアキレウスに蛇頭を同時に切り落とすように指示した。

アーサーは猛烈なスピードで蛇から蛇へと移ってその頭を切り落とし、アキレウスは蛇を地面に叩き付けて槍で切断しては次の蛇の頭を壁に槍で張り付けにするといった攻撃を続けた。


「ぐぅうッ!まだだ!まだ終わって堪るものか!私はティアマト、ティアマトのはず…!母の噎び泣く声が聞こえるのだ…!!」


その間に、マシュの誘導でアナがゴルゴーンの眼前へと躍り出る。不死殺しの鎌が、紫の光を纏っているが、その光は不気味でありながらも、アナの優しさが滲むものだった。


「いいえ、あなたはただの怪物です、ゴルゴーン。あなたの復讐は、決して、島の外には出ないのです」

「やめろおおおお!!!」

「共に消えましょうゴルゴーン、私はそのためにここに来たのですから」


その言葉とともに、アナの鎌がゴルゴーンの胸元を切り裂いた。同時に、ゴルゴーンの体が切り裂かれていき、その巨体が崩落した玉座の穴へと落ちていく。


「アナ!!」


結界を解くと、立香が急いでアナをこちらに戻そうとしたが、最後に彼女は微笑んだ。

そして、ゴルゴーンとともに、奈落の底へと消えていった。


ゴルゴーンがいなくなり、空洞には沈黙が落ちる。戦闘が終わり、アーサーとアキレウスが唯斗の元に戻ってきた。


『ゴルゴーン、アナ、霊基反応の消失を確認』


通信からロマニが告げたことで、ゴルゴーンとの戦いに決着がついたことが確定する。アナは、自分の将来の姿を否定する一方で、そうなる定めにある自分を受け入れて、その復讐心も良しとした。それが彼女そのものだったからだ。その悲しみも苦しみも、彼女だけのものだった。
だからこそアナは、最後まで共にあることを望んだ。ゴルゴーンの最後に寄り添うことを選んだのだ。

それを理解している立香は、老婆にもらった花冠を亀裂から奈落へと落とす。アナ自身は己の将来の姿を認めなかったが、しかしきっと、似合っていたことだろう。


「…マスターたちが終わらせる形で、俺は良かったと思ってる。勝手な感情だけどな」

「いや…ありがとう」


アキレウスは最後に唯斗の頭を撫でてからカルデアに戻った。

さて、あとは聖杯を回収する必要があるのだが、ロマニが通信越しに困ったようにする。


『おかしいな…聖杯の反応がない。魔術王の聖杯はゴルゴーンが持っていたはず…』


それに対して、顎に手を遣っていたマーリンが答えた。


「ふむ、ゴルゴーンは確かに聖杯によってかつての神性を取り戻した。だが彼女は聖杯の恩恵を受けただけ…つまり、聖杯を所持しているのは…」


そこまでマーリンが言ったところで、突如として天井の一部が崩壊し、日の光が差し込んだ。そこから現れたのは、緑の髪を靡かせる美しい青年の姿。


「母上、ご無事ですか!ゴルゴーン…そうか、間に合わなかったか」

「キングゥ…!」


空中に浮かぶキングゥを睨み付ける立香。キングゥはこちらを見て何が起きたのかをすべて察したらしい。
どうやら聖杯はキングゥが所持しているようで、やはりゴルゴーンはその恩恵を受けていただけだった。


「これでも僕は、僕なりに彼女を愛していた。だからとても怒っているんだ…だが、まぁいい、熱くなっていてはいけないからね」


キングゥは冷静にしている。イシュタルやマシュ、アーサーは臨戦態勢でキングゥを囲むように対峙しているが、宙に浮かんだままキングゥはこちらを悠然と見下ろすばかりだった。
ゴルゴーンは倒された。聖杯はキングゥが持っている。最後はキングゥと戦って聖杯を回収するだけ。そう、思っていた。


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