絶対魔獣戦線バビロニアIII−2
見ると、城壁を超えて門を突き破り、青黒い色をした4足歩行の生き物が蠢いているのが分かった。頭部らしき部分には口しかなく、だらしなく舌が垂れている。
そして、その鋭い足によって、人々を突き刺していた。
悲鳴を上げて逃げ惑う市民と兵士の合間に、アキレウスの戦車が降り立った。
「
鉄の人よ、天より来たれ」
着地するなりすぐに、唯斗は大通りから一本入った道で結界を展開し、道路を塞いで押し寄せるラフムたちを止める。
「すぐにジッグラトへ!市民の誘導を優先!」
「カルデアの…!は、はい!」
兵士たちは慌てて人々を誘導し、北へと走り始める。
唯斗たちに影を落とす城壁からは、ラフムたちがこちらを見降ろしていた。
「アキレウス、城壁の上を掃討。アーラシュ、」
「…来たぜマスター」
「みなまで言わなくても分かるな。城壁から迎撃」
「了解した」
腹に風穴の空いた人々の死体の山と鮮血に染まる道路を見て、アーラシュは表情を険しくする。いつもの軽い調子はなく、言葉も少なく城壁に飛び上がった。
壁の上でアキレウスとアーラシュがラフムを掃討し、街に迫る群れを上から迎撃できるようにしている間に、アーサーは結界の向こうで自主的に掃討を行い、通りから一掃していた。
「アーサー、強度は」
「相当固い。僕でも2、3度攻撃を入れてやっとだ。人間では太刀打ちできない」
『分析したところ、ラフムたちは既存の生態系とまったく根本からして違う!魔術回路も含め、まったく新しい生命だ!』
焦ったようにするロマニ。唯斗は一瞬だけ考えてから、あちこちに悲鳴が響く市内を見て、方針を転換した。
「ロマニ、第二波の到達予想時刻は」
『あと1時間以上はある。先に立香君たちが到着するはずだ』
「了解。市街地の外の個体に対する迎撃は諦めて、市内での救出に専念する。倒しきることを目的にしてたら終わらない。一人でも助ける」
あまりに数が多い。これでは倒しきることはできないため、市民の救出に特化した方がいい。
(アーラシュとアーサーは単独行動を許可、市街地で地対地戦闘を続けて市民の捜索・救援・誘導に専念してくれ。アキレウスと俺は空対地攻撃と市民の捜索)
すぐに了解の応答があり、アーラシュとアーサーは市内に展開する。唯斗は結界を解いてアキレウスを待ち、城壁から戦車で駆けてきたアキレウスの後ろに飛び乗った。
その背中にしがみつくようにしながら、上空から市街地を見下ろす。
「マスター、あいつらは飛行機能はねぇみたいだ。高度下げるぞ」
「あぁ、なるべく上から逃げ遅れた人を探して…っ、南市場だ、急げ!」
「了解!」
すぐに市場で逃げ遅れた市民を発見し、アキレウスは急行する。上から唯斗は市民に迫るラフムにガンドで牽制をかけた。
「全然効いてない…!」
ラフムは動きこそ止めたが、見たところダメージを負っていない。
市場はすでに壊滅状態、あちこちから煙が上がっている。多くの人々が地面に倒れ血を流していた。
「
天よ、地よ、真実を見よ!」
左手をかざして詠唱すれば、すぐに市場上空から巨石の形をした魔力攻撃が降り注ぎ、ラフムたちを地面に押しつぶしていく。
その間に戦車は着地して、崩れたテントから這い出てきた女性たちとラフムたちの間に立つ。
「すぐにジッグラトへ!」
「あぁ、ありがとうございます!」
女性たちが走り出したのを見届けながら、アキレウスが戦車から降りて起き上がったラフムたちを見据える。
「15体…結構いやがるな。倒さねぇとあの人たちに追いつくぞ」
「倒すに決まってる。来い、ガウェイン」
「ガウェインここに…と、これはいったい…」