絶対魔獣戦線バビロニアIII−5


例によってカルデアのサポートは立香に集中させ、唯斗はウルクに残って防衛戦となる。
とりあえずギルガメッシュのそばで平野の状況を聞いていると、第二波が接近しているとのことだった。


「ギルガメッシュ、結界の状況は」


もはや敬語だなんだと言っている場合ではないため、唯斗は口調を気にせずギルガメッシュに問う。ギルガメッシュもそれを指摘することはない。


「我の結界は対呪詛、ラフムに対する物理的な防御ではない」

「なるほどな。第二波到達まで推定10分、それまでに南側の防御態勢は再構築可能か」

「…無理であろうな。第一波ですでに南側の人員は壊滅状態だ。再び市内での戦闘となろう」

「何分あれば再構築できる?」


玉座からギルガメッシュが面白そうに見下ろす。さすがの余裕だ。


「我が申した時間だけ保たせられるのか」

「正確には、俺が保つ時間でやってくれると信じてる」

「ふっ、相変わらず不敬なヤツよ。よかろう。30分時間を作れ」

「了解した」


唯斗は頷くと、玉座の横を離れ、市内南部を一望できる大階段の前に立つ。背後からギルガメッシュや兵士たちの視線を感じつつ、城壁の向こうに見えている青い軍団を目に留めた。あれがラフムの第二波、第一波より多い。

唯斗は南門に向かって左手をかざし、魔術回路を開く。


我らを試みにあわせず、悪より救いだし給え(ハ ノン レジット ケット ダ ヴォント ガント アン テンプタデュール)


そして詠唱を終えると、一気に結界を展開した。それは、ウルク全体を覆う巨大な結界である。複雑な幾何学模様の描かれた白と黒の輝きが入り混じる結界は、ジッグラトを中心にウルク全体を取り囲むドーム状態に展開される。
左手を前方にかざしながら、目を閉じて結界の維持に集中する。

マーリンに魔術回路を強化されたことで、かつてアルジュナの攻撃を防いだこの強力な結界が大きく、そして長く維持できるようになった。これはとんでもないことで、本来1世代でできることではない。
マーリンはきっと、この状況を想定していたのだろう。

とはいえさすがに息が切れる。肩で息をしながら結界を維持すると、結界にラフムたちが衝突する気配が分かった。当然、結界に対して攻撃を仕掛けてきており、魔力を均等に配分して維持するために魔術回路をフルで酷使する。

その状態を維持すること25分ほど、ふと背後に人の気配を感じた。無駄に威圧感のある男は一人しかいない。


「よくやった、準備は整った。あとは城壁の兵士の活躍を見るがいい」

「っ、わかった、」


唯斗は結界を消失させる。反動で体がふらついたが、背後に立つギルガメッシュが受け止めて支えてくれた。
その逞しい体に凭れながら城壁を見遣ると、ウルク周辺に散会したラフムたちに向けて、城壁の上からディンギルが射出された。兵士たちがラピスラズリを砕いて、その魔力でギルガメッシュの宝具が射出される兵器である。北壁にあるものと同じだ。
ウルク周辺の全方位から爆発が発生して、それによってラフムが吹き飛ばされていく。


「全弾、敵軍に直撃!ラフム、撤退していきます!」

「よし、引き続き第三波に備えよ!」


ギルガメッシュは唯斗の肩を抱いたまま玉座へと戻る。引きずられるようにして玉座の間に戻った唯斗は、すれ違う兵士たちから「ありがとうございます!」「美しくも堅牢な結界でした!」と礼を言われて戸惑う。


「相変わらず、褒められたり感謝されたりすると貴様はしおらしくなるのだな」

「うるせー…」

「ふはははは」


からかうギルガメッシュだが、その声音は優しいものだった。正直その通りだが、それでいい、と言われているようでもあった。


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