邪竜百年戦争オルレアンII−4


唯斗は少し考えた後、ジャンヌに続いた。


「俺も同感だ。もともとジャンヌ・オルタたちは、リヨンの守護者と呼ばれたドラゴンスレイヤーを始末するためにここを襲ったんだろ。ファントムは俺たちがドラゴンスレイヤーと合流するのを妨害する役割か。ここでドラゴンスレイヤーを失えば、恐らく俺たちに特異点を修正するチャンスは来ない」

「勝算はあるのかね」


エミヤは冷静に尋ねる。唯斗はその精悍な顔を見上げた。


「勝算て。俺がそんなん考えてないの分かってて試してるな」

「一応、私も心配しているのでね、これでも」

「……立香。勝つ必要はない。第一目標は変わらず、ドラゴンスレイヤーを探すこと。これからやってくる敵を倒すことではなく躱すことを考えるべきだと俺は考えてる」

「…分かった。ここで逃げてもじり貧だし、何より、ドラゴンスレイヤーが心配だ」

『あぁもう…ドラゴンスレイヤーらしき弱い反応はその先の城だ』


ロマニは諦めてサーヴァントの反応を探してくれた。二つの川に挟まれた市街地の中央に向かって、すぐにジャンヌは旗を翻す。
瓦礫の合間を縫って走るが、時間がないことから、唯斗は足にかけている強化を二重にする。


「ジャンヌ、先行しよう。エミヤ、自由行動を許可する。敵影の報告と迎撃」

「了解した」

「はい、行きましょう」


唯斗は地面を思い切り蹴って瓦礫の上を数メートル飛ばしで駆けていく。エミヤは市内に残った尖塔から狙撃位置につく。立香たちは後ろから走って後からついてくる。
一気に進んだジャンヌと唯斗は、指定された城に入り、ガラスのなくなった窓から日差しが差し込む光源以外に光がない廊下を進む。

薄暗い室内を進むと、大量の血痕が廊下の絨毯に染みているのが分かった。


「まだ新しい…この先だな」

「はい」

廊下を進み、さらに暗い部屋に入った。一本だけともった蝋燭のはかない明かりの下に、大柄な男が大けがをして倒れているのが見えた。


「ッ、次から次へと…!」

「う、わ!」


男は突然攻撃を仕掛けてきたため、咄嗟に結界を展開する。一瞬だけ時間が稼げたためすぐに飛び退き、結界が壊れるとその打撃は唯斗がいた場所を薙ぎ払っていた。


「待ってください!私たちは味方です!少なくとも、あなたに害をなすつもりはありません!」

「…?」


疑問符を浮かべる男は、色素の薄い長い髪を跳ねさせ、尖った部分の多い鎧に身を包んでいる。大きく開かれた胸元には、青白い光の魔術刻印らしきものが頬まで伸びていた。
しかし見るからに大けがを負っている。


「…怪我してるところ申し訳ない。だけど、今この街には大型の竜種が接近してる。敵性サーヴァント三騎のおまけつきでな。わりと背水の陣だ」

「…なるほど。だからこそ俺が召喚され、そして襲撃を受けた訳か」

「肩を貸す。回復させながら歩くから、まずは脱出しよう」

「すまない、助かる」


背の高い男は190センチ以上で、20センチ以上の身長差で支えるのはかなり骨が折れた。ジャンヌも反対側を支えている。
血を流している脇腹に手を当てて回復魔術をかけていくが、治りが異常に遅い。魔力量が多い唯斗の魔術であれば止血くらいは一瞬なのだ。


「…これは……あんた、名前聞いてもいいか」

「ジークフリートという」

「…まぁ、そんな気はしてた」


ドラゴンスレイヤーとして知られる英霊といえば、色々といるが最も有名なものでいえばジークフリートだろう。ゲルマン神話に登場する戦士であり、ニーベルンゲンの歌を始め様々な伝承で語られる。神代の英霊ともなれば相当な強さのはずだ。
しかし、弱った様子は怪我だけが原因ではないようだった。

それを指摘する前に、城を出て後からやってきた立香たちと合流する。


(急げマスター、敵影接近中)

(了解)


エミヤからもテレパシーが送られ、唯斗は急いで足を進める。ジャンヌに代わって立香が反対側を支え、急いで元来た道を戻る。


(会敵まで10秒、迎撃する)

(頼んだ)


唯斗が内心で述べた直後、傾いた教会の塔から立て続けに剣の矢が放たれた。輝きながら空を突き刺すように飛ぶ剣が一瞬だけ見えたが、直後、瓦礫の影から上空に姿を現した巨大な竜の姿に、その剣が弾かれるだけに終わったことが分かる。


(エミヤ、戻れ。あれは通常攻撃が意味を成さない)

(同意する)


瞬時にエミヤは唯斗のそばに出現した。
同時に、竜に乗ったジャンヌ・オルタの冷酷な声が落ちてきた。


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