絶対魔獣戦線バビロニアIII−11


続いてティアマト神についての対策に移行する。
カルデアからデータがまとめられ、マシュの盾によって魔力で構成されたホログラムとして空中に表示される。
ギルガメッシュも玉座から降りてきて、唯斗とアーサーも盾の周りに集まって、各自データを熟読する。

それを見て、ギルガメッシュは堪らずに叫んだ。


「ええい貴様ティアマトの太鼓持ちか!弱点らしきものが一切書かれていないではないか!」

『僕だって攻略法の一つくらい書きたかったよ!でもこれが現実なんだってば!』


これがギルガメッシュの言っていた、在り方という強さだろう。
ティアマトにはあらゆる攻撃が効かず、本当に、なんの弱点も記載されていなかったのだ。

ギルガメッシュは呼吸を整えて、今度はジャガーマンの方を見遣る。


「ジャガーマン、どうだ?貴様の目から見たティアマト神は」

「うーん、でっかいわ。とっても。そしてとてもかっこいいと思うわ」

「たわけ!貴様に人としての理性など求めておらぬわ!野生の勘を語れ、野生の勘を!」

「あ、そっちの話ね!あのスピードだと岸に上がるまで半日、岸からウルクに到達するまで一日とみたわ」


ジャガーマンの語るところはほぼ正確だろう。ペルシア湾から陸上に出るまで半日、そして上陸からウルクまで一日だという。かなりのスピードだ。
これでは防戦と迎撃に徹するほかない。


「アーサー、アーサーはどう思った」


唯斗はビースト退治の経験があるアーサーに尋ねる。そのために立香たちに同行させたのだ。結局、エクスカリバーは解放しなかったようだ。その必要性を感じなかったという時点で、アーサーの回答は予想がつく。
全員の視線を浴びながら、アーサーは重々しい表情で答える。


「勝てない。エクスカリバーを以てしても。ティアマトの権能は生命そのものだ。エクスカリバーは、力で勝てる相手であればどんな相手でも倒せる。しかし、力で勝てない相手には等しく勝てないんだ」

「…原初の神っていう、その在り方、ビーストとしての在り方という権能か」

「そういうことだ」

『その点について僕の私見なんだが…』


アーサーの見立てに対して、ロマニが補足を述べた。
ティアマトはビーストとして、生命を生み出す存在である。すなわち、ティアマトは生命そのものであり、生きるという事象そのものなのだ。
それは同時に、生命の存在がティアマトを証明し続けることとなり、その限りにおいて、ティアマトに死は訪れない。


『逆説的にではあるが、地上にまだ生きている命がある限り、ティアマトは死なない。この地上で最後に死ぬことで、ようやく通常の物理法則を受け入れるんじゃないだろうか』

「そんな…!それでは、本当に倒せません!ティアマト神を倒すには、まず人類が…地球上の全生命が死に絶えなければならないなんて!」


声を震わせるマシュ。理論的に死なないビーストは、力の強さではなく、その存在の定義の強さが最大の権能だった。エクスカリバーで勝てる相手ではない。
唯斗も色々と頭を巡らせるが、在り方という力の前に、なんの太刀打ちもできる気がしなかった。


「俺たちに残された戦力は、マシュ、アーサー、立香のサーヴァントの6割、俺のサーヴァントも残るのはガウェインとエミヤ、オジマンディアス、アキレウス。この特異点のサーヴァントとしてイシュタルとケツァル・コアトル、ジャガーマン、あとは……」


今残された戦力から打開策がないかと確認していくと、この特異点で仲間になったサーヴァントとしてあともう一人いたことを思い出す。
はっとして立香を見遣ると、立香、そしてギルガメッシュも頷いた。

ギルガメッシュは瞬時に指をパチンと鳴らして、いかつい見た目の姿鏡を出現させた。そこに映っているのは巨大な洞穴のような光景と、そこに立つ女神の姿。


『これは一体何事なのだわ!?こんなに多くの魂が降りてくるなんて…!』

「エレシュキガル!」


立香が呼びかけると、鏡に映る女神エレシュキガルが振り返る。唯斗が彼女の姿を見るのは初めてだったが、イシュタルと双子のような見た目で、金髪の女神だった。


『ふ、藤丸!?』


エレシュキガルは鏡に気づいて驚くと、すぐに画角から外れる。そして、マントを翻しながら再び鏡の前に現れた。


『冥界の女神エレシュキガル、華麗に参上したわ!』

「エレシュキガルさん、ものすごく優雅に登場しなおしました!」


なるほど、そういう感じか、と唯斗が察したところで、立香は鏡の前に立つ。


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