絶対魔獣戦線バビロニアIII−15
翌日、再び全員が集まって作戦会議となった。
生き残った学者と神官、そしてカルデアすべての知識を結集して検討を続けた結果、ティアマトは黒泥の上でしか移動ができないという結論に至った。
この黒泥を除去すれば、ティアマトは地上での動きを止めるはず。
そのため、黒泥を海水に戻す方法をカルデアが検討していたが、ティアマトの侵攻スピードが急速に速まった。あと8時間でウルクに到達するという予測に、黒泥の海水への変質は諦めることになる。
そこで、黒泥の除去に特化する方針で固まった。
「黒泥の除去であれば、私が引き受けマース!」
「おお、そういえばあれがあったか!」
ケツァル・コアトルがそれを引き受けると宣言すると、ジャガーマンもハッとする。どういうことかと続きを待つと、ケツァル・コアトルは立香と隣に立つ唯斗を見て微笑む。
「我が太陽遍歴ピエドラ・デル・ソルで、ティアマト神の足下の泥を蒸発させましょう」
「あの神殿にあった太陽石のこと?」
「その通りデース!マスターと唯斗さんがあれを砕いていたら使えませんでしたヨー!」
どうやら、あのとき太陽石を破壊しないよう頼んだ唯斗と、それに応じてくれた立香の判断が、ここに来て良い方向に巡ってくれたらしい。
立香と顔を見合わせた唯斗、そして唯斗の肩を叩いて微笑んだアーサーに、イシュタルは「何があるか分からないものね」と感慨深そうにした。
こうして、ティアマト迎撃作戦が始まった。
宝具展開のためにケツァル・コアトルを護衛しながらラフムの群れを突破しティアマトの足下へ到達、立香が魔力をケツァル・コアトルに送り、唯斗はその警護に当たる。
ギリギリまで陸路で向かって魔力を温存するべく、ジッグラトを出て歩き始めると、ギルガメッシュが大階段に立って集まった市民を見下ろした。
そして、そのよく通る声で語りかける。
「ウルクに残ったすべての民に告げる!よくぞ今日まで生き残った!」
ギルガメッシュの言葉に、広場で戦いに備える兵士とその家族がジッグラトを見上げた。
「半年より前、魔獣戦線が造られた時だ。我はお前たちに言った。どう足掻いてもウルクは滅びる。その終焉をどう迎えるか、我は強制せぬと。だがお前たちは戦うと口にした。この結末を知った上でなお抗うと」
ウルクの人々は滅びの定めを知って戦っているのだと、ギルガメッシュ自身が教えてくれた。あのとき、唯斗は人間として、その戦いに加わるのだと答えた。
「まさに、ウルクは幸福な都市であった。その歴史も、生活も、民も…この我も含めてな。もはや人の世に神々の庇護など必要なし。その証として我は城塞を築き、お前たちは応えた」
ウルクを再建したギルガメッシュは、巨大な北壁やディンギル、ナピュシテムの牙といった人類の英知と力を総動員して戦い抜き、リディアを待つはずの貨幣経済を構築し、自らの力でサーヴァントを7騎召喚した。
「今こそ原初の神を否定し、我らは人の時代を始める!心せよ、我が精鋭たちよ!これは神との真なる決別の戦い!その命、我に捧げよ!!最後の一命まで、後の世に、我らウルクの栄光を伝えるために!!」
その言葉が終わると同時に、残された人々は鬨の声を上げる。空に響き渡る群衆の叫び声は、まるで雲を揺らすかのように青空に反響し、ウルクを満たす。
隣に立つアーサーは、ギルガメッシュを見上げて苦笑する。
「さすが、人類最古の英雄だ。王として、嫉妬なんてない。僕ら人類にとって最初の英雄王が彼で良かったと、喜ばしく思う」
「…本当にな」
神の時代から人の時代へ、ギルガメッシュが人類史を前に進めたのだ。
世界史最初にして最大の謎、シュメール文明。その終焉に立つ王は、人類史の始まりをここに告げたのである。
そしてこれが、特異点における最後の戦いとなる。
「…行こう、アーサー」
「あぁ、マスター。世界を守ろう」