絶対魔獣戦線バビロニアIII−18
ようやくジッグラトに辿り着いた。
大階段を駆け上がり、唯斗と立香、マシュ、アーサーはギルガメッシュの後ろに立つ。
開けた屋上の空間には何もなく、市街地が一望できる。アキレウスとイシュタルは上空からラフムの迎撃にあたっており、アーサーは屋上に接近した個体を迎撃する。
立香とマシュ、唯斗はギルガメッシュの隣に並んで、炎上するウルクを見渡した。
「見るがいい、ウルクの全容を。これがあと一歩で地上から消え去る、一つの世界の終焉だ」
すでに南門から黒泥が市街地に流入しており、南部一帯から炎が上がる。大使館も黒泥に覆われており、南市場や張り巡らされた水路も黒泥に包まれていた。
その合間をラフムが闊歩し、すでに市内の生存者はギルガメッシュただ一人。
「来たぞ、我らが母のお出ましだ。とくと見よ、これがウルクの最後の力だ!」
するとギルガメッシュはそう言って、手に神権印象の石版を出現させる。その石版が輝くと、ギルガメッシュの足下に魔方陣が浮かび、さらにギルガメッシュを囲むようにシュメール文字が円を描いて出現する。
直後、城壁に設置されたディンギルから一斉に光弾が射出された。ウルクを囲む長大な城壁に設置されたディンギルが連続して光弾を放ち、ティアマトに迫る。
真っ暗な空の下、燃えさかるウルクの市街地の赤い光に照らされたティアマトに光弾が着弾していく。
「こ、んな…ギルガメッシュ、あんたこれすべて、自分でコントロールしてんのか!?」
「フッ、然様!ディンギル360台すべて我が作り統括するもの!死ぬ気でこの体を酷使すればこのように一斉に操れるわ!」
とても人間業ではない。360門のディンギルそれぞれ、場所が違うため弾道も異なる。360通りの弾道をコントロールして射出しているのである。
アーサーがジッグラトに迫るラフムを次々と切り裂いていき、イシュタルとアキレウスが上空からラフムを撃墜していく。
この状態でならまだもう少し耐えられる、そう思ったときだった。
唯斗がアキレウスに指示を出そうと視線をそらしたとき、立香がティアマトに目を遣った。左隣に立つ立香の視線の先で、ティアマトも、こちらを見た。
途端に脳裏にアーラシュの言葉が浮かぶ。ビーストと目を合わせるな、そう言って消失した姿が思い出され、咄嗟に体が動く。
ティアマトの目も輝き、立香が息を飲む。
「立香…ッ!!」
唯斗が立香を突き飛ばそうした瞬間、ギルガメッシュが動いた。
唯斗と立香の前に立ちはだかり、地面に折り重なるように倒れた立香と唯斗を庇う。
その次の瞬間、立香の心臓があった位置にあたるギルガメッシュの腹を、光線が貫いた。鮮血が飛び散り、風穴が空いた腹を押さえるギルガメッシュがよろめく。
「狙撃とは小癪な!だが狙いはいい、やるではないかティアマトめ!」
「ッ、ギルガメッシュ!!」
叫んだ声は立香のものと重なった。
唯斗はすぐに立香の上からどいてギルガメッシュに駆け寄るが、ギルガメッシュはそれを制する。
「気にするな、致命傷だ!それより貴様らだ、馬鹿者!無事か!無事だな!ならば良し!」
何も良くない。時代の維持にはウルクとギルガメッシュ、二つの存在が不可欠のはずだ。
アーサーも目を見張っている。
ギルガメッシュは再びティアマトに向き直ると、城壁を越えて市街地に入ったティアマトに再びディンギルの光弾の射出を始める。
マシュは堪らず悲痛な声を上げた。
「そ、その体でまだ…!やめてください!いくらなんでも、もう…!!」
「無理と言うか?我は限界だと!?もはやウルクは戦えぬと!?」
しかしギルガメッシュは風穴の空いた腹から声を絞り出すように怒鳴る。こちらを振り返ることはせず、ティアマトから目を離さない。
「貴様らもそう言うのか!!」
「いえ、いいえ!ウルクはここに健在です!」
愕然として声も出すことができなかった唯斗と違い、立香は毅然とそう言った。叫ぶ声は震えていたが、ギルガメッシュは不敵に微笑む。
「よくぞ言った!では我もいよいよ本気を出すとしよう!なに、初めから全力だったが見栄というやつだ!」
しかしティアマトからは大量のラフムが放たれる。もはや黒い雲のようになったラフムたちが大量にジッグラトに迫り、イシュタルとアキレウスが応戦したが、その数は8000体に上る。