絶対魔獣戦線バビロニアIII−22
「こういうの、柄じゃないんだけどねぇ」
「よく言う」
かつてアーサーに剣を教えたことすらあったマーリンが剣を持った。それだけの相手ということだ。
この間にもティアマトは壁をよじ登っており、ランスロットとガウェイン、アキレウス、ヘクトールが必死に戦闘を続けていた。
「ここは私に任せて、とか、一度言ってみたかったんだよねぇ」
「そうかい?じゃあ行こうマスター」
「え、あぁ…ありがとうマーリン、頼んだ」
「行ってらっしゃい」
相変わらずの塩対応でアーサーが言うと、起き上がった立香とマシュとともに、唯斗たちはとにかくティアマトが地上に上がらないよう攻撃を続けることになる。
マーリンが2体ほどラフムを引きつけ、復帰したイシュタルも2体、山の翁が3体を相手にする。
その間に、エレシュキガルに与えられた浮遊によって立香とマシュ、唯斗、アーサーは空中を飛んで黒泥を避けながらティアマトに迫る。
残る4体のラフムはこちらに攻撃しようと接近してきており、そのうちの1体がランスロットをはたき落とす。
「ぐあッ!」
「ランスロット…!くそ、アストルフォ!ブラダマンテ!」
消失したランスロットに代わって立香が呼び出したのはアストルフォとブラダマンテで、アストルフォのヒポグリフにアストルフォとブラダマンテが乗ってラフムを迎撃してくれている。
円卓周りで色々と拗らせているブラダマンテだったが、やはり戦闘では刃物のように鋭利な空気を纏ってラフムと応戦していた。
「立香、もう魔力が限界だろ」
「…でも、まだ行ける」
すでに立香はこの特異点で多くのサーヴァントを失った。魔力も欠乏しつつあり、カルナのような消費の激しいサーヴァントはもう呼び出せないようだ。
空中を飛びながらティアマトの黒泥とラフムの攻撃を避けていくが、今度はアストルフォとブラダマンテもラフムによって撃墜された。
「っ、俺たちで引きつける、立香はティアマトを!」
「分かった!」
唯斗は立香たちに先に行かせると、念話で呼びかける。
(アキレウス!ガウェイン拾って、俺とアーサーのところまでラフムを引きつけてこい!)
(了解した!)
(承知しました!)
唯斗はアーサーとともにラフム2体を引きつけて、壁の途中にあった開けた場所に着地する。
「オジマンディアス!」
「く…っ!呼び出して早々か!」
直後、オジマンディアスを呼び出して、ラフムを迎撃させる。その杖でラフムの攻撃を受け止めたオジマンディアスだったが、膂力に押されて地面を抉りながら滑る。
さらにもう2体を連れてアキレウスとガウェインも着地した。
これで、サーヴァント4騎とラフム4体との戦いとなる。それぞれが一騎打ちとなる形だ。
唯斗は壁際に寄って、いつでも結界を展開できるよう足下に魔力障壁を準備する。
それなりに広い空間だったが、大仰な槍の攻撃をするアキレウスと剣のリーチが長いガウェインが場所を取っており、アーサーは小回りを効かせながら剣戟を続け、オジマンディアスは杖からの光線やスフィンクスからの攻撃、さらには自身も体術によってラフムと戦った。
しかし、ラフムも馬鹿ではなかった。
一騎打ちの状況を避け、なんと、ガウェインと交戦していた個体がアキレウスに2体で挟撃を行ったのだ。
正面のラフムの攻撃を槍で受け止めていたアキレウスの背後に回り、その背中から腕を突き刺す。アキレウスの胴体を貫通したラフムの腕によって、アキレウスの霊核が破壊された。
「っ、アキレウス!!」
「ぐはッ…!ガ、ウェイン、頼んだ…!」
アキレウスが消失すると同時に、直前に吹き飛ばされていたガウェインが頭から血を流しながら2体を相手取る。
アーサーとオジマンディアスが戦う個体は、それぞれ一騎打ちを脱することこそできないが、それはこちらも同じ。ガウェインは1対2の構図を迫られていた。
頭から大量に出血し、左腕も折れている。それでもガウェインはラフム2体を相手に戦いを続けている。
「令呪を以て命じる!ガウェイン、勝て!!」
端的な指示だ。しかしガウェインは満足そうに笑うと、令呪によってすべての怪我が回復したことで、宝具を発動する。
「
転輪する勝利の剣!!」
横薙ぎの一振りによって、2体まとめて聖なる炎が焼き切る。特に近くにいた1体はそれによって消失する。
だが、もう1体が焼かれながらも目にも留まらぬ速さで回り込み、ガウェインの足を切断する。バランスを崩したところで、腹をさらに突き刺した。
「が、ぁあああッ!!!」
「ガウェイン!!」
それでもなお、ガウェインはガラティーンに大量の炎を纏わせると、残る1体を貫く。自分も右足と腹をなくしていながら、ラフムの霊核を的確に突き刺したのだ。
それによってその個体も消失、ガウェインはがくりと倒れる。
慌てて駆け寄ると、血まみれになりながらガウェインは微笑んだ。
「わ、たしは、あなたの、剣…また、カルデアで…」
「っ、ありがとな、ガウェイン…!」