絶対魔獣戦線バビロニアIII−23
そう言ってガウェインは消失する。この僅かな時間で2騎を失った。正真正銘、残るサーヴァントはアーサーとオジマンディアスのみとなる。
そのオジマンディアスの個体は、スフィンクスからの攻撃を避けた一瞬で、こちらを見た。目などないはずなのに、なぜか、目が合った気がした。
「っ、」
息を飲んだ直後、そのラフムは、マスターである唯斗を殺せば速くことが済むと判断したのだろう、こちらに迫ってきていた。
眼前に迫るラフムの青黒く尖った腕、開いた口から垂れる舌、脳天を串刺しにされると瞬時に理解できる状況。
「マスターッ!!」
アーサーの叫ぶ声がしたが、衝撃が来ることはなかった。
代わりに、温かいものに包まれる。
「ぐッ…!怪我は、ないな…!!?」
「オジマンディアス…!!」
唯斗を抱き締めるようにして庇っていたのは、オジマンディアスだった。唯斗を腕に閉じ込めて、その厚い背中でラフムの腕を受け止めていた。貫通した腕が唯斗の目の前に迫っていたが、あたってはいない。
オジマンディアスはすぐに、左手に持った杖の先端から光線を射出し、ラフムを飛び退かせる。一気に腕が引き抜かれたことで、鮮血が地面に飛び散った。
「がはッ…!ファラオを、無視して人間を、狙うなど、原初の子はよほど礼がなっていないと見える…ッ!!」
「そん、な…、オジマンディアスまで…」
「よい、所詮は陽炎、戦闘時のみの臨時召喚に過ぎぬ身だ…!何をしておる聖剣使い、疾くマスターを守らぬかッ!!」
最後にそう吠えてから、オジマンディアスは消失した。ラフムはかなり削られてはいるものの、依然として唯斗に迫る。アーサーと戦う個体も、瀕死のようだが隙を見せるわけにもいかない。
「マスター!結界を!」
「その必要はないですぜ」
そんな言葉がした直後、突如として猛スピードで槍がラフムに突き刺さった。まるで弾丸のように、唯斗に迫ろうとしていたラフムを地面に縫い止めた槍は、デュランダル。
軽やかに唯斗の前に着地したのは、ヘクトールだった。
「よく耐えましたね、唯斗さん」
「ヘクトール…!」
「マスターの指示あっての行動じゃないんで俺の独断ですが、あぁ、手ェ振ってくれてるんでいいんでしょう」
ヘクトールの視線を辿ると、立香がほっとしたように空中から手を振って、再びティアマトに攻撃を開始していた。
ヘクトールはラフムに刺さったデュランダルを抜くと、再度それでラフムに留めを刺す。同時に、アーサーも戦っていた個体を消滅させた。
「恩に着るよ、ヘクトール」
「いいってことです、オジサンも唯斗さんのことやっと守れたんでね。さ、続き行きましょうや、と言いたいところですが、恥ずかしながら限界なんですわ」
ヘクトールは変わらず軽く言うと、唯斗の頭をぽんと撫でる。そして、ごふ、と血を吐き出した。どうやらもうギリギリだったところで槍を投擲してみせたらしい。
「っ、ありがとう、ヘクトール…!」
「どういたしまして」
へらりと笑って、ヘクトールは消失した。
唯斗の隣にやってきたアーサーが、残された最後のサーヴァントである。立香ももう限界なのか、ティアマトと戦うサーヴァントはいなくなっていた。
『まずい、もうすぐ地上に到達する!なんとか…!』
焦ったロマニも通信で呼びかけるが、依然としてマーリンとイシュタルはラフムたちと交戦している。エレシュキガルが最後にティアマトと戦っているが、立香とマシュももう魔力が枯渇しかけていた。
そこに、突然新たな声が落ちてきた。
「火力が必要か?仕方あるまい、であればこの我が手を貸してやろう」
そんな言葉と共に、ティアマトの頭上から大量の黄金に輝くものが降り注いだ。一つ一つにとてつもない魔力が漲っており、一目で宝具だと分かる。
大量の宝具が雨のように降り注ぎ、ティアマトが咆哮を上げた。イシュタルやマーリンに迫るラフムたちをも宝具の雨が貫いていく。
「サーヴァント、アーチャー。英雄王ギルガメッシュ。喧しいので来てやったわ」
キャスターの賢王ではない、アーチャーの英雄王だ。より黄金の甲冑を纏った上裸のギルガメッシュは、冥界であることを利用して強引に現界したらしい。
「最後に我と戦う栄誉、特に許す!」
ギルガメッシュの弾幕の影から山の翁がティアマトを切りつけ、地面にたたき落とす。
轟音と共に地面に落下したティアマトは、四つん這いになってこちらを見上げる。
立香、マシュ、唯斗、アーサー、ギルガメッシュは最初のマーリンのところまで戻り、重傷のイシュタル、エレシュキガルも合流した。
再び全員が揃ったわけだが、ティアマトの様子がおかしい。