絶対魔獣戦線バビロニアIII−25
アーサーが微笑んで身を離した途端、マーリンとマシュの宝具展開が完了した。同時に、エレシュキガルの封印が崩壊して急速にネガジェネシスが拡大し始める。
「
永久に閉ざされた理想郷」
「顕現せよ、
今は遥か理想の城!!」
詠唱の完遂とともにマシュの盾が輝くと、白亜の城が魔力体として出現し、拡張する空間を押しとどめる。さらに、マーリンの魔術によって花びらの道が結界へと続いた。
「行こう唯斗!」
「あぁ!」
立香に続いて、唯斗はマーリンの花びらの道から結界の中に飛び込んだ。
その空間に入ったからと言って何が変わるでもなかったが、外の音はまったく聞こえてこない。
空中に浮かぶ大量の岩石と花びらの道を足場にして先へと走っていくと、ティアマトの体からラフムが出現した。この期に及んでティアマトはこちらを攻撃しようとするらしい。
「気にするな!走れ!!」
「唯斗!?」
「
鉄の人よ、天より来たれ!」
ラフムたちを結界で防いで立香に近づけさせない。
二人が走る岩石が浮かぶのは地面から40メートル以上の高さであり、落ちればひとたまりもない。
魔術回路に痛みが走ったが、まだ行ける。
ラフムたちに応戦しようと唯斗は左手をかざすが、その前に、山の翁が現れる。
「死者の群れであれば、死が相手をするのが道理」
そう言ってラフムたちを八つ裂きにしていく山の翁が一手にラフムを引き受けた。
唯斗はすぐに前を向いて、立香とともに岩石の上を走り抜ける。唯斗は魔術で強化してやっとだが、魔力が枯渇している立香は素の体力と腕力で、岩石から岩石へと飛び乗って走っているようだ。
さすが、レオニダスやクレオパトラの筋トレをカルデアで受けているだけある。
すでに空間内の高所に到達しており、ティアマトの霊核がある頭がすぐそこに見えていた。
しかし、そこでティアマトは唯斗と立香を眼中に入れると、おもむろに腕を払った。それによって二人が乗る岩石が砕け、体が宙に投げ出される。
「っ、立香!行け!!」
落ちながら唯斗は咄嗟に、左手をかざして召喚術式を起動する。
「ヴィアン!っ、ぅぐ…ッ!!」
それによって、立香の足下からティアマトの頭上に至る岩石が現れる。その巨大な冥界の岩を転移させたことで、左腕に激痛が走った。すでに多くのサーヴァントを召喚し、令呪も使い、多くのエネルギーを秘める冥界の巨石を転移させたことで、唯斗の魔力も限界に至ったようだ。
だが、ティアマトがその岩石をも砕く。落下しかけた立香だったが、今度はフォウが現れて立香の体をティアマトの頭上に顕現させた。
立香の手に持った短刀がティアマトの額に突き当たった、その瞬間。
まるで時が止まったかのようだった。
一瞬だけすべてが制止したかと思った直後、体は再び落下を始めており、立香もティアマトの頭の横から宙に投げ出されている。
それと同時に、急速にネガジェネシスの空間は縮小しており、立香も唯斗もその空間の外に出ていた。
地面が急接近してくるが、その前に、唯斗の体は温かいものに抱き留められる。見慣れた金髪と翡翠の瞳がこちらを見下ろしていた。
「…よくやった、マスター」
「アー、サー…」
「あとは彼がやってくれる。離脱しよう」
アーサーは急速に壁を蹴ってウルクに通じる穴を目指してジャンプを繰り返す。
眼下では、猛烈な魔力が渦巻いて終息しようとしていた。
「今こそ神との決別の時!」
ギルガメッシュが取り出したのは、乖離剣エア。カルデアでの話では、抑止力が働く一歩手前の権能だという。英雄王自らの手で、ティアマトにとどめを刺すのだ。
「
天地乖離す開闢の星!!」
そんなギルガメッシュの声を最後に、赤黒いエネルギー光線が乖離剣エアから噴き出した。それはティアマトをまるごと飲み込むほどのエネルギー量であり、冥界を吹き飛ばす。轟音と爆風、眩い光線に、唯斗はアーサーの胸元に顔を埋めて衝撃に備える。
そしてこの瞬間、神代は終焉を迎えた。