覚悟−4


残りの時間をどう使うかは、それぞれのマスターに一任された。
立香はマシュといつも通りの夜を過ごすようで、唯斗も自室に向かう。ただ、今回はアーサーがついてきてくれていた。

ベッドに並んで座ると、なんだか不思議な気がしてくる。左隣にアーサーが座るこの位置は、初期から一緒にいたわりに最近の習慣となった距離だ。
そして、これが最後の夜であるというのも、まったくそんな実感が湧かない。


「…本当に、あと何時間かしたら、魔術王と戦うんだな」

「そうだね。緊張するかい?」

「いや、なんか実感ないなって。ていうか、ビースト倒したばっかだってのに」

「それはそうだ」


とんでもない戦いを終えてやっと帰還したばかりでこれだ。だが、こうなることは想定されていたため、驚きはない。


「…アーサーが探してるビーストは、IIじゃないんだろ」

「あぁ。僕が探しているのはビーストVI。LとRに分かれているのだけれど、これまで多くの世界を渡り歩く中で一度もその気配を辿れたこともなかった。この世界でも、明確にそんな気配はない。ただ、今回、ビーストIIが現れた」

「フォウがビーストIVってのは驚きだったけど、すでに2体いるって考えると…やっぱVIもこの世界に現れるって考えた方が自然か」

「ビーストは連鎖召喚されるものだ。ビーストIの出現によって、他のナンバーも連鎖的に現れる」


ビーストIが出現すると、連鎖的に現れる。それは逆説的に、すでにIがおり、そのうえでビーストIIティアマトとビーストIVキャスパリーグがいるのだとすると、これから対峙するであろう魔術王も自然と分かる。


「…ビーストIか、ソロモンは」

「どうだろう、そこまではなんとも。いずれにせよ、再びビーストと戦うことになる。険しい戦闘だろう」


アーサーがどこまで知っているかは分からない。フォウのことだって、恐らく初めて見たときからずっと気付いていたはずだが、今まで指摘しなかった。
しかし、それで良かったと思っている。知るべきときにアーサーはきちんと伝えてくれているためだ。

少し前までだったら、唯斗やカルデアを巻き込むまいとしただろう。だが、第四特異点で唯斗は、この戦いはこの世界の人間こそ戦うべきものだと告げた。それ以来、アーサーはきっと、ビーストを唯斗たちこの世界の人類が倒すように協力してくれている。
そのために必要なことは伝え、不要なことは聞かれるまで答えない、という形を取っているのだろう。今はそれで十分だ。


「…もしも、魔術王がビーストIだったとしたら、アーサーは、VIと出くわすまでこの世界に留まるのか?」

「それも分からない。ティアマトが古代メソポタミアに現れたように、この世界のどの時点にビーストVIが現れるのかによる。もしも現代ではないのなら、もしかしたら同軸世界線での転移が起こるかもしれない」

「……そっか」


魔術王との戦いが終われば、人理は完全に修復され、元の世界が戻ってくる。そのあとのことというのが、次第に頭の中に浮かぶようになっていた。
ちょうどアーサーも同じだったようで、隣に座るアーサーはこちらを見降ろす。


「君は、この決戦が終わったら、どうするつもりなんだい?」

「カルデアを魔術協会や国連がどうするかにもよるけど…そうだな、立香を一人にしないって約束したから、一緒に考えるのもいいかもしれない」

「約束?」


意外そうにするのも無理はない。第七特異点、ゴルゴーン討伐前夜の北壁、唯斗と立香の二人きりで話したときのことだったからだ。睡眠時間ということもあって、通信もオフだったため、二人の会話は二人だけのものとなっていた。


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