終局特異点: 冠位時間神殿ソロモン−3


場所が狭いこと、距離を詰めにくいことから、唯斗はエミヤを、立香はキャスターを召喚した。奇しくも最初にレフと戦った特異点Fで縁のあった二人だ。
マシュとアーサーによる近距離攻撃と、キャスターとエミヤによる遠距離攻撃によって着実に追い詰められたと思った。

しかし、倒したと思った直後、フラウロスが再び出現した。


「っ、倒せてない…!?」


立香は再び立ち上がった魔神柱を愕然と見上げる。キャスターは舌打ちをついて、立香を下がらせた。マシュも戻ってきて、アーサーも唯斗の隣に着地する。


「…アメリカのときと同じか。72体揃っていることが存在定義、つまり、すべてを同時に倒さないといけない」

「恐らく、そういう理屈だと思うよ」


アーサーも同意すると、聞いていたのか、フラウロスがけたたましく笑った。


「その通り!相変わらず頭の切れるクソガキだ!我らは常に七十二柱の魔神なり。我らを殺したければ、同胞すべてを殺すことだ!だがそんな火力がどこにある?もはや地上のどこにも、そんなものは存在しない!」

『まずい、カルデアの外に魔神柱が…!?すべての電力を中央に回せ!』


さらに、通信からロマニたちの慌てる声が聞こえてきて、やがて途絶えた。カルデアに対する魔神柱たちの攻撃が激化し、もはや通信を維持できないほどに理論障壁が崩壊しているのだ。
その上、エミヤとのパスが急速に揺らぎ始める。カルデアと特異点との接続が乱れている。


「まずいなマスター、パスが維持できない。戦力の一時召喚は極めて短時間しか不可能だ。しかも3人も呼び出すことはできないだろう」

「マスター、唯斗、気ィつけろ。騎士王、あんただけが頼りだ」


エミヤも自分で理解したようで、揺らぐ自分の手を見て、現界を維持するのがやっとだと分かる。キャスターもそう言うと、エミヤと揃って一度退去した。

フラウロスの大量の目玉がこちらを睥睨する。もはやカルデアのバックアップは期待できない。中央区画の動力が維持される限り、カルデアから戦力は呼び出せるが、それは非常に限定的なものになる。


「最後のマスター、最後の人類よ。私たちは心底君たちに感謝を示す!何しろ最高に面白かった!ここまで戦ってきた徒労!あそこまで戦って、なお無為に終わる惨めさ!カルデアもろとも、その旅もここで終わりだ!」


フラウロスがそう嘲笑すると、その無数の眼球がギロリと輝いた。光線が来る。


鉄の人よ、天より来たれ(ドント フアラン デン ガント ネヴ)!」


咄嗟に唯斗は結界を展開し、4人全員を囲む。途端に光線が結界を直撃したが、すぐに亀裂が入った。さすがにこの結界では弱かったかもしれないが、時間さえ稼げればいい。


我らを試みにあわせず(ハ ノン レジット ケット ダ ヴォント)、」

「唯斗っ、」

「…、悪より救いだし給え(ガント アン テンプタデュール)、大丈夫だ」


次の強力な結界を張った瞬間に、最初に張ったものが消失させられた。しかし、この結界も長く保ちそうにない。


「ッ、くそ、アーサーだけであいつ倒せるか!?」

「倒せてもすぐ復活する…だめだ、やはり、72体をすべて足止めできなければ先に進めない…!」


分かってはいたが、アーサーですら眉間に皺を寄せて、エクスカリバーの柄を握りしめる。風王結界を解いたその聖剣の輝きを以てしても、ティアマトと同じく、72体揃っているという在り方そのものが強さとなっていた。


「シンプルに数が必要ってわけか…くそ、一番数を用意できない状況だってのに…!」


限定的にしかカルデアからサーヴァントを呼び出せないとあれば、数を担保することができない。
打つ手がない上に、作戦を練る時間すらない。すでに結界も亀裂が入っていた。


「……やっぱり、だめなのかな」


すると、立香がぽつりとそんなことを呟いた。まさか立香がそんなことを言うとは思わず、唯斗は勢いよく立香を振り返る。


「立香、」

「だって、もう、打つ手が…!」


あの立香が諦めを口にするなど。唯斗は知らず、いつでも前向きな立香がいてくれるから、自分が悲観的なことを言えたのだと理解した。
そんな立香がこう言ったということに、急速に、唯斗の心にも諦観が広がりそうになった。

しかしそこに、別の声が響く。


「いえ。無意味なんて、それこそ笑い話です。あなたにしては諦めるのが早いのでは?」


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