終局特異点: 冠位時間神殿ソロモン−6


岩石の道を進み、第三の拠点が見えてきたところで、すでに戦闘が始まっているのが見えた。
空中に浮かんでいるのは2隻の巨大な海賊船。「黄金の鹿」号と「アン女王の復讐」号である。


「あれは…ドレイクさんと黒髭さんです!」

「魔神柱はフォルネウス、海の生き物の姿で現れるとされる悪魔だな」


マシュが遠目に海賊船で指揮する二人を見つける。ここの管轄はフォルネウス、序列30位の悪魔で、海の生き物の姿を取って現れる。修辞学や言語、名前を授ける力などを司る悪魔だ。

石門をくぐって開けた場所に出ると、ドレイクはこちらに気づき、大砲を止める。


「来たね!さあ立香、さっさと向かいな!空に星があれば向かうべき道筋なんて見えてくる!ここはあたしらだけで満員だよ!」


空中をまるで海面のように船を走らせるドレイクは再び砲撃を開始する。
さらに同じ甲板から、巨体と美しい女神の姿も現れた。


「がんばって、ますたー…!」

「そうよ。時間は稼いであげる」


そこにいるのはアステリオスとエウリュアレだ。二人はもともと、特異点の記憶をもってカルデアにやってきたこともあってか、カルデアとほぼ同期しているようにも見える。
エウリュアレはステンノと射撃勝負をするらしく、アステリオスの右肩に乗って次々と矢を放った。

さらに追撃のように、大量の矢が豪雨のように降り注ぎ、魔神柱が一体消失する。
振り返れば、空中に浮かぶ岩の上に乗って射撃したらしいアタランテの姿が見えた。
隣で石を次々と投擲していたダビデは、アタランテに何か言ったのか蹴られるようにしてこちらに降りてきた。


「やっと来たね、立香君、唯斗君」

「ダビデ…」


ダビデもカルデアと同じ記憶を共有しているようだ。
特に驚いた様子も感慨深い様子もなく、立香と唯斗の隣に降り立つとにこりと微笑む。


「さて、ここは一つ君たちに信頼に値するところを見せなくてはね。僕はやるよ、とてもやる。仮に、相手が息子であろうと、その名を騙る何者かであろうとね」

「あんたは魔術王の正体に気づいてるのか」

「さあ。すぐに君たちも知るものだからね、今でなくとも嫌でも知ることになるさ」

「…はいはい」


試しに聞いてみた唯斗だったが、案の定な答えに呆れた。ダビデも唯斗が分かっていて聞いたと理解しており、小さく笑って石を構える。
宗教画に描かれるように、腰を低く落として左手でバランスを取りつつ右手で石を投げる姿は、黙っていれば本当に麗しい。

すると、アタランテのものでもない別の輝く矢が魔神柱の目に突き刺さり、また一体消失した。
見上げれば、星空を背景にアルテミスと人形姿のオリオンの姿が見えた。


「ダーリン、見た見た今の!?私、格好良かったよね!?」

「あーはいはい、とっても格好良かったよー」

「棒読みひどーい!」


こちらのことなどお構いなしに二人の世界を作っているアルテミスは、まさに女神らしいこちらへの興味のなさである。しかしその実力は本物だ。

さらにそこへ、別の船が出現した。海賊船とは格が違う、アルゴノーツの船だ。
乗っているのはイアソンとメディア・リリィ、ヘラクレス、ヘクトールである。地面に降りたって魔神柱に向かっていくヘラクレスをメディア・リリィとヘクトールが援護するべく同じく船を下りてイアソン一人になるかと思われたが、甲板に大人のメディアが出現する。
ここまでイアソンの悲鳴が聞こえてきた。

それは放っておいて、遠距離攻撃主体の英霊たちの合間を抜けていこうとすると、ヘクトールが唯斗のすぐそばに現れた。


「久しぶりだな、唯斗君?」

「…あぁ、久しぶり。今回は味方してくれるんだな」


カルデアのヘクトールとはすでに和解済みだが、特異点のヘクトールはディルムッドとアーサーで倒した相手であり、敵のまま別れた。
だがヘクトールは苦笑すると、がさつに唯斗の頭を撫でる。


「やっとね。オジサンもさすがに、未来の少年の憧れを踏みにじりたくはなかったんでね。時間稼ぎくらいはしてあげますよっと」


そう言いつつ、ヘクトールは持っていたデュランダルを投擲する。
とてつもないエネルギーとともに空中を切り裂くようにしてミサイルと化した槍は、魔神柱4体を一気に貫いて消滅させた。
それによって道が開かれる。


「さ、行った行った!」

「…ありがとう、トロイアの英雄。あとは任せた」


それだけ言って、唯斗はアーサーとともに走り出す。
魔神ファルネウスは、敵に対して自分を友人のように愛させる力も持つという。ヘクトールと和解していることや、第三特異点では立香と激しく衝突し、その末に立香との付き合い方を自分なりに確立させたこともあって、実に象徴的だった。

背後で魔神柱たちを消失させていく爆音を聞きながら、立香たちを追いかけて石門を抜けて、第四拠点へと向かってひた走った。


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