終局特異点: 冠位時間神殿ソロモン−7


次の第四拠点でも、すでに戦闘が始まっていた。
ここの管轄はバルバトス、序列8位の悪魔であり、魔術師の財宝のありかや動物の言葉を知っており、友情を回復する力を持つ。また、イングランドの伝承であるロビンフッドの影響を受けて構築されたイメージによって、狩人の姿を取るとも言われる。

戦っているのはモードレッド、ジキル、坂田金時、玉藻の前、バベッジだ。ジキルはこちらに気づくと、パッと顔を綻ばせた。


「やあ、久しぶりだね。元気そうで何よりだ」

「ジキル!霊基は大丈夫?」

「少し不安定だよ。でも、無理をしてでもここを抑えないとね」


ジキルはハイドを抑えるのに苦労しているようだったが、冷静にマスター役として場を指揮していた。

モードレッドはクラレントを魔神柱に叩き付けて消失させると、立香の目の前に降り立つ。


「おせーぞマスター!男の父上もな!」

「すまないモードレッド、だがもうかなり魔神柱を倒しているんだろう?」

「ハッ、当然!」


こちらのモードレッドも、やはりアーサーとはそれなりに距離を取って適度にコミュニケーションがとれる。世界が違うともはや別人なのだろう。
しかし、やはり戦力としては火力が薄い。

するとそこに、雷の爆ぜる音とともに高笑いが降り注いできた。


「見よ!神鳴る雷霆はここにあり!ふふ、ふははははは三相交流電流が冴え渡る!!」

「この高笑いは…!」

「然様!ニコラ・テスラここにあり!3度目だな少年!」


雷で構成された階段をゆったりと降りてきたニコラ・テスラは、高笑いとともに唯斗を見つけるなり、案外優しく微笑んだ。
モードレッドは来るのが遅いと騒ぐが、ニコラ・テスラが連れてきたフランを見て機嫌を直す。

さらに、こちらへ駆け寄ってきた小さな姿が立香に飛びついた。


「おかあさん!」

「ジャック!」


現れたのはジャックで、カルデアとは記憶を共有していないようだが、立香をおかあさんと呼んで嬉しそうにしていた。
その後ろからは、ナーサリーとパラケルスス、メフィスト・フェレスもやってきている。
ジャックは立香に頭を撫でてもらって満足したのか、意気揚々と魔神柱を切り刻みに駆けていった。

キャスターばかりで火力が薄いとはいえ、数が揃っている以上は問題なさそうだ。むしろ、キャスターが多いのは持久戦で有利だ。

ニコラ・テスラはアーサーを見ると、恭しく礼をしながら夜空を指し示す。


「騎士王陛下よ、ここはあなたのこの世界での姿…かのクイーンにお任せを」

「ランサーのアルトリアか」


アーサーが見つめる先には、星空に立ち上る聖槍の輝き。ランサーのアルトリアは、第六特異点となった獅子王が獅子王となる前にアルトリアとしての性質を維持できた姿。すなわち、イフのイフということになる。
こちらにいないのはモードレッドに気を遣ってのことだろう。モードレッドも、一瞬だけ見てから視線をそらす。

そもそもあれはセイバーのアルトリア、モードレッドの父とは別の存在だ。モードレッドとしてもそこまで思い入れはないようだ。


「とりあえず、かろうじて道はできた。行け、立香」

「モードレッドの言うとおりだ。君たちはまだ、行くべきところがあるだろう」


モードレッドとジキルが言うと、突然、シェイクスピアがため息をついて現れた。


「そこまで言われれば仕方ありませんなぁ!ではいざさらば!」

「俺もそろそろこの戦線には飽きてきたところだ!」

「お前らじゃねぇよ!!」


シェイクスピア、アンデルセンの二人にモードレッドがツッコミを入れる。二人は渋々残ることにした、という体裁になりつつ、さすがに英霊たるもの、ここはキャスター勢による火力の補助と底上げが重要だと理解している。
アンデルセンは表情を変えずにこちらを見上げた。


「さて藤丸、雨宮。時間神殿の最奥まで俺も見物したいところだが、見ての通りこちらは取材で忙しい。先へ進め。それともまさか、俺たちに言わせる気か?もう何度繰り返されたのかも分からない、いくつもの英雄物語で繰り返されてきたであろう、あの台詞を?」


そのアンデルセンの言葉を聞いて、立香が目を輝かせた。


「もしかして…!」

「貴様トスしたな馬鹿者!」

「よろしい!ならば期待に応えて差し上げる!」


呆れるアンデルセンの隣でシェイクスピアは仰々しく、若干嬉しそうに口を開いた。


「さあ、ここは我らに任せて先へと進め!」

「うん、頼んだよ、みんな!」


テンションを上げて走り出す立香の後ろに続く。アンデルセンはニヤリとして後ろから声をかけてきた。


「行け!行ってお前らが世界を救え!!」


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