終局特異点: 冠位時間神殿ソロモン−11
予想だにしなかった第八の拠点、アンドロマリウスの管轄は、味方も予想だにしなかった者たちが現れた。
最初に現れたのは巌窟王、エドモン・ダンデス。「モンテ・クリスト伯」の主人公であり、クラス・アヴェンジャーの英霊として、立香が昏倒しているときに夢の中で出会った者だそうだ。
そのほか、ジャンヌ・ダルク・オルタ、天草四郎、風魔小太郎、織田信長、沖田総司、クレオパトラと言った唯斗も知っている者たちや、両儀式、謎のヒロインX、イリヤなどまったく意味の分からない者たちまで現れていた。
彼らにその場を任せて先を急げば、特異点をぐるりと周り、最初の石門へと戻ってきた。
すると、そこに玉座へと至る光の道が出現する。魔力供給が止まったことで、中央へと続く道が姿を現したのだ。
その道に入れば、あとは一本道となる。通信からも、ダ・ヴィンチが敵性がないことを教えてくれる。
『距離にして1キロほど先に空間断層がある!その先が魔術王の玉座に違いない!…とまあそれはそれとしてロマニ!最後に確認しておこう!この玉座に座する魔術王の正体、カルデアの代表として結論は得ているんだろう?』
『うーん…でも、憶測の域を出ないんだけど』
「ドクター、教えて」
走りながら立香が促すと、ロマニは少し迷ってから応じた。
魔術王ソロモンの正体、それに対して、ロマニは結論を出しているらしい。
『憶測だけど、そうだね、最後に伝えておこう。まずソロモンと名乗る魔術王は、間違いなくソロモンだ。偽物じゃない。なぜならこの空間を構成するものは、ソロモンの魔術回路だからだ。だが、偽物じゃないことが、イコール本物であるとは限らない』
「クー・フーリンさんやジャンヌ・ダルクさんと同じ、クラス違いでしょうか」
マシュは、ソロモンがキャスターではない姿で現れたことを指摘した。しかしロマニはそれを否定する。
『その可能性もある。でも、ソロモンがオルタ化してもあまり変化はないだろう。彼は善悪ではなく、無だからだ。中立でもない、彼には何もなかったから。神権や王権はあっても、人権はなかった。人間でいさせてもらえなかったんだ』
なんだかまるで知っているかのような口ぶりだ。聖書に描かれるソロモンをそう解釈することは不可能ではないだろうが、それにしては詩的というか、あまりにリアルすぎる。人物像が具体的すぎるのだ。
だが今は、ロマニのことよりソロモンの正体だ。ここまで分かれば、あとは可能性として大きいものは一つだけ。
「ソロモンの死体を再利用したのか。キングゥがエルキドゥの死体で構成されたように」
『そういうこと。体だけ見れば、確かに死から甦ったと言えるだろう』
「そんな…」
立香とマシュはキングゥのことを思い出したのか、あまりに非道な死体の再利用という真実に息を飲む。
『では中身はなんなのか?それは我々が嫌というほど味わっている。彼は、いや、彼らが何を考えているのかは分からない。けれど、それは今から本人に直接聞けばいい。さあ、もうじき時空断層だ。カルデアからの通信……いや、会話もこれが最後になる』
この断層の先は別空間、もはやカルデアが通信を捕捉できる環境ではない。存在証明で精一杯だろう。
もう玉座を目前にしている中、ロマニは最後にマシュに質問をした。
『だから最後に聞かせてくれ。マシュ、君に悔いはなかったかい?本当に、この結末で良かった?』
「もちろんです、ドクター。私は最後の一秒まで、自らの選択を良しとします」
マシュは、もう保たない。この戦いで、戦闘に加われるのは最後となる。
いや、もはやこの戦いを終えて人理を取り戻しても、マシュはもう、生きながらえることはできないだろう。
立香はマシュを見つめながらぐっと拳を握りしめる。
『…そうか。では、その強さをソロモンに見せてやりたまえ。健闘を祈る』
その言葉を最後に、通信は途切れる。
同時に、4人はついに、玉座に辿り着いた。