終局特異点: 冠位時間神殿ソロモン−15


そして光と音がやむと、焼け野原と化した広場が広がっていた。草原は焼き消えて、もうこの場に残った命は、立香と唯斗だけとなった。

焼けた地面に突き刺さるのは盾のみで、その後ろにいたはずのマシュの姿は消えていた。蒸発したのだという。正確には昇華だ。


「マシュ……ッ」


立香の拳から血が滴り落ちる。握りしめられた拳に力が入り、腕の筋肉に筋が入っているのが見えた。
その瞳には、明確に、怒りと憎悪が宿る。

それならば、次はこちらの番だ。唯斗はアーサーに目配せをする。

アーサーも頷いて剣を構えようとしたが、それを押しのけて立香が前に出る。


「……愚かだ。あまりに。第三宝具、再展開。あぁ、最後に私を殴ることくらいは許そう。その拳で私に触れて死ね」

「望むところだ…!ゲーティアッ!!!」

「待て、立香、」

「そうだよ立香君。ちょっと熱くなりすぎだ。ここからは少しだけ、僕の出番だ」

「…、は……?」


立香と唯斗の声が重なる。

そこに現れたのは、ロマニだった。血が滲む立香の拳をそっと撫でて開かせてから、立香の前に立ちはだかる。

いったいどうやってここに現れたのだろうか。レイシフトができるわけではないはず。
いつの間にか、フォウが立香の肩に乗っていた。

ゲーティアすら不審に思ったのか、ロマニを睨む。


「ただの人間がこの玉座にどうやって現れた。いや、待て、その霊基は…!?」

「ああ、もう聖杯に向けた願いは捨て去った。ここからは、元の私としての言動だ」

「……ここで出るんだね、ドクター・アーキマン」


アーサーは心得たように、唯斗の肩を叩いてリラックスさせながらロマニに声をかける。ロマニも微笑んでアーサーに返した。


「あぁ。今まで唯斗君のことをありがとう。後は任せたよ」

「もちろんだ。あなたに敬意を」

「ありがとう」


ロマニは礼を言うと、手袋を外した。その左手に嵌まるものは、魔術王の指輪と同じ意匠のものだった。
ゲーティアすら愕然とする中、立香も、唯斗も、何が起きようとしているのか、だんだんと理解し始めた。

そしてロマニは、すべてを語る。

ロマニ・アーキマンの正体、それは、ソロモン王その人。

ソロモンは死ぬ間際に、自分の指輪を未来に送った。それをマリスビリーは発掘し、触媒とすることで聖杯戦争に参加した。
キャスター・ソロモンをサーヴァントとして召喚したのだ。

それによって聖杯戦争に勝利して、マリスビリーはカルデアを稼働するための電力の確保に必要な巨万の富を得て、ソロモンは人間になりたいという願望を叶えた。
そうして人間になって権能を失う刹那、ソロモンは未来視によって、人類の終焉を知ってしまった。

そこからのソロモンの行動は、この特異点の最初にダ・ヴィンチが語っていたものだ。
誰が敵かも分からない、いつそれが起こるのかも分からない。そんな極限状態でできることに懸命に取り組んだ。

魔術王がソロモンではないとロマニが断言したのも当然だ。だって自分がソロモンだったのだから。
すべてを知っていたから、ロマニはここまで的確にカルデアを運営して見せた。


「魔術王の名はいらない、と言ったな。では、改めて名乗らせてもらおうか。我が名は魔術王ソロモン。ゲーティア、お前に引導を渡す者だ」


そう言った途端、ロマニの体は一瞬光に包まれた。その光が晴れると、そこには、先ほどまであの玉座にいたのと同じ男の姿があった。ただ、それよりもいくらか優しげな風貌で、禍々しさはない。

ゲーティアはその姿を見て言葉を失っていたが、直後、けたたましく笑い始めた。


「ふ、ふはは、はははははは!!!あまりのことに愕然としたが、なるほど確かに貴様らしい!!何もかもが手遅れになった今!人類最高の愚者、無能の王が今更お出ましとはな!!」

「ドクター、いったい、何を…」

「なに、すぐ君にバトンタッチするよ」


444/460
prev next
back
表紙へ戻る