藍色の愛−7


唇同士が触れ合うだけのキスは、だんだんとアーサーが口を開いたことで舌がそろりと入ってきて、急にその性格を変える。

ゆっくりと咥内に入ってきた舌が上顎をなぞった瞬間、びくりとして唯斗はアーサーの肩を掴んでしまうが、アーサーは止めずに唯斗の舌を引きずり出すと思い切り吸い込んだ。
ズッと音を立てて舌の根本が引っ張られる感覚が、首筋にぞわぞわとした感覚と想起させ、それに呼応するように、アーサーは唯斗のうなじあたりを指先で撫でた。
うなじから後頭部にかけてを擽るように指先で撫でられたことで、背筋がぞくぞくと震え、唯斗はつい声を漏らす。


「ん、ッ!」


そのくぐもった声が合図になったようにアーサーは口を離すと、恍惚としたような目線で唯斗を捉えた。


「可愛いね、唯斗。こっちにおいで」

「…、ん、」


誘われるがまま手を引かれると、ベッドに優しく仰向けにさせられる。アーサーはその上から覆いかぶさりつつ、唯斗の顔の横に両手をついた。
見上げたすぐ目の前にアーサーの顔があり、その後ろに天井が見える。やたら明るい気がしていると、それに気づいたアーサーは壁のボタンを押してベッドライトだけにして残る照明をすべて落とした。
一気に薄暗くなり、読書灯だけがぼんやりと二人を照らす。やっと落ち着けるような気がしたが、一方で、アーサーが唯斗のシャツの裾から手を差し込むと体をこわばらせた。

するりと肌を撫でるアーサーの指先は、今までとはまったく違う触れ方で、探るようないやらしい手つきに、この人も男なんだな、と当たり前のことに思い当たる。
その指先は腹筋を撫でてから水落を通り過ぎ、そして唯斗の薄い胸板の先にそっと触れた。

軽く触れて、先端を転がす様にしてから摘まみ、軽く引っ張られる。


「っ、ん、ちょ、そんなとこ触ってどうすんだ、」

「気持ち良くない?」

「ッ、ぅ、わか、んない、」

「恥ずかしがらないで、全部教えてくれるかい?君の感じるところ、ぜんぶ」


そう言うと、唯斗の礼装のシャツをたくし上げ、晒された胸元に口を寄せた。まさか、と思った瞬間、胸の尖りを口に含まれ、生暖かく濡れた舌がそこを舐め上げた。
まずその衝撃が快感となって押し寄せて背骨を走り、すぐにアーサーがそんなことをしているという事実と光景にくらりとする。
不慣れな唯斗がその衝撃に耐えられるはずもなく、思わずアーサーに縋るようにその二の腕に手を寄せた。


「ァッ、ん!ちょっ、なに、ぅあ、!」


肘を曲げているために盛り上がった上腕の筋肉が動き、アーサーが口を離して体を起こす。そのままこちらに顔を寄せて、耳元で囁いた。
濡れた右側の先を指で捏ねられ、唯斗はふるりと震える。


「気持ちいい?」

「んん、だ、から、わかんねぇ、って、」

「だめだよ、ちゃんと正直に言わないと。教えて?大丈夫、可愛いよ」


そう言いながら唯斗の耳梁を唇で食むようにして、さらにべろりと撫でられる。ダイレクトに水音が脳髄に響いて、濡れた感触が耳を責め立てた。


「あッ、!んん、ひっ、あ、」

「ほら、ちゃんと言って?」

「言う、から、んっ、!気持ちいい、アー、サーっ!」

「いい子だ」


アーサーは微笑んで唯斗の頭を撫で、一方で指を唯斗の下腹部に伸ばす。膨らんだそこも合わせて撫でられて、そのままズボンの下にアーサーの手が差し込まれた。

下着の中に差し込まれたアーサーの綺麗な手が、すでに固くなった唯斗のものを撫でる。他人に触れられたことのない場所のため、また体が震える。
同時に、いよいよ本当にこれからするのだ、と思うと、少しだけ怖くなった。まったく経験がないため、心の準備も何もできていなかった。

すると、それにアーサーはやはり気付いたらしい。小さく笑うと、唯斗のシャツを脱がせてから、自分も霊衣を上半身だけ消してズボン姿になる。
鍛えられた上半身をベッドライトが照らし、腹筋や胸筋の影が落ちる。

同じ格好なのにまったく体格が違うことを実感していると、おもむろにアーサーは唯斗を抱き締めながらベッドに横になった。
添い寝のような、腕枕の状態で抱き込まれている。

胸板に顔を押し付けられるような体勢では密着してしまい、肌と肌が直接触れ合った。さすがにこんな感覚は初めてだ。


「アーサー…?」

「少しこうしよう。ほら、肌がくっつくと気持ちいいだろう?」

「…ん、安心する」


アーサーの鎖骨あたりに擦り寄りながら素直にそう言うと、アーサーはまた「いい子だね」と言ってから唯斗の後頭部を撫でる。
しばらくそうしてアーサーの体温を感じていると、ふとアーサーが口を開く。


「これからすることは、愛情表現の最も深いものだ。もちろん、気持ちよくなってくれるよう僕がリードするけれど、君もたくさん甘えて欲しい。唯斗のことを、たくさん愛して、甘やかして、慈しんで、大切にしたい。世界で一番大切なんだって伝えたい。そのための行為だ」

「ッ、」


ゆったりとした落ち着いた声で語られるそれは、まるで砂糖のように甘い色をした声音で、アーサーのその感情が余すことなく伝わってくるようだった。
顔に熱が溜まり、気恥ずかしさがこみあげてくるが、それ以上に、そうやって様々な方法で感情を伝えてくれるアーサーが好きだった。
唯斗はそうやってうまく伝えることはできないため、言葉で告げるしかない。ただ、それでもいいのだろうと思えた。


「おれ、も…アーサーの、一番近いところまでいきたい。もっと近づきたい、今こうしてるよりももっと。好きだ、愛してるっていう、俺の感情を、感じて欲しい」

「…うん、嬉しいよ。ありがとう、唯斗。大丈夫、安心してすべて委ねてくれ」


それに頷いて、アーサーの顔を見上げると、ひとつキスを落とされる。そして再び、アーサーは体を起こして唯斗をベッドに組み敷いた。


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