藍色の愛−9
そう思っていると、おもむろにアーサーはベッドサイドのテーブルに鎮座するボトルを手に取った。まったく気がつかなかったが、中身は粘度の高い透明な液体が入っていた。
「うわ、なんだそれ、ゲイザーの粘膜みたいな…」
「たとえが悪すぎるよマスター…」
思わずといったかんじでアーサーは「マスター」呼びに戻っていた。そうなってしまうようなことを言った自覚はある。
どうやらローションのようで、アーサーはそれを手にたっぷりと出してから、しばらく手の平で混ぜている。
その後ローションは唯斗の自身に垂らされ、どろりとしたものが敏感な肌を伝っていく感覚にびくりとした。
しかし冷たいものが肌にかかることを予想していたが、アーサーの手からそれが唯斗の自身に垂らされると温かくなっており、手の平に一度貯めていたのはそういう理由だったのだと理解する。
それにしても、なぜこのようなものがあるのだろうか。
唯斗の疑問を察したのかアーサーはローションに光る手で唯斗の自身を握りこみながら答える。
「んぁッ!っ、」
「男性サーヴァントは必ずドクター・アーキマンやサンソン殿から説明を受けるんだ。現代ではこういうものがあると。閉鎖空間で女性スタッフを守るために、医療スタッフとしてやっていたことだろう」
「せ、つめいするか、どっちかに、しろ、んっ、」
「すまない、じゃあこちらに集中しよう」
どうやらローションをはじめ、避妊具など一式はカルデアの備蓄にあるようだ。閉鎖空間に数百人が生活する巨大施設のため、そういう備えは確かに必要だ。
生殖能力そのものはないとはいえ、男性サーヴァントがいる以上、女性スタッフを守るため、あるいは女性スタッフと接するのなら弁えろと遠回しに言うため、ロマニは男性サーヴァントたちに現代の性に対する知識と備品の場所を教えていたようだ。
その役目はサンソンが引き継ぎ、間違いが起こらないようにしてきた。
思えばカルデアには、唯斗と立香、マシュ以外に子供はいない。大人ばかりのため、全員、それなりに付き合い方は分かっていることから、ロマニもサンソンも個々人の関係構築には口を挟まず、やるならきちんとしろ、という釘を刺していたのだろう。
恐らく先ほど唯斗がシャワーを浴びてから管制室に行っている間に、アーサーもこれを用意していたのだと考えられる。
それが分かったところで、アーサーは本格的に唯斗の自身を扱く手を強めた。強い刺激が先端から走り、足が勝手に閉じようとする。握り込まれると、手の温かさとローションのぬるりとした触覚が強い快感を浴びせてきた。
「ひッ、ん、待っ、て、あっ、!」
「じゃあいったん触るのをやめよう。次はこっちだ」
ローションが垂れていた後ろの窄みにアーサーの指が触れる。やはりそこに入れるのか、と唯斗は息を飲む。
体を硬くした唯斗に、アーサーは「大丈夫だよ」と声をかける。
「力を抜いて。下半身の筋肉から力を抜くんだ」
「ふ…っ、」
「そう、そのまま排泄のときのようにいきんでみて」
「っ、な、んだ、それ、」
矛盾しているのでは、と思いつつ言われた通りに力を抜いたり入れたりを体の部位ごとに変えてみると、力んだ瞬間にアーサーのローションにまみれた指がすっと入ってきた。
明らかに異物が入ったという感覚がぞわりと背筋に走り、息が止まる。
「びっくりしたね、でも大丈夫、上手だよ。とても上手だ」
「つ、次、どうすりゃ、」
「落ち着いて。力を抜いていればいい。楽にして」
左手で唯斗の頭を撫で、右手の指で後ろを解している状態だ。アーサーはこちらの様子を窺っており、目がかち合う。
キスして欲しい、と思ったが、体勢的につらいだろうか。
そう思って言えずにいると、アーサーは撫でていた左手で唯斗の唇をふに、と突く。
「ちゃんと言うんだ、して欲しいこと。痛いとか苦しいとか、そういうこともね」
「…、アーサー、」
「うん、」
「……キスしたい」
「いいよ、よくできました」