邪竜百年戦争オルレアンII−11


突然、唯斗のすぐ背後に処刑台が現れた。革命期を彷彿とさせるギロチン台だ。そしてそこから、黒い手のようなものが次々と出現し、唯斗の体を拘束してギロチン台へと引っ張った。


「ッ!くそ、」


避ける間もなく捕まった唯斗は、ギロチン台に跪かせられ、刃の直下に首を固定されてしまう。


「マスター!」

「唯斗!!」


エミヤとマリーが叫ぶ。こちらに駆けつけようとしたエミヤを、サンソンの大剣が妨害した。マリーまでこちらに駆け寄ろうとしたが、唯斗は左手の甲に魔力を籠めた。


「ヴィアン!」


召喚術式が作動する。同時にギロチンの刃が落下してきた。しかし、その刃と唯斗の間に、突如として岩が出現して刃を受け止める。適当に召喚した岩が障害となっているのだ。だがこれは宝具、本来の金属の強度を超えているはずだ。
唯斗はすぐに手の平に魔力を展開した。


「ヴァズィ…!エミヤ!」


直後、広場の大部分の地面が消失した。ギロチン台も、戦っていたサンソンとエミヤも、急に足下の地面が消えて5メートルほどの穴となったことで落下し始める。
刃が岩を砕いてしまう前に、落下によって重力がなくなって刃が降下を止める。
さらに、唯斗はエミヤの足下に一時的に結界を展開した。それを足がかりにエミヤは瞬間的にこちらへと飛び出し、唯斗を固定する木組みを破壊して唯斗を助け出した。
そのままエミヤはギロチン台を足場に上空へと唯斗を抱えて舞い上がる。穴に残されたのはギロチン台とサンソンだけとなり、空中のため身動きができず落下していく。


「マリー!かましてやれ!」

「いきますわ!百合の王冠に栄光あれ(ギロチンブレイカー)!」


マリーが宝具を解放すると、ガラスの馬が出現し、サンソンに猛烈な勢いで迫る。そして、サンソンを突き飛ばして穴の底に叩き付けた。サンソンは呻いて土の底に倒れる。


「ヴィアン、」


そして再び手の甲に魔力を籠めると、先ほど別の場所に転移させた広場の地面を元に戻した。落下したサンソンを押しつぶすように瓦礫と化した広場の地面が元の穴に収まっていく。
ぐちゃぐちゃになった石畳の上に着地しエミヤの腕から降りると、マリーも走ってきた。


「肝が冷えたわ!でもすごいのね、マジックみたい!魔術師ってこんなこともできてしまうものなのね」

「まあな、でも俺じゃサーヴァントは倒せなかった」


広場を見れば、瓦礫の間からサンソンが顔を出した。大剣によって瓦礫を吹き飛ばし、ふらつきながらこちらを見据える。


「そんな、馬鹿な…どうして僕が打ち負ける…!?あのときから何人も殺して、何倍も強くなったというのに…!」

「…悲しいわね、シャルル=アンリ・サンソン。再会したときに言ってあげれば良かった。あのとき、すでにあなたとの関係は終わっていたって。だって本当に…あなたの刃は錆び付いていたんだもの」


特異点と化したフランスで、サンソンは処刑ではなく殺人を行った。もはやサンソンの刃は、人間の尊厳を守ろうとした処刑人ではなく、ただ無残に命を奪うだけの殺人鬼のものとなっていたのだ。


「そんな、僕は…ただ…もっとうまく首をはねられるようになれば、君に許してもらえると…!」

「…あなたは最初から、私に許してもらう必要なんてなかったのよ」


サンソンは膝から崩れ落ち、そして光とともに消失した。これで、唯斗の役目は終わった。


「…ありがとう唯斗、私一人だったらもっと時間がかかっていた」

「いや…これは何も、作戦の上ではメリットのない行動だった。自分でもこんなことをしたのが驚きだ」

「あら、そう?私はそうは思わないわ」


マリーはやはり鈴の鳴るような声で笑う。唯斗は自分でもこんなことをした理由が定かではなく、自分らしくないと思っていた。


「あなたはとても誠実よ。優しくて、あなたが思っているよりずっと、あなたはお人好しなんだわ。お人好しの私が言うんだもの、確かなことよ」

「な…っ、」

「だから、ありがとう。あなたの言葉は、本当に、本当に嬉しかった。英霊として召喚されて良かったと、心からそう思うわ」

「……俺こそ、あなたと戦えて光栄だった」

フランス万歳(ヴィヴ・ラ・フランス)、唯斗。また会いましょう」


最後に笑ったマリーの笑顔はあまりに綺麗だった。結局最後まで、救われたのは唯斗の方だったのだろう。


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