再会と目的−1


15世紀フランスの特異点を修正してから数日、立香とマシュ、唯斗はロマニに呼ばれて召喚ルームに来ていた。

レイシフト後の身体検査に問題はなく、特異点で負傷した傷も手当は済んでいる。ちなみに、特異点での怪我は、なかったことにするとその時空における異物性が高まり修正圧力がかかるため、意味消失のリスクが高くなることから行わない。
様々なことが「なかったこと」になる特異点だが、そういうところは現実に反映せざるを得ないのだ。

今、こうして召喚ルームに来ているのは、様々な検査も終えて次の作戦を視野に入れてのことだった。
次の特異点は概ね特定が済んでおり、細かな座標の設定に時間を要するものの、あと半月ほどで作戦行動に入れる。それに向けて、戦力の増強を図るのだ。


「戦闘中だけならマスター1人につき三騎まで一時召喚できるようになった。カルデアもようやく万全の体制だぞ。あとは、サーヴァントを呼ぶだけだ」


ロマニは魔術式を前にそう言った。マシュは「緊張しますね…!」と答えながら触媒となる盾を置く。


「触媒ありでの召喚は唯斗君は初だね。どんな人が来るかな」

「基本的には縁だろ。縁もないのに来てくれるヤツはだいぶ特殊だ。第一特異点で出会った誰かじゃないのか」

「ジークフリートとか来るといいね、戦力的に」


ロマニはすっかりワクワクとしたようにしており、まだ緊張した面持ちの立香やマシュと比べると暢気だ。その後ろにいるダ・ヴィンチはさすがに呆れている。

縁を結んだ相手が基本的に召喚されるわけだが、今回は触媒もあるため、唯斗の魔力量に応じてロマニは大物を期待しているようだ。
もちろん大物が来ればそれは良いことだが、かといって唯斗が御しきれなければ意味はない。きちんと相性のいい相手でないと逆効果ですらある。


「じゃあ立香君から行こうか。今日から毎日一騎ずつ、計5人だね。唯斗君は計二騎を目指そう」

「分かった」


立香は術式の前に立つと、詠唱を開始する。

噛みそうになりながら術式に手をかざし、詠唱が進むと少しずつ術式が青白く光を放ち始める。やがて、マシュの盾も輝き、詠唱は最終段階に至った。
そして詠唱が終わった瞬間、術式からマナの霧が噴きだし、人影が現れる。


「……またお会いできましたね、マスター」

「き、清姫…!」


出てきたのはフランスでお世話になった清姫だった。立香は口元を若干引き攣らせながら笑うが、マシュは別の驚きを浮かべていた。


「清姫さん、記憶があるのですか…?!」

「もちろん、私は愛のために輪廻転生の因果すら超えて化けたのですから」


清姫は、伝説では輪廻転生を経てもなお記憶を有していた。だからだろう、特異点の記憶を持ったままカルデアに召喚されたようだった。恐ろしいまでのストーキング能力に、唯斗は僅かに立香に同情した。


「あー…うん、清姫はちょっと特殊な例だね。マシュ、君の認識通り、基本的には特異点の記憶はサーヴァントであっても継承されない。歴史に記録が残らないからね。特異点で出会ったサーヴァントをカルデアに召喚できても、ほとんどは記憶を共有できない。もちろん、サーヴァントとしての性質から、清姫のように記憶を持つ者もいるし、他にも可能性がある英霊はいる」

「なるほど…でも、特異点で仲良くなれたのですから、カルデアでもきっと…」

「あぁ。マシュと立香君なら問題ないだろう。唯斗君は、まぁ別枠だ」

「はっきりコミュ障だっつっていいんだぞ」


清姫のような例を除けば、正史に記録の残らない特異点での記憶を所有しているサーヴァントは基本的にいない。千里眼のような特殊な能力があれば別だが、そうでなければカルデアでは向こうにとっては初対面となるだろう。


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