再会と目的−3


アーサーを呼び出してから、カルデアはいろいろと混乱に陥った。

まず、過去に唯斗がアーサーと出会っていたこと、とんでもないクラスのサーヴァントが来たことなど驚きが広まり、さらには、特異点Fにいたセイバーのアーサー王と違って本当に男性であることや、そんな女性のことはアーサーは知らないなど、これまでカルデアが知ったこととの矛盾も生じており、混乱が起きた。

しかしそれはすべて、アーサーが「この世界の人間ではなかった」というシンプルな回答で蹴りがついた。

もともと唯斗も推測していたことだった。なぜ、聖杯もないのに父はアーサー王を召喚できたのか。唯斗はアーサーの当時の言動から、時空を超える力を持っており、そのアーサーの時空の転移と父の術式が干渉しあってしまったのではないか、そう考えていた。

アーサーも同じ結論だったようで、ダ・ヴィンチとロマニも同意した。そして、そこで縁を結んだために、アーサーはこの世界に再び召喚された。
アーサーがいた世界では、伝説通りアーサー王は男性だったが、こちらの世界では実は女性だったというのであれば、特異点Fでのことも矛盾しない。

一方、立香とマシュはここで初めて、ロマニたちから唯斗のことを聞いたらしい。母の死、父の禁忌、そして魔術協会から干されずっと孤独だったこと。ロマニたちがもともと知っていたこれらの過去に、アーサーが父の召喚に巻き込まれて現界していたという事実が合わさり、唯斗の証言でアーサーが瀕死の唯斗を助けたという話も立香たちは知ることとなり、あの唯斗の取り乱した様を理解した。

正直、唯斗としてはあの召喚ルームであんなに取り乱してしまったことが、半日経った今になってじわじわと効いてきていた。どんな顔をしてロマニたちと話せばいいのだろう。


動揺していた唯斗を落ち着かせるべく、唯斗は自室待機を命じられた。そして、アーサーも様々な検査や霊基の登録を済ませてから、ロマニたちに指示されて唯斗の部屋を訪れた。


「マスター、入るよ」

「あぁ」


自動ドアがスライドし、アーサーが部屋に入ってくる。殺風景でなんの個性もないただの居室にアーサーがいる、それだけで現実感がなかった。

ベッドに座る唯斗を見下ろし、アーサーは頬をぽりぽりと掻く。この完全無欠そうな男でも、どう話せばいいか分からないこともあるのだな、と唯斗は意外に思った。そしてそれくらいには、すでに落ち着きを取り戻していた。


「そこ、座っていいぞ。さっきは取り乱して悪かった」

「ありがとう。君は何も謝る必要なんてないよ」


ベッドのすぐそばにある、壁に接着する半円形のテーブルに備えられた椅子にアーサーは座る。


「…4、5年ぶりくらいになるか?」

「そのようだね。僕は世界を転移する中で時代の流れを意識しないから実感はないけれど、10代の5年はとても大きなものだろう」

「普通はそうなんだろうな。俺は一瞬だったけど」

「そうなのかい?」

「あらゆるモチベーションをあんたに依存して努力してきたしな」


自嘲気味に笑って、唯斗はベッドの上で胡坐をかく。アーサーは真意を探るようにこちらを見つめる。


「…さっきも言ったけど、俺は正直、あのときからそんな変わってない。生きることも死ぬこともどうでもいい。自分がどうなったって、そんなもんか、としか思わない。でも、唯一、俺にとって生きる理由があるとするなら、あんたに礼を言うことだった」

「僕は当然のことをしたまでさ」

「知ってる。それに…あんたに依存してたけど、アーサーじゃなくても良かったんだ。きっと、あのとき助けてくれた人なら誰でも同じだった。俺は、アーサーに助けられたっていう事実と、それに対して礼を言うべきだという概念に依存してたんだ。俺のことを守ろうとしてくれたのは、アーサーだけだったから、アーサーがどんな理由でもそれは俺にはどうでもいいことだった」


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