再会と目的−5
正面からベッドの上で抱き込まれるような体勢になったまま、唯斗はアーサーの腕の中で問う。この行動の背景を明らかにしようと尋ねれば、思いのほかアーサーはすぐに首を横に振った。
「君が愛しいからだよ。色恋沙汰のそれではないけれどね」
「その愛しさは、哀れみと隣り合ってるんじゃないのか。憐憫とか、そういうものと」
「そうじゃないと証明することはできないだろう。でもそうだな、一つ言い方を変えてみようか」
そう言ってアーサーは少しだけ体を離すと、至近距離で唯斗を見つめる。青い瞳が美しく光を放つ端正な顔が間近にあり、さすがの唯斗も落ち着かない気になる。
すると、アーサーはいたずらっぽく笑った。
「愛しいというより、単に君を甘やかしたいんだ。甘やかしてあげたくなった。ただそれだけ」
「っ、あんたなぁ…!」
「答えはずっとシンプルなものだよ」
にっこりと笑みを浮かべて唯斗の頭も撫でてくる。抵抗してやろうとかとも思ったが、心地よさに拒否できず、享受してしまう。
くそ、と思いながら黙ってしまうと、それにもまた小さな笑いが落ちてきた。
気を取り直し、唯斗は体を離してアーサーに隣を示す。アーサーも応じ、そのままベッドで唯斗の隣に腰掛けた。行儀よく足は床に下ろしているが、唯斗は胡坐をかいたままだ。
「次はアーサーの番な。世界線を転移してるってのは聞いた。その目的は?前に現界して俺と出会ったときの記憶がある理由はなんだ」
「なかなか容赦なく聞いてくるね」
「また会えたことは正直かなり嬉しい。でもそれとこれとは別だ。予備員とはいえ、俺はグランドオーダーに従事してる。やる気はないが、やるべきことは必ずやる。その障害になりかねないなら、あんたであっても否定しなきゃいけない」
公私混同するほど、唯斗の自我は大きくない。確かに淡くまた会えたらと思っていた相手と会えたことは驚天動地の喜びではあったが、それとこれとは別だ。
とはいえ、もちろんアーサーがかのアーサー王伝説本人なのだから、もとから信用できる英霊であることもあった。
アーサーもそれは理解していて、唯斗の警戒が本気のものというより義務感だと分かっているため、苦笑してから口を開いた。
「本当に逞しく育ったね。体はいまいちのようだけど」
「喧嘩売ってるなら買うぞ。魔術は効かないだろうけど、俺のアーチャーは剣を矢として弓に構えるからな」
「それは興味深いな…うん、君の誠実さ、とても素敵だと思うよ。そうでなくても答えたけれど、きちんと話そう」
そう言って、アーサーは自身について話し始めた。恐らく、ダ・ヴィンチたちカルデア側に話した内容よりも深いレベルだろう。
まずアーサーは、現界しても記憶を維持している理由について、驚きの事実を語った。それは、アーサーは戦いの果てにアヴァロンへと至り、伝説通り、過去・現在・未来を生きる王となっているから、というものだった。それはつまり、他の英霊と違ってアーサーは「死んでいない」のである。そのため英霊の座にはおらず、アヴァロンから直接、世界を渡り歩く旅に出た。それが記憶を持っている理由だ。
「転移する理由だけど、これは僕がある存在を追っていて、それが恐らくこの世界線にいるからだ。この世界にいるっていう確証はないけれど、転移せずにこうして契約ができた以上、恐らくはこの時空にいる」
「その転移は、アヴァロンの魔術師…マーリンのものか」
「どうなんだろう、僕でも全容は理解できていない。恐らく、マーリンの魔術や、世界の抑止も働いているんだろう」
「なるほどな、じゃあしばらくはこの世界にいるわけだ。そして、ある存在を追っている……」
少し考えて、唯斗は実家の文献の中で思い当たる存在に気付く。これ以外であれば、唯斗の知識の範疇ではない。
「…ビーストか」