永続狂気帝国セプテムI−3


ついに、第二特異点へのレイシフトの日となった。
唯斗は立香、マシュとともに管制室へやってくる。するとそこには、ロマニとともにダ・ヴィンチ、そしてアーサーがいた。


「おはよう3人とも。よく眠れたかな?」

「おはようございます、ドクター。アーサー王はなぜここに…?」


マシュが早速尋ねると、サーヴァントなのに眠たげなダ・ヴィンチが笑顔を見せる。


「今回からは4人までレイシフトできるようにしたんだ。といっても、4人目はアーサー王だからこそ成功したと言っていいんだけどね」

「…3人でギリギリだったけど、転移の力があるアーサーならできるってことか」

「そういうこと!さすが唯斗君」

「よろしくね、マスター。藤丸君、マシュ君」


微笑んだアーサーは今日も今日とて王子様然りとした風体だが、実際には王様だ。
もともとアーサーはこの世界の人間ではなく、他の世界から転移の力でやってきている。それがかつて聖杯なしでの召喚に成功した理由であり、今回も4人目のレイシフトを成功させたようだ。


「良かったね唯斗」

「頼もしいですね」


立香とマシュに言われ、「そうだな」と返す。正直、非常に頼もしい。立香にはマシュがいたが、唯斗には戦闘時のカルデアからの一時的な召喚以外には現地のサーヴァントしか頼れない。その現地のサーヴァントだって、必ずしも力を貸してくれるとは限らないのだ。
絶対に唯斗にとって恒常的な戦力としてアーサーがいてくれるのはとてもありがたい。


「……頼りにしてる、アーサー」

「僕は君を守り世界を守る。任せて」

「ヒュウ、さすがアーサー王。THE 英霊って感じだねぇ」


騎士王と呼ばれるだけあり、唯斗の手を取って軽く口づけながら誓うように言ったアーサーに、見ていた立香とマシュが照れてダ・ヴィンチが冷やかす。
唯斗もさすがに照れくさくなり、「よろしく」と返すのに精一杯だった。

そこへ、ロマニが咳払いをして本題を切り出す。


「こほん。いいかなみんな。さて、転移地点はローマ帝国、首都ローマを予定している。地理的には前回と近似だと思ってもらってかまわない。存在するはずの聖杯の正確な場所は不明。歴史に対して、どういった変化が起こったかもそうだ」


いかんせん、ローマ帝国の歴史的重要性は長い時代に渡って断続的に続く。様々な地点において人類史に影響を与える出来事が起こった帝国なのだ。
滅びないはずの時点で滅びたのか、滅びるはずのタイミングで滅びなかったのか、恐らくそのどちらかだろう。

とはいえやることは同じだ。特異点を調査し原因を突き止め、それを解決して特異点を修正、源泉となっている聖杯を回収する。


「人類史の存続は君たちにかかっている。どうか、今回も成功させて欲しい。そして…無事に帰ってくるようにね」


特異点からの帰還はその修正が成されるまでは不可能だ。特異点の修正とカルデアへの帰還は基本的にセットである。


「きっと1世紀ローマにも召喚されたサーヴァントたちがいるだろう。可能であれば、彼らの力を借りるように。無論、敵対する者に対しては叶わない願いだが」

「ドクター、一つお願いがあります」


そこでマシュは、ロマニに提案ベースのお願いを口にした。その内容は、事前に敵対サーヴァントと中立のサーヴァントを感知できないか、ということだった。
不要な戦闘を避けるためには、敵性反応であるかどうかをいち早く把握することは重要だ。

ロマニは難しそうな顔をしてから、「すまない、それはできない」とはっきり述べた。無理もない、敵意の有無は数値化できるのものではない。それができるなら民間人によるテロ行為だって察知できるだろう。


「すみません、無理なお願いとは承知していました」

「こちらこそすまない、無茶をさせているのは分かっているんだが…」

「話し合いなら立香とマシュの得意分野だろ。狂化さえかかってなきゃなんとかなる。俺は拳のがやりやすいんだけどな」

「意外と唯斗って脳筋だよね」


唯斗の言葉に立香は苦笑する。ふと、その表情に数日前に見た立香の涙が思い出され、唯斗は自身のやるべきことを内心で再確認した。


「それじゃあ行こうか。プログラムスタート」


ロマニの号令で、4人はコフィンに入ってレイシフトの準備に入る。
いつも通り、体から重力が感じられなくなり、あらゆる五感が消え、意識だけが引っ張られるような感覚の直後、一気に重力が戻ってくる。

同時に、急に五感が復帰し、明るい空、輝く太陽と風に揺れる草原、肌を撫でる爽やかな空気を感じた。


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