永続狂気帝国セプテムI−6
街道の真ん中で一同は止まり、急接近するサーヴァントを迎える。この速さで接近するサーヴァントだ、敵性が疑われる。
アーサーはすぐに唯斗の前に立ちはだかり、一同の正面に現れた男のサーヴァントから守るように立った。マシュも盾を構えて立香の前に立つ。
「我が愛しき妹の子よ」
「伯父上…!いや、いいや、今はあえてこう呼ぼう。いかなる理由かさ迷い出でて、連合に与する愚か者!カリギュラ!」
「…やっぱりか」
薄々感づいていた。
この時代にあってこのしゃべり方だ、女性という性別には違和感があるが、この世界のアーサー王だってそうだった。
皇帝カリギュラ、先々代の皇帝であり、その姪は、ローマ皇帝の中でも最も有名な人物でありこの時代の統治者だ。
その人物こそ皇帝ネロ、この女性の正体である。
「余の、振る舞いは、運命、である。捧げよ、その体、その命、捧げよ!!」
「先輩!来ます!」
黄金と赤の鎧に身を包んだ紫色の髪の男、カリギュラは臨戦態勢になると、こちらにまっすぐ向かってきた。あの状態からして、バーサーカーだろう。
カリギュラはこちらに一瞬で到達すると、ネロに襲いかかる。すかさずマシュが盾で防ぐと、アーサーが斬り掛かる。人間相手でないため、その見えない剣は切っ先を鋭くカリギュラの肌を切りつける。
アーサーの剣、エクスカリバーはあまりに有名なため、普通は見えないよう透明化している。剣の正体が分かることが真名の判明に直結するからだ。
カリギュラはアーサーの打撃によって吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる。鎧が意味を成さないほどの衝撃が走っていることだろう。
起き上がろうとしたところを、さらにマシュの盾が吹っ飛ばし、また地面に勢いよく落下した。宝具を使わせないよう打撃を重ねると、カリギュラは苦しげな顔をしてから、忽然と消えた。
アーサーはひとつジャンプして唯斗のそばに戻ってくる。
「霊体化したようだ。本拠地に戻るんだろう」
「バーサーカーが?」
『もしかしたらマスターが存在するのかもしれないね』
「むむ…?」
ロマニの指摘になるほど、と思っていると、ネロが怪訝な顔をした。マシュが「どうかしましたか?」と聞けば、ネロは周囲を見渡しながら尋ねる。
「先ほどから声はすれど姿の見えぬ男がいるな。雰囲気からして魔術師の類いか?」
『魔術をおわかりとは話が早い。そう、僕とその二名はカルデアという組織の…』
「まあよい。そこの四名、いや五名!」
『あっ、遮られた…』
「姿無き一名はよく分からんが、皆見事な働きであった。改めて、褒めてつかわす。素性を尋ねる前に、まずは余からだ。余こそ、真のローマを守護する者。まさしく、ローマそのものである者。必ずや帝国を再建してみせる。そう、神々・神祖・自身、そして民に誓った者!余こそ、ローマ帝国第5代皇帝、ネロ・クラウディウスである!」
やはりネロ本人だったようだ。まさか女性だったとは、百聞は一見にしかずとは言うがまさかここまでとは。
ちらりと隣に立つ王様を見上げると、アーサーは首をかしげる。
「…事実は小説よりも奇なりって感じだな」
「どうかしたかい?」
「いや…ま、ネロが女性ってことも長い歴史からすりゃ些事だな」
「ふふ、そうだね、歴史なんて案外そんなものさ」
アーサーが言うと含蓄がある。いくら別の世界といえど、これまで話がかみ合わなかったこともないため、恐らくアーサーの生きた世界とこちらの世界の歴史はほぼ変わらないだろう。
特異点をこうして旅しなければ知らなかったことがたくさんある。フランスでもそうだった。
生きた歴史に触れている、そう実感させられた。