永続狂気帝国セプテムI−12
翌日、一同はターニングポイント設置のため、霊脈のあるエトナ山へ向かうことになった。ネロはローマに残り、立香、マシュ、唯斗、アーサーでローマから遙々シチリア島まで赴く。
雑魚との戦闘は散発したが、連合帝国軍とは出くわさずに済んだ。往復ともに唯斗たちは馬車の荷台に乗せてもらえたため、イタリア半島の半分を往復したにも関わらず、1日で帰ってこられた。
特に帰りは召喚サークルが設置されたためにカルデアからも召喚できたため、大幅に増強された戦力がいかんなく発揮された。
そうしてローマに帰ると、ネロが早速城で出迎えてくれる。
「戻ったか!」
「ただいま戻りました」
立香の言葉にうむ、と頷いて、ネロは旅支度を調える兵士たちを見ながら切り出した。
「戻ったばかりですまぬが、これからガリアへと遠征を行おうと思う。無論、余が自ら出ねば意味がない。苦戦する配下を助けつつ鼓舞するのが目的だ。立香、マシュには供を頼みたい。どうだ、来てくれるか?」
「え、俺とマシュだけですか?」
「あぁ。余と軍の多くがローマを留守にする。その間、唯斗とアーサーには都の守りを頼みたい」
「なるほどな。確かにそれが望ましいな」
マシュの防御能力は個人、または大きくて大隊規模だ。一方、人間相手であれば唯斗の結界は師団を相手にできるし、アーサーも単騎で師団を駆逐できる。その戦いの大仰さはネロもよく理解しているらしい。
通信からロマニも同意する。
『皇帝陛下から聞いて戦況詳細は把握済みだ。ガリアは連合との戦いにおける最前線の一つらしい。聖杯を有したサーヴァントが敵将として暴れている可能性もあるし、レフもいるかもしれない。ここは彼女とともに移動するのがいいだろう。当然ながら危険を伴ってしまうが…』
「誰の命も落とさないよう頑張ろう」
「そうですね、先輩」
「皇帝と首都ローマ、どちらも存続させなきゃ人理修復はできない。俺はローマを、立香は皇帝をそれぞれ守るって形だな」
「唯斗とアーサーがいるなら、ローマはこの世界で一番安全な場所だね」
「そうですね、安心して旅に出られます」
誇張でも何でもなく、アーサーがいれば都市ひとつ守るくらいどうということはないだろう。しかし、やってくる人間の兵士相手に、ここでも殺さずにやるべきだ。立香が戻ってきて死体の丘が郊外にできていれば、きっと烈火のごとく怒るはずだ。
『通信は基本的には僕と立香君たちを繋いでおこう。唯斗君とアーサー王なら、カルデアからの支援がなければということはないだろうし。でも何かあったら遠慮なく連絡するように』
「分かった。互いに報告するタイミングはどうする」
『緊急性の高い共有事項は都度。定時報告は夜、こちらからオープン回線を繋いで声をかけるよ』
「了解。こっちは斥候も多い、そっちで索敵しなくても対処できる。なるべくガリアの方を優先してくれ」
『唯斗君は頼もしいなぁ』
「アーサーがいるしな」
つい唯斗がそう言うと、立香もロマニも驚いたようにした。アーサーも目をパチパチとさせてから、花の咲くような笑みを浮かべた。
「…あ、待っ、今のなし、」
「マスターは可愛いなぁ」
「うるせぇ!」
「いや〜、今のはさすがに俺も可愛いなって思った」
「やかましいわ!とっととガリアでもブリタニアでも行ってろ!!」
「仲良きことは美しきことだぞ唯斗。ではローマは任せた!」
いつも通りのネロはそう言って支度をするために自室へと向かっていった。
立香もニヤニヤとからかうような笑みを浮かべてから、備品を整えるべく部屋へと戻っていった。マシュに至っては微笑ましそうな顔をしていて、いたたまれなくなる。
「僕たちも部屋に戻ろうかマスター。敵影があれば斥候が伝えに来てくれる」
「…そうだな」
もはや諦めて、ニコニコとするアーサーに肩を抱かれながら部屋へと向かった。
どれくらいの間ネロたちがローマを留守にするのかは分からないが、しばらく二人きりになる。それに少し嬉しくなっている自分もいて、唯斗はため息をつくしかなかった。