永続狂気帝国セプテムI−17


「こちら雨宮、どうした?」

『ガリアよりマシュです。ローマへの帰路にて、気になる情報があったので寄り道をすることになりました』

「気になる情報?」

『はい。地中海の島に、古き神が現れた、という人々の噂話です。海路で帰ることにして、その途中で寄り道して確かめることにします』

『ねぇ唯斗、唯斗は神様って召喚できると思う?』


マシュの報告に続いて立香が尋ねてきた。また突拍子もない質問だ。
これを聞いているロマニにまずは聞くべきだろう。


「ロマニに聞かなかったのか?」

『聞かれたし答えたよ。無理だってね。神霊の召喚は事実上不可能だ。でも僕も、召喚術の名家である君の意見は聞いてみたいな』


神霊の召喚、と聞いて、唯斗は少し考える。家で得た情報や特異点を巡って得たことなどを総合して頭に情報を張り巡らせてから、口を開いた。


「まずは″召喚された神霊″という定義の範囲による。神霊そのものが、そのまま現界する、っていうのが定義なら、それはあり得ない。神秘のない時代には確実に不可能だ。一方で、神霊の召喚という状態の定義に広範な意味合いを含める余地があるのであれば、わりと普通にできるんじゃないか」

『え、そうなのかい?広範な意味合い…型落ちしてもはや神とは言えない状態とか、あとは…』

「憑依だな。召喚術というより降霊術の領域だ。神を著しく型落ちさせることでサーヴァントとして召喚する方法、または型落ちさせた上で相性のいい現世の人間の体に憑依させて受肉に近い形を取る方法。後者は神代でギリギリできるかどうかってとこだが、まずもって神霊が人間の体に収まろうとするわけがないから、成功率は天文学的確率だ。サーヴァントって意味なら、そもそもサーヴァント自体、英霊をクラスという一つの側面だけに絞って型落ちさせて召喚するわけだから、より神格を落として、神霊としての性質をクラスと宝具によって再現する形を取れば見た目上それは神霊の召喚と言える」


神霊、いわゆる神様にあたる存在をサーヴァントとして召喚することは、神格を極めて劣化させ、サーヴァントクラスに無理矢理押し込むことで何とか可能になるだろう。その場合、神霊としての力は、あくまでクラスと宝具による再現に留まる。
それほどまでに凡百の存在に型落ちしてなお神霊と呼ぶのか、というのは別に議論となるが、それを定義に含めるのであれば、神霊のサーヴァント召喚は理論的には可能だろう。


「まぁ、そんな変則召喚を想定しても意味ないだろ。俺たちの予想の範疇に収まるなら神も英霊もねぇしな」

『それはそうだね…それにしても、ふむ、確かに一理ある。僕としてはそこまで型落ちして神霊と呼ぶのかは微妙なところだけれど、その理屈なら、神代や憑依でなくともサーヴァントとして召喚されうるのかもしれない』

『何言ってるか全然分からなかった…』


ロマニが感心したのに対して、立香は情けない声を出した。唯斗は少し呆れつつ、こんなレベルの話はロマニやダ・ヴィンチくらいしかできないな、とも思っている。


「立香はあるがまま、今まで通りサーヴァントそのものを見てやればいい」

『うん、そうする!ありがとね!』


通信を終えると、アーサーは「さすがだね」としげしげと言った。


「え、なにが」

「相変わらずの知識量だなぁと。カルデアのドクター・ロマニも極めて優秀な人だろう。その年で対等に議論することができる者はそうそういないんじゃないかい?」

「どうだろうな。もともと特異点探索の主軸になる予定だったマスター候補も相当すごかったと思う、そこまで深く会話したこともないけど」


Aチームのメンバーとは、訓練で一緒になったことが何度かあった。オルガマリーは唯斗を実質Aチーム級の候補として扱っていたため、会話をする機会もあったのだ。
基本的には全員、時計塔の主席だったが、中には唯斗のような一般人に近い立場の者もいた。とはいえAチームは全員、規格外の存在だったため、唯斗は自分がさほど特別だとは思っていない。

今、彼らはコフィンの中で凍結されている。人理修復が成功して彼らが治療されたら、この特異点での出来事について話すこともできるのだろうか。


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