永続狂気帝国セプテムI−18


その日の夕暮れ、結局敵襲はなく、唯斗はアーサーとともに宮殿の自室に戻って立香たちからの引き続きの報告を待った。
ガリアから海路で帰るなら陸路より早く帰ってくるはずだが、どれくらい寄り道しているかにもよる。
古き神、というのがどんなサーヴァントなのかも謎のままだ。

そして太陽が街並みの向こうに沈み始めた頃、ようやく通信が入った。


「やっとか」

『すみません!しかし良い報告があります。まず一つ、コルシカ島近くの島にて、ギリシア神話の女神ステンノさんと出会いました』

「は!?」


まさかの本物の女神である。素っ頓狂な声を出すのも無理はないだろう。


「ステンノがサーヴァントとして現界してるってことだよな?神格落としてる感じか…?いや、でもステンノはあくまで女神というより概念に近い、もともと攻撃手段とかを持っているようなタイプじゃないだろ…」

『あら、あなた詳しいのね。概ねあなたの想像通りよ』

「ッ…!」


清らかな美しい声が通信でもはっきり分かる。女神ステンノだ。
まさか神霊と本当に会話することになるとは思っていなかったため、唯斗は言葉に詰まる。


『あなたの言うとおり、私は本来守られることに特化した存在。でもサーヴァントとして現界したことで、むしろサーヴァントのクラス属性が私に攻撃手段を与えたわ。神格は落ちているけれど、スペックはむしろ上がっているかもしれないわね。まぁ、なかなか悪くない気分よ』

「そ、そうか…」


フェミニニティの具現化でもあるステンノは本来攻撃手段を持たないが、サーヴァントになったことでむしろその力を得た。本来なら神格の降下によって力も衰えるところを、例外的に強くなっているそうだ。
世界とは本当に予想もつかないことをしてみせる。


『また、島にはなぜかエリザベートさんと、タマモキャットさんというサーヴァントもいらっしゃいました』

「…タマモキャット……?」

『僕もいまいちよく分かっていないけれど、とりあえず中立だよ』


聞いたことのない名前にロマニも困ったようにしながらフォローを入れてくれた。敵ではないのならもういいか、とそれ以上は追求しない。


『そして次の良い報告です。皆さんのご協力で敵将カリギュラを倒しました』

「…そうか。お疲れ様」


これも、あまりリアクションをとれない。ネロも聞いている回線のため、喜ぶわけにもいかなかった。辛気くさい態度を取ってもネロが嫌がりそうだ。
とりあえずは、着実に相手の戦力をそぎ落としている。


『そして最後の報告です。敵の首都、偽ローマの場所はヒスパニアだと明らかになりました』

「そうか、それは良かった。ローマに一度戻って体勢を立て直してから叩きに行くか?」

『うむ!これより余たちは凱旋し、各地に派遣した我が軍を集結させ、ヒスパニアへと行軍する!』

「了解。こっちは特に何事もなかった。到着は明日か?」

『はい、その予定です』

「よし、じゃあ明日は少し斥候をローマから遠くに向かわせてみる。敵の軍勢があったら先に刈っておく」

『よろしくお願いします』

『気をつけてね、唯斗!』

「立香もな。じゃあ」


通信を切り、息をつく。明日は自分から敵を探しに行って戦うことになる。
今日のような暇な日は一日だけでいい。


「明日は体を動かすんだね」

「あぁ。さすがに二日連続観光ってわけにはいかない。あいつらは敵将を討ち取ってるしな」

「そうだね、ローマの防衛が任務とはいえ、部屋に閉じこもるだけというのも味気ない」

「明日はフィウミチーノ…ローマの西の沿岸と、南の方に斥候を向かわせよう」


現在、首都ローマの国際空港があるフィウミチーノ方面から立香たちが上陸してくるはずのため、その周辺の敵を掃討しておきたい。
南に向かわせるのは、敵が潜伏しているとすれば南から上陸している部隊だと考えられるからだ。すでにガリアは平定され、ヒスパニアは本拠地だと分かった。だとすると、アフリカの地中海沿岸の戦力が自由に動かせることになる。ならば南から来る可能性が高いだろう。船で半島南部から上陸するはずだ。


「こう考えると、もう少しサーヴァントを増やしていいだろうね。特にランサーやキャスターがいるとより作戦の幅が広がる」

「そうだな。次はそのどちらかで召喚に応じてもらえるといいんだけど…」


いずれにしても召喚はそれほど思い通りにはいかない。呼びかければ答えてくれる者もいるだろうから、ひねくれ者の少ないランサーやセイバーであれば特に応じてくれる者もいるだろう。


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