永続狂気帝国セプテムII−2


ヒスパニアに入り、カタルーニャの平原に開かれた街道を進んでいくと、散発的な戦闘の中に敵将の知略が垣間見えるようになった。
バーサーカーであり主砲である呂布とスパルタクスを誘導しようという戦術が見られたのだ。

見たところ、ほぼ同じ時代の者たちが召喚されているようであるため、ペルシアやギリシアの知略に富んだ王が現れるかもしれない。

唯斗たちは立香とともに行動していたが、そこに、獰猛な咆哮とともに殴り込んできたのはダレイオス3世だった。ペルシアの大王の登場に予想通りの展開となったわけだが、これは陽動だった。

戦闘を終えた途端、伝令兵が最悪の事態を伝えた。

なんと、後方でも戦端が開かれ、バーサーカー2名が戦線を離脱、さらにブーディカが囚われてしまったのだ。
サーヴァント三騎を失うのはさすがにまずい。荊軻の偵察によってブーディカが囚われた砦の場所は明らかになっているため、ネロは全員でそこを叩いてブーディカを助け出すことを決めた。バーサーカーたちはもう運に任せるほか無い。


『ふむ…』

「ドクター、何か?」


すると、通信でロマニが考える素振りを見せた。マシュが問えば、立香と唯斗もロマニに注目する。


『なんか、気になってね。ブーディカを捕らえたのはサーヴァントのはずだ。ただの人間にできることじゃない。だが、なぜ彼らは砦に立てこもっている?連合首都との距離も遠くない、なら、そちらに戻る方が遥かに有利だろうに』

「敵はこちらを誘い込んでいる、そういうことでしょうか」


敵はこちらの戦力を把握している。それにも関わらず、首都ではなく砦に立て籠もった。何らかの意図があるはずだ。トラップだとしても、攻められている側の利点は物量が確保できることなのだから、あえて物量の乏しい郊外の砦を選ぶことは普通ならあり得ない。


『…さあ立香君。決断のときだ』

「……うーん、罠なら踏み潰しちゃえばよくない?」

「そうだな、いずれにせよブーディカを助け出すには罠があろうとなかろうと砦に行く必要がある。最悪、建物は吹っ飛ばせばいいし」

「……先輩、唯斗さん、考え方がバーサーカー染みて…いえ、唯斗さんは元からそうでしたが…でも、そういう考え方は嫌いではありません」


コンセンサスは得た。ネロとともに、軍勢を率いてブーディカを助け出しに砦へ向かう。
ロマニはこうなることを分かっていたようで、少し呆れつつも反対はしなかった。しかし、さすがに全戦力を投入することは否定する。


『それなら、唯斗君は先に連合首都周辺の掃討をしつつ、立香君に何かあったら救援に行けるようにしてくれ』

「リスク分散は基本だな。立香にサーヴァント全騎を投入して、俺はアーサーと二人で首都に向かう。立香はそれで大丈夫か?」

「大丈夫、唯斗も気をつけて。なんかあったら助けてね」

「ちゃんと呼べよ」


自分でなんとかしそうなタイプのため念を押すと、立香は苦笑して頷いた。

こうして、立香とマシュはネロたちとともにブーディカの囚われた砦に向かい、唯斗は首都へと先行することになった。
恐らく立香たちだけでなんとかなるだろう。唯斗とアーサーは、立香たちがスムーズに首都へ入城できるように残存兵をすべて放逐する。

常に通信で状況を確認しながら、平原に点在する軍団をひとつひとつ潰していく。
やがて、ロマニの通信が入った。別れてから1時間ほどしか経っていない。


『立香君たちは無事に敵将、エルメロイ2世とアレキサンダー3世を倒した。ブーディカも無事だ。これより唯斗君たちに合流する』

「…エルメロイ2世?」

『やはり君も知らないか。どうやら英霊としてはまったくの無名らしい。僕も聞いたことがない』

「もうここまで来ると何が起こるか分からないな。こっちは首都城門まで街道周辺はクリア。まっすぐ来てもらっていい」

『こちらマシュ、了解です』


立香たちが会敵したサーヴァントは、マケドニアのアレキサンダー3世はいいとして、エルメロイ2世という人物は聞いたことがなかった。アーサーの方を見ても首を横に振っていたため、相当知名度の低い英霊のようだった。正体は分からないが、倒されたのならもう考える必要はない。
街道の先には、連合首都がその威容を誇っていた。


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